第27話 再び、強敵

「やったな!タカ!」


健太は喜んだ。


僕の目の前には完全に意識を失った死神男が倒れている。


「それにしても健太……お前凄すぎだろ」


僕は素直な感想を口にした。


「いや、それほどでも」


健太が嬉しそうに鼻の下を掻いている様子が思い浮かんだ。


「絶対、凄いよ!」


さやかも健太のことを褒めた。


死神男を褒めていた時とは異なり、本気で健太の凄さに関心しているようだった。


「いやいや〜」


健太は今有頂天だろうなぁと僕は思った。


健太、さやか、由美さん、そして二十機のドローンたち。


みんながいれば神木だって倒せるはずだ。


「よし、行くか!ラスボスの所へ!」


僕がそう言うと皆が「おー!」というかけ声で気合いを入れた。


僕とさやかは奥の部屋に向かった。


扉を思いっきり開けると、神木がニコリと笑って「待っていたよ」と言った。


部屋は事前のリサーチ通り、武器などが煩雑に置かれている。


「タカ、久しぶりだね。まさか不死原を倒してここまで来るとはね」


不死原というのは、さっきの死神男の名前のようだ。


「ただ、君が本気を出せば不死原を倒すことは出来るとは思ってたが、あれは完全に君の仲間の作戦勝ちだね」


どうやら神木は僕らの戦闘を見ていたようだ。


しかし、このアジトには僕らの監視カメラ以外はなかったはず。


何故だ?


「何故、戦いの様子を知っているのか不思議かい?」


僕は神木を睨んだ。


まさか、神木は一度死に戻りしていて二回目なのか?


「実はね。これは一回目じゃないんだよ」


神木は笑顔を浮かべながら、手に持っていたコーラを飲んだ。


「タカ、騙されるな。奴はハッタリをかましている可能性が高い」


僕の耳に健太の冷静なアドバイスが届いた。


「タカ、落ち着いて聞いてくれ。自ら二回目であることを伝えるよりも一回目かと思わせて、騙し打ちをした方が有利に決まっている。神木は実は一回目だが二回目と勘違いさせ、こちらの戦意を下げようと企んでいるんだ」


しかし、では何故、僕らの戦いを知っているんだ?


「恐らく、不死原の身体のどこかに小型のカメラが付いていたんだと思う。だから、こちらの戦いを観ることができたんだと思う」


健太は僕の心に浮かんだ疑問に即座に答えてくれた。


「では、はじめますか」


神木がそう言うと、僕は真っ先に超回復の能力を発動させた。


次の瞬間、僕の腹には神木の拳が捩じ込まれていた。


「ぐはっ」


しかし、既に発動済みの超回復の能力のおかげでほぼノーダメージだった。


僕は、さっと間合いを取り、さらに能力を発動させ加速した。


「そう言えば、君には回復能力があったね」


神木は笑った。


「よし!ドローン部隊!全員でタカを援護しろ!」


健太のかけ声でドロー達が神木に近づく。


ガシャ!


ガシャ!


神木が次々とドローンを破壊する。


「鬱陶しいねぇ」


流石の神木もドローンの妨害に苛立っているようだった。


その時、さやかがドローンの陰から神木に接近していた。


「くそっ!」


神木が気づいた時には、時既に遅し。


さやかの拳を完全に神木に届く距離だった。


「サンダーパンチ!」


さやかの手にはめられた黒いグローブが光輝いた。


神木はパンチの直撃こそ避けたが、電流は神木に届き、ダメージを負わせたようだった。


「今よ!隆弘!」


僕は高速で神木の懐に入り、拳を捩じ込んだ。


「ぐはっ!」


神木は後方に飛び、バランスを崩しながらもなんとか着地した。


「やるな」


神木は僕とさやかのことを睨んだ。


神木はさやかの電流のせいで少し痺れたようで、手の感覚を確認しているようだった。


さやかの「サンダーパンチ」がどうやら効いたみたいだ。


さやかは僕との組手でいつも「あと少しのところで当たりそうなのに当てれない」と嘆いていた。


流石に時間を操作して加速する僕に普通の人間が攻撃をヒットさせるのは至難の業だ。


そこで、健太が「拳から電流が出れば例え当たらなくても電気は敵の身体に流れるんじゃね?」というアイデアを元に強力な電流を発するグローブを開発したのだ。


「あのリアクション、さやかの『サンダーパンチ』は知らなかったみたいだな」


健太が僕に耳打ちをした。


「確かに……」


健太の言う通り、神木は二回目のフリをしているだけかも知れない。


「よし!ドローン部隊は敵の視界を遮り、タカとさやかが攻撃できるように援護せよ!」


健太の掛け声で、ドローンは一気に神木の方に向かった。


神木は煩わしそうにドローンを攻撃していき、一機ずつ破壊していった。


ガシャ!


ガシャ!


僕とさやかはその隙に神木に近づき、攻撃を仕掛けるが、見事に避けられ続けた。


「くそ、ドローンも減ってきたし、このままじゃマズイな」


健太が高速で頭を回転させ、新たな作戦を考えようとしていた。


「健太、催涙スプレーはもうないのか?」


「ああ、さっきの戦闘で全て使い切った。あとは閃光弾ぐらいだ」


「じゃあ、僕が『今だ!』と指示を出したタイミングでそいつを使ってくれないか?」


「タカ、何か考えがあるのか?」


「いや、考えなんかないよ。ただ超強力な一発を奴に確実に決め込むだけだ」


「さやか、僕が神木に一発決めにかかった時、もし返り討ちにあったら、その隙にその『サンダーパンチ』を喰らわせてやってくれ」


「了解」


さやかはグローブをぎゅっと握った。


「よし、行くぞ」


僕とさやかは二手に分かれて、神木を狙いに行った。


きっと、神木は閃光弾にやられる前にきっと気づくだろう。


僕は神木の攻撃を受けることになる。


しかし、僕は超回復があるから多少強力な一撃を喰らっても、さやかの攻撃がヒットすればダメージを与えられるはずだ。


そして、電撃でよろめいた神木の首筋を噛み、血を頂く。


その後、僕が自殺すれば能力の奪還は達成だ。


「タカ!じゃあ、指示を頼むぞ。こっちはいつでも閃光弾を撃つことはできる!」


「了解!」


神木は自分の周りを取り巻く、ドローン達を破壊していく。


僕はドローンに気を取られている神木の隙をつき、一気に近づいた。


「今だ!」


その瞬間、僕とさやかは目を閉じ伏せた。


眩い光が周りを照らした。


そして、光が消えると腕で目を抑えた神木の姿があった。


これならいける!


僕は確信した。


「喰らえ!!」


僕は思いっきり神木に殴りかかった。

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