十五歳

一、出会い

 花帆と芳恵が出会ったのは、私立白風女学院高校入学式の日だった。

 下校の際、芳恵がいきなり声をかけてきた。その瞬間、花帆も思考が追いつかず四肢が硬直した。

 久しぶりに集団生活に適応しようと必死な上、首席入学者として式辞を務めたのだ。緩解して月日が浅いばかりに、同級生の顔を覚える余裕がなかった。

「私? 私は同じクラスの水原芳恵。芳恵って呼んで、今すぐ!」

 芳恵に両手を包まれて、顔面間の距離はわずか十センチ。

 花帆は言葉が詰まった。わたしがどれほど気つけても、突然の接近は同性相手でも委縮してしまうのだ。

「赤木さ、じゃなくて花帆ちゃんと友達から始めたくて。それから、その」

「でも今日、初対面だけど」

「新入生の挨拶、すごくカッコよかったよ。それでいて腰までの三つ編みが花帆ちゃんの可憐さを引き立てていて。ああでもちょっとの熱で溶けてしまいそうで……」

「言っているイミが分からないんだけど」

 わたしが知る限り、花帆は誰よりも理解が早かった。

 同年代が知り得ないことであっても、感知した途端にその良し悪しを判断できる。

 花帆が呆気に取られていたのも、芳恵に敵意がないことのみを察知していたからだ。

 仮に花帆が誤判したとしても、わたしは何が何でもわたし自身の直感に従わせていた。

「ごめん。ちょっとクドかったよね。つまり、目が逸らせなかったってこと。で、花帆ちゃんはどこ中出身? バス通学? それか電車? 路線は? 今から毎日、一緒に登下校しようよ」

 芳恵の高揚は自身だけのものだろうか。芳恵の奥底は何も感じていないのだろうか。

 わたしはこれほどまでに心が震えているのに。

「ごめんなさい。待たせているから」

 このときばかりは、花帆があの男をダシにしたことに腹が立った。

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