笑顔の行方③

「クーヤさん、もう、その辺で、止めとくメェ。


 急性アル中で、倒れるメェ」


「うるへー!アイドルだか何だか知らんが、羊如きが、俺様に命令すんな!……ヒック」


「しーちゃんは、クーヤさんの体を思って、言ってるメェ」


「ゴチャゴチャ抜かすな!どんどん持って来やがれー!……ウィー」



俺は、酒場に居る。


羊の店主目当てに集まっている奴等が、キター!だの萌えー!だの煩い。


テーブルの上では、俺が空けたジョッキが山積みになって、倒れそうだ。


「クーヤさん、どうしたメェ?モモさんが、心配するメェ」


ピクッ。


羊が、今日の俺的禁止ワードを発した。


「……人の事情に、首突っ込むんじゃ無ぇっ!」


『ガシャン!』


テーブルに叩き付けたジョッキが割れて、辺りにビールが飛び散った。


客の悲鳴が聞こえるが、知った事か。


(こ……困ったメェ。この儘では、店が破壊されてしまうメェ)


しーちゃんは、カウンターをこっそり抜け出し、裏口近くで、スマホをプッシュした。


メェェェエェェッ…メェェェエェェッ…


ピッ


「あ、もしもしメェ?……」




「……ん……モモ……」


何故だか、頭がガンガンする。若干、吐き気も。


「……あ?」


目を開けると、泣きそうなモモの顔があった。


「モモ!」


「……クーヤ!」


言うが早いか、モモが抱き付いて来た。


「……///」


「うぇ~……」


彼女は、その儘、俺の胸で泣き出した。


やれやれ。


言いたい事が沢山あった筈なのに、何だかもう、どうでも良くなってしまった。


「泣くな」


柔かな髪を撫でてやった。


「うん……。何とも無い?」


心配そうに、見上げて来る。


やっぱ可愛いな、こいつ。


「わっはー( ̄∀ ̄)今朝の肉まんの方が、よっぽど堪えたぞぉー?」


「あは」


飛び切りの笑顔。


俺迄、ニコニコしてしまう。


「あの~、お二人さん、ちょっといい?」


「!!///……ゲフ、ゲフン!」


しまった、人目が……。


てか、何処だ、此処は。


アンヌが居るって事は、団の救護室か。


「どうした?アンヌ」


「あのさ、クーヤ宛てに、酒場から、酒代・修理代含む、物っっ凄い額の請求書が来てるんだけど?山二つ買える位(^ω^メ)」


「へっ……?」


俺はその時、又、曇りそうになるモモの笑顔を、どうやって取り戻そうかと、必死に考えていたのだった。




~ END ~



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