第26話 死神登場
「やっぱり、君は神木さんと同じ力を持っているんだね。話に聞いてはいたが驚いたよ」
死神男は今にも飛び出しそうな目を見開いた。
僕は何も答えなかった。
「タカ、さっきみたいに俺と由美さんで奴に催涙スプレーで攻撃を仕掛けてみる。その隙を見て、一気に攻撃を仕掛けてくれ」
僕はすごく小さい声で「了解」とだけ応えた。
「行くぞ!」
健太の号令で二台のドローンが死神男の方へ向かった。
「フォーメーションA!」
健太と由美さんのドローンが縦に並び、真っ直ぐに死神男の顔に目掛けて飛んで行った。
「閃光弾!」
健太の合図で僕とさやかは目を覆った。
バキッ!
「やられた!」と健太の声が聞こえた時、僕らが目を開けると死神男が僕らに接近していた。
「由美さん!」
由美さんのドローンが方向転換し、死神男に矢を放った。
死神男はまるでその矢が自分に飛んでくるのを知ってたかのように木刀で矢を弾いた。
「これじゃ、催涙スプレーが使えない!」
死神男と僕とさやかは近い距離にいるため、由美さんはスプレーの噴射を戸惑っているようだった。
木刀がさやかを狙う。
さやかはなんとか避けた。
僕が死神男に殴りかかるが、またしても上手く避けられた。
なんだ?こいつ。
僕の動きを読んでいるのか?
さっきから死神男は僕らの動きを先読みしているように思えた。
まさか?こいつも能力者か?
由美さんのドローンが再度、死神男に近づいた。
しかし、死神男はそれを知っていたのか、由美さんのドローンを簡単に木刀で叩き落とした。
ガシャ!
「健太君、ごめんなさい!」
由美さんのドローンが破壊された。
「由美さん、気にするな!二人とももうすぐ俺のドローンが到着する。待っててくれ!」
焦る健太の声が耳に響いた。
「由美さんも新しいドローンの準備を!」
「はい!」
死神男の先読みの力が圧倒的過ぎる。
僕の攻撃も読まれている。
「もしかして気がついたか?」
死神男は真っ白な歯を見せながら笑った。
「あいつ、能力者じゃないの?」
さやかが僕が口を開くより先に聞いた。
「ああ、正解だ」
死神男は自分が能力者であることを認めた。
「そこの彼女、よく見ると可愛いね」
死神男は粘っこい笑みを浮かべてさやかのことを見つめた。
「きもっ!」
さやかは後退りした。
「いいぞ。さやか。このキモイ男と少しお話を続けてくれ」
イヤホン越しに健太からの指示が来た。
「きつと奴は自分の能力のこと話したがっていると思う。ここで時間を稼いでくれたら、ドローンで奇襲攻撃が出来るはずだ」
流石、健太だ。冷静に状況を把握し、最適な作戦を立ててくれる。
「キモいとは酷いじゃないか?」
死神男は、少しずつさやかに近づいた。
「でも、あんたのその能力すごいと思うよ」
さやかは健太の作戦を実行しようとしているようだった。
「本当か?本当にすごいと思うか?」
死神男は嬉しそうに真っ白な歯を見せた。
「うん、だって私たちの動き全部読んでるでしょ?」
「ああ、そうだ。読んでいるというか少し先の未来が見えるというのが正解だ」
「へぇーすごいじゃん」
さやかは死神男のことを見ながら身体のラインを見せつけるかのように大きく伸びをした。
「本当か?本当にそう思うのか?」
死神男は少し興奮しているようだった。
「うん、思うわ。未来がわかるって凄すぎじゃない?てか、どれぐらいの未来がわかるの?」
さやかは目を光らせながら死神男を真っ直ぐ見た。
流石、さやかも女の子だ。
上手いことやってくれている。
これで能力の特徴がわかれば勝つ確率がかなり上がる。
「そうか、凄いと思うか。まあ、見れると言っても数秒から一分程度の未来だ」
死神男は少し鼻の下を伸ばした。
「凄いじゃない!だから、私たちの攻撃を先読みして全て避けることが出来たのね」
「そうだ。凄いと思うか?本当に俺のことを凄いと思うのか?」
死神男は自尊心が満たされせいか、少し浮かれているようだった。
「凄いわよ!そんな人に出会ったの始めてよ」
僕は心の中で「そりゃそうだろ」とツッコミを入れた。
「なるほど、一分間未来が見えるという事は、その一分後が見えたところでどうにもならない状態に持っていく必要があるわけだな」
健太が僕にささやくように言った。
「そうか、やっぱり凄いと思うか」
死神男の鼻の穴がその虚栄心から膨らむのが見えた。
「そこまで凄かったら能力を得てからは一度も誰の攻撃も受けたことはないの?」
さやかは更に突っ込んだ質問をした。
「いや、流石の俺でもそれはないな。例えば、神木さんのように圧倒的なスピードで攻撃されたら未来が見えたところで避けれないケースはある。あと、全方位からの攻撃も難しいだろうな」
いいぞ!さやか!僕は心の中でガッツポーズを決めた。
「さやか、凄いな。ここまで聞き出してくれたら作戦も立てやすい」
健太が関心している様子がイヤホンから伝わってきた。
「よし、もうそろそろドローン部隊が到着するぞ」
「えっ!部隊?どういうことだ?」
僕は健太の発言に思わず、驚いた。
「おいおい、敵に聞こえるぞ。タカ!」
「すまん」
「実は、俺のドローン友達も遠隔でこの戦いに参加してくれることになったんだ」
「マジか」
「俺と由美さんのドローンを合わせて二十機以上がもうまもなく到着する」
これならいける。
二十機もあれば全方位の攻撃を仕掛けることが出来るはずだ。
「まあ、本当は神木と戦う時にとっておきたかったがやむおえない。まずこの死神みたいなキモイ男をどうにかしないとな」
健太の考えではこの二十機を使った作戦は切り札だったみたいだ。
しかし、健太の作戦立案の能力、事前の準備、イレギュラー時の判断……
全てがまるで優秀な指揮官のようだ。
「さぁ、一気にしかけるぞ!」
健太がそういうと死神男が急に慌て出した。
「そんな!馬鹿な!」
死神男は自分の未来を知り絶望したようだった。
「チェックメイトね」
さかやは死神男にウインクをした。
その時、二十機のドローンが死神男の周りに現れた。
「タカ!さやか!このマスクを!」
健太が操縦するドローンが僕らにガスマスクを渡した。
死神男は、自分を取り囲む、ドローン叩き落とそうと木刀を振り回した。
「バキッ!バキッ!」
何台かが叩き落とされた。
「よし!タカ、さやかマスクをつけろ!催涙スプレーを一斉に噴射する!」
僕らがマスクをつけると、死神男に向かって催涙スプレーが二十機のドローンから噴射された。
「喰らえ!」
辺りは完全にスプレーで真っ白になった。
「タカ!今だ!一気に決めろ!」
健太の声が僕に響く。
僕は煙の中、死神男に高速で近づき、マシンガンの様なスピードで拳を腹にぶち込んだ。
「ぐはっ!ぐはっ!ぐはっ!」
催涙スプレーで弱った死神男は無抵抗に僕の攻撃を受け続けた。
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