第29話 繰り返される戦い
ハッと目を覚ますと、神木が僕の方に向かってくるのが見えた。
「タカ!危ない!」
健太の叫び声が僕の身体を自然と動かした。
僕は神木の攻撃を避けると、体勢を整えた。
よし、戻ることが出来た。
またして神木はさやかを狙おうとしていた。
来るぞ。
「パーティカル・ソード!」
神木が斬撃を飛ばす、ギリギリのところでさやかへの直撃を免れたが、代わりに僕の腕は引き裂かれた。
神木はまた斬撃を飛ばして、次は僕の足を引き裂いた。
こいつ、僕の身動きを取れなくした後に、血を飲む気だ。
「タカ!早く戻れ!」
健太の声が耳に響く。
そんなことはわかっているがあまりにも神木の攻撃が速いため、上手くいかない。
「くそっ!」
僕が苦戦していることに真っ先に気づいたさやかは、僕の前に出て神木の攻撃を受け止めた。
さやかの身体から多量の血が吹き出した。
「今よ!戻りなさい!」とさやかに言われた気がした。
くそ、またさやかを犠牲にしてしまった。
僕は急いで自分の首を掻き切った。
*
ハッと目を覚ますと、神木が僕の方に向かってくるのが見えた。
「タカ!危ない!」
僕は神木の攻撃を避けると、すぐに神木にカウンターを決めにかかった。
あのパーティクル・ソードを使う隙を与えなければいい。
僕はひたすら高速で動きまわり、神木に攻撃をしかけ続けた。
まさにイーブン。
神木と僕のやり合いは、均衡状態となった。
これは体力勝負になってくるな。
しかし、僕には超回復の能力がある。
僕の方が有利なはずだ。
一手一手が緊張勝負だ。
少しのミスを犯すと、神木はその隙に技を繰り出してくるはずだ。
次の瞬間、神木はレプリカの拳銃を僕に向けた。
なんだ!
「バン!」という銃声が鳴り響き、僕はその瞬間、神木の予想外の行動のせいで僅かに動きを止めてしまった。
やられた。
神木はパーティクル・ソードを発動し、さやかに斬撃を飛ばした。
くそ!間に合わない!
またしてもさやかの身体は引き裂かれた。
僕は倒れるさやかを見ながら、自分の首を切った。
「何度もごめん。さやか…」
*
ハッと目を覚ますと、神木が僕の方に向かってくるのが見えた。
「タカ!危ない!」
僕は神木からの攻撃を避けると、すぐにさやかの前に立ち、神木からの攻撃を防ごうとした。
「流石だね。何回目かな?」
神木は自分の作戦が読まれていたのを察したのか僕に訊ねた。
「さぁな」
僕は神木を睨みつけた。
こいつ、何度もさやかを殺しやがって。
僕の怒りのボルテージはマックスに達していた。
僕は、神木にさやかを狙う隙を与えず、攻撃に徹した。
「早いね」
神木はまだ余裕の表情だ。
(隆弘、さっさと終わらせてしまおう)
頭の中で声が響いた。
まさか、父さん?
(ちょっと身体を借りるぞ)
えっ?
その瞬間、僕はまるで操られているような感覚になった。
勝手に身体が動き、神木をボコボコにしていた。
「隆弘!」
さやかが叫んだ。
僕の攻撃スピードが早過ぎて、神木は一切何も出来なかった。
「タカ!やり過ぎだ!死ぬぞ!」
健太が僕を止めようとする。
そんなの僕だってわかっている。
でも、身体が勝手に動くんだ。
(パーティクル・アクセラレーター)
父さんの声が神木の必殺技の名を呟いた。
僕の右腕は強く輝き、フラフラになっている神木に向けて、閃光を放った。
「ぐはっ!!!!!」
神木の腹に穴が空き、多量の血が吹き出した。
なんなんだよ。
僕は神木を殺す気なんてなかったのに。
何してくれてるんだよ。
ちゃんと自分の力で戦って勝ちたかった。
自分の力でさやかを守りたかった。
そう、僕は父さんに奪われたんだ。
いつだって父さんは勝手で僕のことをコントロールしようとする。
家だって母さんにも相談なしで勝手に出て行って、本当に身勝手な奴なんだ。
僕は父さんへの最大の抵抗を示そうと思った。
「勝手なことしやがって!」
僕はナイフで自分の首を掻き切った。
*
「また、ここか…」
僕は真っ白な部屋の中で目を覚ました。
(せっかく、倒してやったのに何故死に戻る?)
父さんの声が聞こえてきた。
「父さんは、僕と神木の戦いに邪魔をしたんだ。だから、リセットしようとした」
僕は素直に自分の思っていることを話した。
(でも、あのままではお前は負けていた。能力も奪われていたかもしれない)
「僕だって、自分の実力が神木に追いついていないことぐらいわかっている。だから、何度も繰り返して勝つまでやるつもりだった」
(しかし、お前は過去に神木から力を奪われただろ?)
「そんなヘマはもう犯さない!父さんは邪魔しないでくれ!」
(お前は何もわかってない…)
「さっさと戻してくれ!元の世界に!」
*
ハッと僕が目を開けると、倒れ込んでいる神木の姿が目に飛び込んだ。
「えっ?戻ってない」
僕が後ろを振り返ると、さやかが呆然と立ち尽くしていた。
「さやか!僕が首を切った後どうなった?」
「えっ?」
さやかはびっくりした表情で僕を見つめた。
「あんた。首なんか切ってなかったわよ」
「嘘だ」
「本当よ。神木を倒してからしばらくフリーズしてたみたいらだったけど、その後何も起こってないわよ。でも、良かった。いつもの隆弘に戻ってくれて」
さやかの瞳には涙が溢れて出ていた。
くそ、父さんに何かされたんだ。
死に戻りを封じられたんだ。
すると、神木の亡骸が半透明になってきた。
「えっ?」
一体何が起こったんだ?
僕とさやかが状況を理解出来ずに立ち尽くしていると、あっという間に神木の亡骸は消え去ってしまった。
「何よ。これ…」
さやかが少し怯えたように言った。
「わからない…」
僕は正直に思った事を言ったが、父さんがこの現象には何かしら関わっているような気がしたが、さやかには今、この場所では言わないことにした。
「さやか、帰ろう」
多くのことがあり過ぎて頭がパンクしそうだ。
僕は早くこの場を立ち去りたいと思い、さやかの手を取った。
「あっ、うん」
さやかも状況が状況なだけにフリーズしてしまっているようだった。
僕らは、ゆっくりと歩き始めた。
「二人ともお疲れ様。ちょっと不思議なことが多すぎて正直俺も由美さんも頭がついてきてないが、今日はゆっくり休もう。形はどうであれ目的であった能力の奪還は達成したわけだし……」
健太は僕とさやかのことを労り、頭の中が真っ白の僕らに今すべきことを教えてくれた。
「ああ、そうだな。ありがとう。健太」
こういう時、いつも健太は指針を示してくれて助かる。
誰かの言うことを何も考えず、実行出来ることが時として心を落ち着けることもあるんだ。
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