第22話 助っ人再び

「よし、そろそろ完了だ」


僕は神木のアジトにあった武器の撮影を終えて、帰ろうとした。


「タカ、ちょっと待て!」


イヤホンから届く健太の声から緊張感が伝わった。


「由美さんが入口近くで人影が見えたと言ってる」


「マジか、どうすればいい?」


「今はまだ動くな。入口近くの人影が何者かはわからないがまだこの廃墟に入っては来てない。もう一台ドローンを飛ばすから上から様子を見てみるよ。由美さんは入口から誰かが入らないかだけしっかり見ておいて」


「了解」


僕と由美さんは健太の作戦を実行することにした。


「よし、もうすぐ到着するぞ」


健太の操縦するドローンが神木のアジトの上空に着いた。


「あいつか…」


「誰かいたのか?」


「ああ、なんか草むらでゴゾゴゾしているな。怪しいことは間違いないが、神木たちではなさそうだ」


「それは良かった。で、僕はどうすればいい?」


「うーん、そうだなぁ」


健太は少し悩んだ様子で画面を凝視している感じがした。


「あっ!あれは酔っぱらいだな。だったら高速移動でさっさと入口から逃げれば良いと思う」


「そうか、それは良かった」


僕は高速でアジトから抜け出し、健太の家に戻った。


「お疲れ様!で、どうだった?」


僕と健太は部屋に入った。


「けっこう緊張したな。監視カメラは問題なく動いているか?」


「ああ、問題ないよ。タカがちゃんと着けてくれたからしっかり撮影出来ている」


健太は自分の目の前にあるモニターを指差した。


その大型のモニター画面は複数に分かれ、僕が設置したカメラからの映像が映し出されていた。


「このカメラからの映像は全て録画してあるから、後でゆっくり観ることもできるぞ」


健太は得意げな顔をした。


「流石だな。健太。由美さんもありがとう。由美さんがちゃんと監視してくれたおかげで異変に気付けた」


「うん、井上君こそありがとう。でも、ただの酔っ払いで良かったね」


「そうだね。少しヒヤッとしたね」


「あれは少し緊張したな」


健太も深く首肯した。


それから僕らは監視カメラによる神木たちのアジトの調査を1か月ほど続けた。


どうやら、神木たちは定期的に集まっており、毎週金曜日の夜は必ず集会を行っていることがわかった。


僕らは学校が終わると健太の家に集まり、監視カメラで撮影した動画を早送りで観ながら、拳銃のレプリカを作ったりした。


「どうだ?これ」


健太はレプリカの拳銃を僕に手渡した。


「なんかそれっぽいな」


僕は銃の重みを確かめた。


「これで準備できるものは用意できたな」


少し目がちに健太は言った。


そう、準備が出来たということは僕は神木と戦わないといけない。


あいつに能力を持たせ続けるは危険過ぎる。


「そうだな。攻め込む日を決めないといけないな」


「うん、Xデーを決めないとだな」


「Xデーか、なんかカッコイイな」


健太の表情が少し明るくなった。


「だろ?」


僕は心配そうな由美さんの視線に気づかないふりをして思いっきりの笑顔で親指を立てた。



「隆弘って最近、健太と二人で何か企んでいるでしょ?」


さやかが学校からの帰り道で声をかけてきた。


「あれ?さやか、今日部活は?」


僕はいつもなら部活に行っているはずのさやかが放課後の帰り道で声をかけてきたので驚いた。


さやかほど部活動を大切にしている人もそうそういない。


「今日は休んでいるんだよ。お母さんとちょっと行かないといけないところがあってね」


「へぇー珍しいね」


「てか、あんた私の質問に答えなさいよ。何か二人で企んでいるんでしょ?」


さやかが僕の顔を覗き込んだ。


「いや、普通に遊んでいるだけだよ」


あまりにもさやかが至近距離で見つめてくるものだから僕は目を逸らした。


「本当かなぁ。またなんか危険なことに手を出したりしてない?」


うぁ、さやかは勘がいいな。僕はさやかから向けられた疑いの目を直視出来なくなっていた。


「だって、あんた前に鬼塚とかいうヤンキーとケンカしてたじゃん?また、そんな感じで危ないことに首を突っ込んでない?」


おいおい、さやかはなんでこんなに勘がいいんだ。


このまま健太の家に行きたいところだったかが行きにくいぞ。やれやれどうしたものか……


「突っ込んでないよ!」


僕は少しオーバーに顔の前で手を振った。


「おーい!タカ!」


さやかと僕が話していると後ろの方から健太の声が聞こえた。


うぁ、最悪なタイミングで健太が現れた。


「あ、来た来た」


さやかは少し意地悪な表情で笑った。


「おっ、さやかどうしたんだ?部活だろ?」


「うん、ちょっと用事があってね」


「へぇー珍しいな。俺ら帰宅部と同じ時間に下校なんて」


健太も僕と同じ感想だったようだ。


「ところで、あんたたち最近何か企んでいるでしょ?」


さやかが鋭い視線を向けた。


「企んでない、企んでない」


僕は少しオーバーに否定した。


「余計に怪しいな」


さやかはさらに鋭い目でこちらを見た。


「健太、あんたの家で最近何をしてるの?」


「まあ、簡単に言うと町の平和を守る活動だな」


健太は少し得意げになった。


健太は昔から無駄にカッコつけるところがある。


特に女の子の前だと尚更だ。


僕は健太の浅はかな発言に肩を落とした。


「隆弘!平和を守るとか絶対危ないことしてるでしょ!」


さやかが鬼の形相で僕のことを睨んだ。


おいおい、勘弁してくれよ。健太よ。


こうして僕はさやかに一部始終を話すことになった。


「はぁ?『死に戻り』?なにそれ?新作のラノベ?」


さやかははじめはライトノベルの話でもされているのかと思ったようだった。


しかし、僕らがあまりにも真剣に話すものだからさやかも信じてくれたようだった。


「でも、その話だと隆弘が一人で敵のアジトに乗り込んで戦うわけでしょ?不利じゃない?」


さやかは腕を組みながら言った。


「ああ、うん、でも健太も由美さんも直接戦うのは無理だから、ドローンで援護してもらうつもりだよ」


「うーん、それにしても不利よ。あんたと同じかそれ以上の能力を持つ神木とその他ヤンキー達よね?ドローンの援護があったとしても厳しくない?」


さやかはかなり的を得たことを言った。


「うーん、でも仕方ないよ。これが僕らの中でベストの作戦なんだよ」


僕は少し頭を掻いた。


「あたし、隆弘と一緒に戦うわ」


「えっ!?」


「一緒に戦ってやるって言ってるの!」


さやかは胸を張り、強気で言い放った。

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