第21話 潜入成功
「ここには武器が置いてあるのか」
僕は画面から目を離せなかった。
ドローンが開けた扉の先には、金属バットや鉄パイプ、さらにナイフが置かれていた。
部屋の奥のノートパソコンが置いてある机がり、その引き出しには、三丁の拳銃が入っていた。
「おいおい、これもしかして全部本物か?」
健太は驚きを隠せないようだった。
「流石にちょっと怖いね」
由美さんも敵の危険さを改めて感じているようだった。
「こんなヤバイ武器を持っている奴らと戦うのかよ」
健太は肩を落とした。
「健太、このことが事前にわかって良かった。相手が銃を持ってるならそれなりに対策をした上で攻め込めばいいんだよ」
僕は健太の肩を叩いた。
「それなりの対策って?」
健太は僕のことを見つめた。
「それを今から考えるんだろ?」
「あっ、そっか!」
僕と健太は笑い合った。
しかし、神木以外の奴らもこの武器を使って戦ってくるとなるとかなり厄介だ。
仮にここにある武器が全てだとしても苦戦することは予測されるし、恐らく他にも武器は持っているだろう。
さぁ、どうすればいい。
「作戦としては、ここに神木がいる時に襲撃するというスタイルでいいんだよな?」
健太が尋ねた。
「うん、そうだね」
僕は画面を見つめながら応えた。
「じゃあさ、ここのアジトにまずは監視カメラをこっそり付けるのはどうよ?」
「確かに良いかも」
由美さんは深く首肯した。
「だって、あいつらがここをどんな感じで使っているかもわからないし、まだまだ情報不足だもんな。今日はこの辺にしておいて、またカメラを設置しに行くのはどうだろ?」
確かに健太の言う通りだ。今はまだあまりにも情報が不足している。
今回の戦いはいかに情報収集をし、ありとあらゆるシナリオを考えておき、一回で仕留めるのが大切だ。
相手は「死に戻り」の力を持っている。
最悪、向こうからしたらこの今の世界線が一回目ではなく、二回目以降の可能性もある。
そうなった時、手の内は読まれているわけだ。
しかし、神木が僕から「死に戻り」の力を奪ったように、僕も奪い返す可能性はないことはないはずだ。
少しでも勝てる確率を上げないといけない。
「おい、タカ?どう思う?」
「あっ、ごめんごめん、そうだな。今日はこの辺にしておいてまたカメラを取り付けに潜入しよう!きっと上手くいくはずだ!」
由美さんが僕のことを心配そうに見つめているのを感じた為、僕は少し自分を鼓舞した。
「よし、じゃあ、今日はここまで!ドローンを家に戻すぞ」
健太はコントローラーをギュッと握り、ドローンを帰還させる準備に入った。
*
その後、僕たちは定期的に健太の家に集まり、作戦を立てたりして決戦への準備を行った。
まず、健太は小型のカメラを入手し、改造を行った。
「このカメラは電源不用で取り付けは比較的簡単だ。だか、この取り付けをドローンにやらせるのは流石に難しそうだ。なので、奴らがいないタイミングを狙ってアジトに付けに行かないといけない」
健太がカメラをいじりながら真剣な口調で言った。
「うん、それなら僕が付けに行くよ。能力を発動させて高速でやれば普通の人よりも早く作業を終えることが出来るはずだ」
「ありがとう。タカ。何度かアジトにドローンを潜入させているがアジトの様子が変わった様子はなかった。きっと向こうは監視カメラなどは付けてないと思う。でも、油断は出来ないから無理はするなよ。ヤバいと思ったら一旦戻ってくるんだぞ」
僕は健太が僕の目の奥まで見ているように感じた。
「うん、了解」
「当たり前だが一回切りの命だ。タカ、本当に無理だけはするなよ」
「わかってるって」
「井上君、私からもお願い。無理はしないでね」
由美さんも心配そうな表情で僕を見た。
この二人がここまで心配するのも無理はない。
しかし、健太のドローンの侵入に対して対策を神木がして来てない時点で、恐らくこの世界線は一回目だ。
二回目以降であれば、そもそもドローンの侵入を許さないだろうし、何かしら策は打ってき手そうだ。
「大丈夫。由美さん、健太、無理はしないよ。約束する」
僕はニコリと笑った。
*
「どうだ?タカ?誰かいそうか?」
イヤホン越しに健太の声が聞こえた。
「いや、事前偵察の通り、誰もいなさそうだ」
「よし、今由美さんが入口付近にドローンを着陸させて監視してくれているから後方から誰かが来たときはすぐ知らせることが出来るぞ」
「ありがとう。じゃあ、作業を開始するぞ」
僕は健太に事前に指導された通り、監視カメラの設置をはじめた。
健太がつけやすいものを選んでくれたのか、比較的すぐに設置することができた。
「どうだ?見えるか?」
「ああ、いい感じだ。問題なく映っているぞ」
僕は次の設置予定場所に移動した。
「慎重にいけよ」
健太の心配する気持ちが僕の耳に届いた。
「了解」
ここで万が一、誰かと出くわせば全てが終わる。
この世界線が一回目ではなく、実は二回目以降で僕の侵入は許すが、待ち伏せして攻撃を仕掛けてくるシナリオも考えられる。
これは一度、「死に戻り」の力を得たからこそわかることだが、あえてアジトへの侵入を許し、一回目の世界線だと思わせる作戦だってあり得るんだ。
「よし、次の場所に着いた。作業を開始するぞ」
「オッケー、タカ。良い調子だ」
こうして僕は残りの場所にも予定通り、監視カメラの取り付けを完了した。
「案外、上手くいったな」
健太の喜びがイヤホンから伝わってきた。
「うん、ここでこの部屋にある危険な武器を回収しておきたいところだが、それをすると作戦がバレるな」
今僕は武器が大量に置かれている部屋にいる。
「それはダメだな。でも、まだ誰も来る気配がないからその部屋にある武器の写真を細部がわかるように撮影しておいてくれないか?」
「別に良いけど、何故だ?」
僕は素直な疑問を口にした。
「ここにある武器のレプリカを作って、決戦の前日にすり替えようかと思ってるんだ。例えば、金属バッドをもっと脆い素材でレプリカを作っておけば一撃喰らっても致命傷にはならないだろ?」
「確かに……」
僕は健太の提案に深く納得した。
「でも、健太!お前、レプリカなんか作れるのか?」
確かに健太はメカをいじったりと器用であるがそこまで出来るのか疑問だった。
「いや、俺が作るというか3Dプリンターに作ってもらうのが正解だな」
「お前、そんなの持ってるのか?」
「俺の部屋のタンスの中に入ってるよ」
「そうだったのか。でも、脆い素材で作るとなると金属バッドなら重さが違って、握った瞬間に気付かれそうじゃないか?」
「流石、タカ!そこは見落としてた!」
健太は時々、抜けていることがある。
イヤホン越しでも健太が深く頷いている様子が感じ取れた。
「まあ、バッドとか重量を誤魔化せなさそうな奴は諦めて、例えば拳銃やナイフだけレプリカにするのはどうだ?特に拳銃はゲームチェンジャーになる気がする」
「確かにな。じゃあ、その辺の危険度高そうな武器に絞って写真とか撮っておいてくれよ」
「了解」
僕は武器の撮影作業に入った。
きっと、神木は「死に戻り」を使う時に拳銃を使うはずだ。
その時、レプリカの引き金を引いた時がチャンスだ。
このレプリカ作戦はきっと大逆転のカードになる。
僕はそんなことを考えながら黙々と撮影を続けた。
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