ラーメン屋

(ふぅ。今日はそろそろ、店閉まいかな……)



深夜2時。


わしが、屋台をかたそうとした、その時。


「まだ開いてる~?」


「すみません、遅くに……この子が、どうしても、ラーメンが食べたいと言うので」


一組の、青年と少女がやって来た。


「……いらっしゃい」


「わーい!コモモ、らーめん、食べてみたかったんだぁ」


「はは、良かったな」


女の子の方がはしゃぐ。


……ラーメン、食べた事無いのか?



「クーヤお兄ちゃん、何にする~?コモモはねぇ」


それにしても、この二人、どう言う組み合わせだ。


口調からして、兄妹じゃ無さそうだし、見た感じの年の差からして、カップルにも見えないし。


「そうだなぁ。ご主人、今日のメニューは?」


「今日はこれだな」


①醤油ラーメン

②味噌ラーメン

③塩ラーメン

④豚骨ラーメン

⑤人骨ラーメン


わしは、壁のホワイトボードを指差した。



「じゃあ、俺は、塩ラーメンを頂こう。コモモは、どれにする?」


青年が、女の子に優しく聞いてやる。


「う~ん、どうしようかな、どれが美味しいかな……」


メニューと睨めっこする女の子。


「どれも美味しいよ」


ボソッと呟くわし。


「じゃあねぇ……この、人骨らぁめん!」


「はっ!?」



「あいよ。塩ラーメンに、人骨ラーメンね」


「じ、人……っ!」


ドン引きする兄ちゃんを尻目に、わしは、特製の緑麺を湯がき始める。


「美味しそう~」


このお嬢ちゃん、意外とタフだな。



「お待ちどぉ」


つ塩ラーメン


つ人骨ラーメン


「い、頂くよ……」


僧侶の兄ちゃんは、お嬢ちゃんの前に運ばれた椀の、血のスープにぷかぷかと浮かぶ骨に、明らかに青ざめている。


そんな事は気にも止めず、金髪の嬢ちゃんは、パチンと割箸を割った。


「いっただきまぁ~す!」


『ズビズビ……』


「どうだい?わしのラーメン」


「うん、塩、美味い!(塩は)」


「美味しい~!コモモ、らーめん、初めて食べた!」


「そうかそうか」


お嬢ちゃんの口は、汁の鮮血で真っ赤だ。



「ぷは!ご馳走様っ!」


「ははー、コモモ、良かったなー……取り敢えず、口の周りの血をお拭き。

 ご主人、お愛想」


「1,200ゴールドになるよ」


「うむ、ご馳走さん」


「らーめん屋さん、またねー!」


「Drive your dreams!」


お嬢ちゃんに手を振り返し、わしは、今度こそ、屋台を畳んだ。



さて、今日の仕事は終わりだ。


今日も、沢山の人が、わしのラーメンを食べた。


明日も忙しくなるだろう。








え?





あのダシの人骨は、誰のかって?






それはな……………………?

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