五、帰還

 芳恵、結月、弘道、雄太と合流すると、担任の今村と合流していた。芳恵たちから事情を聞くやいなや、今村が警察に通報したという。

 今村の認識では、花帆は森の中で一人はぐれ、運良く何事も起こらなかったことになっていた。

 花帆は適当に誤魔化す手間が省けて安堵したが、その後二人は周囲の目を盗んで花帆を説教した。

『自分がどういう体質なのか、絶対分かっていないでしょ』

『花帆は勉強ができて機転も利くけど、別行動をさせられた私たちが心配するってことは思いもしなかったみたいだね』

 一般の人間に使命を明かすことは許されていない。だがそれ以前に、機転を利かせてくれた二人に対してぐぅの音も出なかった。

 結月はそれ以上花帆を責め立てなかったが、芳恵の赤面は治まらなかった。

 両方のなで肩を掴まれて、花帆の目線が四方に泳いでいた。

 屈強の男たちの前では無慈悲な処刑人だが、親しい人間にはめっぽう弱気な花帆。

 とくに芳恵が花帆を案じると負い目を感じる。

 無理もないことだし、わたしは指摘するつもりなどない。

 この日のように、花帆が戦わざるを得ない状況は一度ではない。

 芳恵を心配させるという失態は、半分仕組まれたようなものだから。

 恨むべきことだが、一度目の失態がなければ、花帆はいまだに芳恵と親しくなっていなかった。

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