第34話 異世界での死に戻り

「おいおい、今日は晴れじゃなかったのかよ」


炎の能力者がそう言っているのが聞こえた瞬間、僕は奴の腹に一撃入れた。


「ぐはっ!」


「よし!」


炎の能力者は倒れ込んだ。


「貴様!何者!」


「お前こそ、何者だ?」


僕は炎の能力者を睨みつけた。


「私を睨むとは、貴様許せん。我が名はブレイブ。ゼノス様に仕える炎の力を持つ者だ。どうだ?驚いたろ?」


ブレイブは立ち上がり、自慢げに言った。


「驚かねーよ」


僕は構え直した。


「ほう、やはり私と戦う気なんだな。返り討ちにしてやる」


ブレイブは掌をこちらに向けた。


「喰らえ、火炎龍!」


ブレイブが叫ぶと、炎が一瞬、掌から現れたが父さんの降らせた雨のせいで一瞬で消えた。


「くそ!!」


(隆弘、まだ水は降らせた方がいいか?)


父さんからのテレパシーだ。


(うん、しばらく振らせてくれ。今炎を扱う能力者と戦っているところなんだ。父さんの降らせた雨のおかげで奴は炎を出せない)


(了解だ。ではしばらく雨を降らせるとしよう)


「この雨さえなければ!私は最強なのに!」


ブレイブは悔しがった。


「残念だったな」


僕は微笑した。


「まあよい、私は炎が使えずとも貴様に勝てる!」


ブレイブは石で出来た剣を取り出した。


「私は剣技も一流だ!」


ブレイブは僕に向けて、剣を振りかざした。


僕は能力を使って、高速で避けた。


「何!速い!」


ブレイブは僕のスピードに驚いているようであったが、すぐに切り替えてまた僕へ攻撃を仕掛けた。


僕はブレイブの懐に入り込み、拳を捩じ込んだ。


「ぐはっ!!」


ブレイブがよろめいたところを何発も僕はパンチをお見舞いした。


「どうだ!」


僕が最後の一撃を決めると、ブレイブは倒れ込んだ。


「くそ!貴様!もしや能力者か!普通の人間がそんなに速く動けるはずがない」


ブレイブは地面に手を当て「加熱せよ!」と唱えた。


その瞬間、地面の水が一瞬で蒸発し、爆発を起こした。


ドーン!!


僕はブレイブの起こした水蒸気爆発によって吹き飛ばされた。


「はっ、はっ、はっ」


粉塵の中からブレイブの笑い声が聞こえる。


僕はなんとか高速移動で致命傷を負うことなく、逃げることが出来た。


ブレイブは無傷というわけではなさそうだった。


恐らく、熱には強いが爆風の影響は受けているようだ。


(隆弘、大丈夫か?今村の方から爆発が見えたが…)


(大丈夫だ。でも、村は完全に崩壊だな。あのブレイブという炎の能力者が濡れた地面を加熱し、水蒸気爆発を起こした)


(なるほど、そんなことをしてきたのか…俺もう間も無く着く。それまでそいつを食い止めておいてくれ)


(うん)


僕は一人で首肯した。


「どうだ?驚いたろ?我が力!」


ブレイブは胸を張って言った。


「ああ、驚いたよ。でも、大したことないな」


僕はブレイブを冷たい目で見た。


神木なんかと比べれば、こんな奴大したことない。


僕は神木との戦闘を乗り越えて、このはちゃめちゃな能力者に対しても恐怖をかんじることはなかった。


「このクソガキめ!私の力を見せてやる!」


ブレイブの持つ剣が炎を纏った。


「そうこなくちゃ」


「喰らえ、火炎斬!」


ブレイブの剣から炎の斬撃が飛んで来た。


「遅いな」


僕はその斬撃をかわし、一気にブレイブの側まで近づいた。


どんなに強い攻撃も当たらなければ意味がない。


「喰らえ!」


僕は思いっきり、ブレイブの腹に重い一撃を決めた。


「ぐはっ!!」


ブレイブは倒れ込んだ。


その次の瞬間、「隆弘、大丈夫か?」と父さんが聞いた。


「うん、大丈夫だよ」


「すまん、遅くなった。でも、もう終わったみたいだな」


父さんは倒れ込んで意識を失ったブレイブを見た。


「流石のこいつも隆弘には敵わなかったみたいだな」


次の瞬間、空から白い仮面をした大きな男が降り立った。


ドン!


「ゼノス!」


父さんは、目を丸くした。


そう、さっそくボスの登場だ。


「まさかわざわざこんなところに来るとは」


父さんは驚きを隠せないようだった。


ゼノスは意識を失ったブレイブに手を当てて、「剥奪!」と叫んだ。


「あいつ、仲間の力を奪いやかった」


父さんはそう言うと、ゆっくり間合いを取り出した。


「久しぶりに使ってみるか」


ゼノスはそう呟くと、こちらに掌を向けた。


「火炎弾!」


大きな炎の玉が僕らに向かってきた。


「テレポート!」


父さんは地面に手を当てて、地面を目の前にテレポートさせ、盾のようにした。


炎の玉は地面の盾に当たり、消え去った。


「流石だな。イノウエ。じゃあ、これはどうだ?」


ゼノスはまたこちらに掌を向けて構えた。


「連続火炎弾!」


無数の火炎弾が僕たちに向かってくる。


父さんはありとあらゆるものをテレポートさせ、火炎弾を防ぎ続ける。


「逃げるしか出来ないようだな」


ゼノスは笑いながら炎を撒き散らす。


「さっさとケリをつけてやろう。喰らえ、火炎龍」


ゼノスの右腕から大きな炎が燃え盛り、天に向かって龍の形をした炎が飛び出した。


その炎でできた龍は父さんに向かって来た。


父さんは地面に手を当てて「テレポート」と叫んだ。


すると、父さんの目の前に砂で出来た龍のようなものが現れた。


高速で砂をテレポートさせ、竜状に成形しているようだ。


炎で出来た龍と砂で出来た龍がぶつかり合う。


「くそ!」


やや父さんの龍の方が押されている。


さっきブレイブとはまるでレベルが違う。


「もう一体召喚だ!複製!」


ゼノスが叫ぶと、もう一体の炎の龍が姿を現した。


「あいつコピーの能力者からも力を奪っていたのか」


父さんからは疲労感が感じられた。


やはり、ゼノスは最強過ぎる。


同時に二つの能力を発動して戦ってくるなんて。


「さあ、そこのガキ、ベロアの力を渡せ!」


二体の龍を操りながら僕の方に接近してくる。


「くそっ、気づいていたか」


父さんは砂の龍で炎の龍の攻撃を防ぎながら僕の側までやってきた。


「隆弘!」


父さんは僕の身体に手を当てて「テレポート!」と叫んだ。



ハッと気がつくと、洞窟の前にいた。


「父さん!」


村の方で大きな火柱が立っているのが見えた。


父さんは勝ち目がないと思って僕のことをテレポートさせたんだ。


「くそっ!!」


僕は悔しさに押し潰されそうになった。


その瞬間、村の方が明るく輝いた。


そして…


ドカン!!!


巨大な爆発音が聞こえた。


「まさか…」


村が完全に爆破させられたんだ。


しばらくすると爆風がこちらまで届いてきた。


こんなのまともに喰らったら無事でいれるはずがない。


やり直すしかない…


僕は自分の喉をかき切った。

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