第25話 いざ、開戦!

「どうだ?健太」


僕とさやかは神木のアジト付近に到着した。


僕らは茂みに隠れ入り口の様子を観察した。


二人の護衛が暇そうに喋っている様子が見える。


「監視カメラで見る限り特に変わった様子はないな」


健太のいつもよりも低い声がこれが遊びではないことを改めて感じさせた。


「了解。健太、いつ攻め込めばいい?」


「そうだな。タカとさやかのタイミングで攻め込んでくれ。その後、俺らはドローンで後を追う」


イヤホン越しに少し緊張感が伝わってきた。


「了解。さやかは行けるか?」


「いつでもいいわよ」


さやかは真剣な眼差しで護衛達を見ながら応えた。


僕のゴーの合図で全てが始まる。


この決断の重さがのしかかるのを感じた。


「よし、行くぞ!」


僕はさやかと一緒に茂みから飛び出した。


「能力発動!」


僕は一気に加速し、護衛たちをボコボコに倒した。


「よし!第一関門クリア!」


健太の喜ぶ声が聞こえた。


僕とさやかはアジトに侵入し、奥へ向かった。


ここからは一旦能力を解除だ。


あまりに使うと疲労感が増していき、後々の戦闘に響く。


「タカ!これから神木の兵隊達がどんどん来るぞ!」


健太と由美さんが操縦するドローンも到着した。


「来た!」


特攻隊のヤンキーABCが現れた。


「またお前か!」


ヤンキーAが大きな声で叫ぶ。


「久しぶりだな」


僕は重い一撃をヤンキーAの腹にねじ込んだ。


「ぐはっ!」


ヤンキーBがさやかに襲いかかるが、さやかは軽い身のこなし、攻撃を避け、回し蹴りを頭に決めた。


「よっしゃ!!」


それを見たヤンキーCがさやかを狙おうとしたが、僕がヤンキーCの腕を掴み、壁に投げ飛ばした。


「ガハッ!!」


「サンキュー!タカ!」


僕とさやかはあっという間に三人のヤンキーを倒した。


その後、次から次と神木の手下達が襲ってきたが、僕とさやかは確実に倒し続け、奥へ進んで行った。


そして、遂に鬼塚が現れた。


「また、お前らか」


鬼塚は嬉しそうに笑った。


「ちょいボスって感じね」


さやかがファイティンポーズを決めた。


「ここは私が相手するわ。隆弘は先に行って神木を倒しちゃって」


さやかは自身満々な表情で言った。


「大丈夫か?さやか?鬼塚を一人では流石キツいんじゃないか?」


「大丈夫よ!ねぇ由美さん、ちゃんと援護してよね!」


「はい!もちろん!」


由美さんの声がイヤホンから聞こえた。


「隆弘と健太で神木をよろしく。ここは女子チームに任せて」


僕は過去にさやかが鬼塚にやられたところを思い出し、不安になった。


本当に大丈夫だろうか。


由美さんの援護があるにしても、相手はあの鬼塚だ。


パワーもスピードも相当なものだぞ。


「いや、さやか!ここはみんなで戦おう!」


健太が提案した。


「四人で一気に倒した方が神木と戦う時に四対一の状態で有利に戦える。今後のことを考えるならみんなで鬼塚を倒した方がいい」


それを聞いたさやかは少し考えた様子で「確かに……」と呟きながら首肯した。


「了解!健太、作戦変更よ!みんなで鬼塚を叩くわよ!」


「お前ら、さっきから何をゴチャゴチャ言ってる」


鬼塚が金属バッドを持って迫ってきた。


「よし、行けぇー!」


健太がドローンで鬼塚の顔面に向かい、攻め込んだ。


「この野郎!」


鬼塚はドローンを叩き落とそうとするが、健太は鮮やかに避けた。


「今だ!由美さん」


健太の指示で由美さんの操縦するドローンからミニロケットが発射された。


「みんな、目をつむりって!」


まばゆい光が周りに広がった。


「閃光弾か!」


僕が目を開けると、鬼塚が目を押さえて苦しんでいるようだった。


「よし、一気に行くぞ!」


健太のドローンが鬼塚に接近し、催涙スプレーを噴射した。


「くそぉ!」


鬼塚は金属バッドを振り回すが全く見当はずれな方向に向けていた。


すごい、すごいぞ、健太。


由美さんとの連携プレーが完璧だ。


「よしっしゃ!」


さやかはそういうと、目の見えない鬼塚に超強力な上段回し蹴りを決めた。


ドン!


「まじかよ!」


健太が驚いているようだった。


あの大男を一撃でさやかは倒したのだ。


てか、僕は何もしてない。


「みんなすごいな」


僕は率直な感想を述べた。


「さやかは確かにあれぐらい敵に隙があれば一撃で仕留めるのもわからなくもないが、由美さんはいつの間にあんなにドローンを上手く使えるようになったの?」


由美さんがクスクスと笑っている声がイヤホンから聞こえる。


「実は、タカとさやかが特訓している間に俺と由美さんもドローンのシュミレーションゲームで散々特訓してたんだよ」


僕の脳裏には健太の得意げな表情が浮かんだ。


「なるほど」


「ちなみに今回のようなパターンはかなり練習してきてるから、由美さんからしたら楽勝だったと思うぞ」


すごい。これなら神木に勝てるかも知れない。


みんなで連携して戦えば、こんなにも簡単にあの鬼塚を倒すことが出来たんだから。


「てか、隆弘何もしてないよね?」


さやかが悪戯っ子のような笑みを浮かべ、僕の顔を覗きこむ。


「えっ?いや、みんなが凄すぎてついていけなかったよ」


僕は少し頭を掻いた。


「よし、奥の部屋に行こう。さっさとケリをつけて今夜は俺の家でパーティーだ」


健太の嬉しそうな声が聞こえた。


その時、前方からまるで死神のような顔をした長身の男が二本の木刀を持って現れた。


「初めまして」


その死神のような男は、軽く会釈をし、少しずつ僕らに近づいて来た。


「うぁ、新キャラ登場じゃん」


さやかがやれやれという表情で僕のことを見た。


「神木さんと鬼塚からは君たちの話は前に聞いたことあるよ」


死神は白い歯を見せるように笑った。


これはヤバそうな感じがする。


僕はそう思った。


コイツはきっと鬼塚よりも圧倒的に強い。


そう、僕の本能がアラートを出している。


そして、次の瞬間木刀が僕を襲った。


「早い!」


僕は咄嗟に避けたが、次は死神男はさやかを狙った。


「能力発動!」


僕は一気に加速して、死神男に殴りかかった。


「早いね〜」


死神男は僕の拳を避け、間合いをとった。


「ありがとう。隆弘。危ないところだった」


「うん、あいつ鬼塚よりも全然強いよ」


僕は笑う死神男を睨んだ。

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