第17話 戦いの末に

「どういう経緯で僕の過去を知ることが出来たのか気になるが、お前から能力を奪えばそんなことどうでもいい」


神木は頭に血が上ったのか、大技を繰り出そうとした。


神木の右の掌が光り出す。


「そうはさせるか!」


僕は一気に神木の側にまで近づき、蹴りをお見舞いした。


あの大技は発動する際に少し間が発生するため、距離を取ってないと近づかれてしまう。


僕はその間を突いたのだ。


これでいい。神木は冷静ではない。


「ぐはっ!」


神木の掌の光は消え、倒れ込んだ。


「くそっ!」


神木は頭に血が昇っているようだった。


神木は立ち上がり、またしても再度大技を決めようと体勢を整えた。


神木の掌が明るく光る。


この大技、直撃すれば致命的だが発動までにやや時間かかかる。


隙を与えず、攻め続ければ勝算はある。


僕は一気に距離を詰めた。


僕が殴りかかろうとすると、神木の掌の光は消え、神木は僕から距離を取った。


僕は神木が逃げても、また近づき攻撃を仕掛ける。


「くそっ、撃つ隙を与えない気か」


神木が僕の作戦に気づいたようだったが、気づいたところで無駄だ。


僕は攻め続けるだけだ。


「おい、タカ!」


少し離れたところの道路から健太が呼んだ。


まずい。健太が来てしまった。


神木がいやらしい笑みを浮かべた。


僕が健太に気を取られている隙に神木は準備を完了したようだった。


「喰らえ、パーティクル・アクセラレーター!」


閃光が高速で発射された。


「えっ?」


そんな馬鹿な……


僕は無傷だった。


しかし、健太の腹には穴が開き、そこから大量の血が噴き出した。


健太は倒れ込み、全く動かなくなった。


次の瞬間、またしても神木の掌が光り輝くのを確認した。


「くそ、またか」


ここは死に戻って、もう一度やり直すしかない。


健太がこうなってしまった以上、戦い続けても意味がない。


閃光が放たれた瞬間、僕はナイフで自分の首を切った。



「はっ!」


僕は目を覚ますと、思わず周りを見渡した。


僕は今自分の部屋にいるようだ。


スマホの画面を見ると、由美さんとケーキ屋さんに行く日の朝であることを確認した。


神木のやつ。健太を2度も殺した。


絶対、許せない。


しかし、死に戻りするたびに展開が変わり、前回では現れなかった健太がやって来てしまった。


この死に戻りも一概に繰り返したからと行って良い展開になるとも限らない。


ただ、この能力があるのなら上手くいくまで繰り返せば良いという話ではあるが、これはかなり精神的に辛い。


大切な人の死を何度も見させられるのは、悔しさという言葉では表現出来ないぐらい悔しいし、悲しい。


でも、なんとかしたい、変えたい未来があるからどんなに苦しくても僕は繰り返す。


それが出来る力を与えられたのたから。


そう、僕はもっと強くならないといけないんだ。


僕は神木と戦う決意をもう一度固めた。



「君とは数え切れないぐらい戦っているからね」


僕は神木にあえて宣言した。


「へぇー僕から聞く前にそういうこと言っちゃうんだ。相当な自信だね」


「隠そうとしてもいつもお前は勘付くからな」


「へぇーなかなか苦戦してきたんだね。じゃあ、今度こそはこのループから解放してあげるよ。僕が君の能力をもらうからね」


神木は僕に近づき、蹴りを決めようとした。


「ちっ!」


僕はかわして、少し間合いをとった。


僕は健太が殺されたことを思い出した。


今回こそは健太が巻き込まれないように早めに決着をつける。


「何度もやり合ってるだけあって、良い動きをするね」


神木は微笑した。


「一気に決める!」


僕は怒りの力で超回復の力を発動させた。


「すごい自信だね。これは気を引き締めないと」


「ああ、ママを助けたかったら本気でかかってこいよ」と僕が発した瞬間、神木の顔が歪んだ。


神木は「うっせぇ」と言い、僕の腹に強力な拳をねじ込んだ。


僕は数メートル吹き飛ばされたが、超回復を発動させていたおかげでノーダメージだ。


すぐに僕は体勢を整えて、神木に向かって行った。


「どういう経緯で僕の過去を知ったか知らないがあんまり調子に乗るなよ」


神木の高速連続パンチが迫ってくる。


僕は直撃を恐れず、神木に攻撃をしかけ続けた。


それをなんとか神木は避け、埒が開かないと感じたのか距離をとり、間合いをとった。


「はぁ、はぁ……」


神木の息が上がっている。


僕はもちろん超回復の発動により、体力は全く減ってない。


戦闘の序盤で超回復を発動させておくとかなり有利に戦えることを実感した。


さぁ、そろそろ来るかあの大技。


神木の掌が明るく輝き出した。


「もう知ってるよね?こいつの力は」


神木はニタニタ笑いながら言った。


「喰らえ、パーティクル・アクセラレーター!」


閃光が放たれた。


閃光が僕の頬をかすめた。


「ちっ!」


神木は舌打ちをした。


僕はまた距離を詰めて肉弾戦に持ち込んだ。


神木はなんとかして距離を取ろうとするが、僕はその思惑を知っているため、距離を取られる度に詰めていく。


神木に疲労感が滲み出してきた。


「打とうにも打てないや」


神木はそういうと「もっと遅くなれ!」と叫んだ。


神木の動きがさっきまでの1.2倍速程度加速した気がした。


速い!


あいつ、スローダウンの能力を強化したのか?


くそっ、距離を詰められない。


神木の右手の掌が光り輝く。


まずい。今の奴のスピードでパーティクル・アクセラレーターを放たれたら避けれないかもしれない。


「喰らえ、パーティクル・アクセラレーター!」


閃光が迫ってくる。


「ぐはっ!」


僕の右腕がちぎれ飛んだ。


神木は僕の右腕を拾い、傷口から血を吸った。


僕は慌ててナイフを取り出し、死に戻ろうとした。


「キャー!」


由美さんの叫び声が聞こえる。


そうはさせないよ。


神木は銃を取り出し、自分のこめかみに銃弾を放った。


バン!


すると、神木のこみかみから血が飛び散ったが、その後一瞬で回復したように見えた。


「これで能力は僕のものだ」


神木は勝ち誇ったように笑った。


神木は僕に右腕を返すと、「君の能力ならしばらくくっつけておけば回復するはずだよ」と余裕の表情を見せた。


僕はどうして良いかわからないので、思わず神木の言う通りに腕をくっつけた。


「ほら、再生してきたでしょ。君のその超回復の力は健在だよ。僕のパーティクル・アクセラレーターと一緒さ」


確かに神木の言う通り、腕はくっつき始めていた。


「でも、もう君は『死に戻り』は出来ない」


神木は青空よりも爽やかな笑顔を浮かべた。

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