第13話 新たなる力
「驚いているようだね。タカ」
神木が話しかけてきた。
「この力を使えるのは、君だけじゃないんだよ。強盗との戦闘を見て、すぐにわかったよ。君が時間の流れを遅くする能力を持っていることを」
違うよ。神木。
僕はあえて驚いてやってるんだ。
ここで神木に悟られてはならない。
神木の拳が超高速で僕に向かってくる。
「ちっ!」
僕がなんとか避けると、神木が舌打ちをした。
「早いね、いいね〜」
イラッとしているはずなのに神木が気持ち悪いぐらいニコニコし始めていた。
「タカ、君は一体何回繰り返した?」
「えっ?」
「タカの持ってる『死に戻り』の力を返して欲しいんだよ」
神木は僕がとぼけようとする前に釘を刺してきた。
その瞬間、神木が一気に近づき、僕の腹に一撃入れた。
「ぐはっ!!」
まずい、早く体勢を整えないと、神木のマシンガンのようなパンチが飛んでくる。
僕は慌てて、神木から距離を取った。
「良い判断だ。タカ、僕たちこうやってやり合うの何回目だっけ?」
「えっ?」
僕は背筋に悪寒を感じた。
これは、まずい。
何故、悟られた?
でも、どこで?
僕が頭の中で色々と考えていると、神木は笑い出した。
「はは、タカ、そんな反応しちゃったら一回目じゃないのバレバレじゃないか?」
全てを見抜いたような目をした神木が僕の顔を覗き込む。
くそ、カマをかけられた……
「じゃあ、遠慮なく君からその『死に戻り』の力を返してもらうとするか」
神木がまるで瞬間移動したのかというぐらい高速で僕の側まで近づき、僕の腹に重い拳を入れた。
「ぐはっ!」
くそ、どうすれば……
やっぱり、神木の反応を見る限り、死に戻りの力を奪うには一度僕が死に戻る必要があったみたいだ。
あとの条件は一体なんなんだ?
それをまだ満たさないからこそこうやって神木は僕を攻撃しているはずだ。
「何、ボヤッとしてんだよ」
神木がにやりと笑いながら、高速連続パンチを繰り出してきた。
ここで一旦、リセットしてやり直すか?
このままだと神木の都合の良いように持って行かれそうだ。
「ぐはっ!」
くそ、、、意識が飛びそうだ。
神木の連続パンチの雨が止んだ。
僕は地べたに倒れ込み、息をするのがやっとの状態にまで追い込まれた。
早く、死なないと……
僕はポケットの中のナイフを握り、自分の首を切ろうとした。
「そうはさせないよ」
神木が僕の手を踏みつけた。
そして、神木はナイフを僕から奪いとり、「タカ、状況が悪くなったから戻ろうとしたでしょ?」と問いかけた。
神木に全て読まれている。
これからどうするつもりだ。
「僕だって元々は同じ能力を持ってたんだよ。どういう戦い方をするかは容易にわかるよね。不利になったら死ぬ。これを繰り返すって言うのが最適解だもんね」
神木がクスクスと笑いながら僕を見下ろす。
「おい!タカじゃないか!大丈夫か!」
漫画を片手に持った健太が近寄ってきた。
「あれ、お友達?」
神木がとぼけた表情を浮かべ首を傾げた。
「お前!タカになんてことしたんだ!」
健太は神木を睨みつけた。
「遊んであげてるだけだよ」
神木はまるでラッキーイベントでも発生したのかというぐらい嬉しそうな表情を浮かべた。
「そんなはずないだろ!ふざけるな!」
健太はグッと拳を握りしめた。
「逃げろ!健太!」
倒れ込んだ僕は残された力を振り絞り、思いっきり叫んだ。
健太なんか神木にかかれば一瞬でやられてしまう。
場合によっては命の危険性すらある。
くそ、最悪の展開だ。
「逃げれるかよ!」
健太は神木に向かって拳を振り上げた。
*
健太との出会いは小学校一年生の時まで遡る。
元々、内気な僕ははじめての環境だとすごく緊張してしまうため、なかなか友達を作れずにいた。
そんな中、健太が僕に話かけてきたんだ。
「それ、めっちゃカッコいいな!」
健太は僕の筆箱を指差した。
「えっ、うん、ありがとう」
その時、僕が使っていたのは当時日曜日の朝に放送されていた戦隊モノのキャラクターがプリントされた筆箱だった。
思い返せば、健太は戦隊モノよりもアニメなどの方が好きだったので、あまりにも僕がコミュ障でクラスで浮いているから、気を遣って話しかけてくれただけかもしれない。
健太は昔からそういうところがある。
僕をクラスの輪の中に入れてくれるようにさりげなく計らったりしてくれたお陰で、少なくとも陰気な僕でも小学校三年生になるまでは比較的楽しく過ごせた。
何故、三年生になるまでかというとクラス替えのせいで健太と別々になってしまったからだ。
その後、僕はクラスメイトからイジメの対象にされたが、健太は別のクラスでありながらも僕のことを気にかけてくれていた。
そして、健太は大して強くもないのにいじめっ子に僕の代わりに立ち向かっていったことがあった。
もちろん、健太はボコボコにされた。
僕もボコボコにされた。
でも、僕はこうやって味方になってくれる友達がいるだけで嬉しかった。
そう、健太はそういう人間なんだ。
自分が危ない目に遭っても、他人を助けようとする。
*
「ぐはっ!!」
健太が地べたに倒れ込んだ。
「友情、いいね〜」
神木は僕らを嘲笑うかのように言った。
健太が立ちあがろうとすると、神木は健太の頭を思いっきり蹴り飛ばした。
「健太!」
僕は最後の力を振り絞り、立ち上がった。
「死んだかもね。動かないや」
神木は倒れた健太を頭を踏みつけながら言った。
「タカ、なんとか気力で立っているって感じだね」
神木は足元を眺め、まるで虫ケラでも見るような目をしていた。
「お前!絶対許さないぞ!」
僕はもはや冷静な判断が出来なくなっていた。
気がつくと神木の方にグッと近づいていた。
「えっ」
僕の拳が神木の頬をかすった。
アドレナリンがバンバン分泌されているのか、僕は全く痛みを感じなくなっていた。
「嘘だろ」
神木がかろうじて僕の蹴りをかわす。
「何故、動ける?」
神木は僕の動きに動揺しているようであった。
僕は神木にことごとく攻撃を避けられ続けるが諦めなかった。
それにしても不思議だ。
こんなにも動きまわっているのに、身体が全然疲れない。
「はぁ、はぁ、はぁ」
神木の息が上がっている。
「何故だ?何故、そんなに動ける?」
これはいけるかもしれない。
「お前!覚醒したのか?」
さっきまでの余裕をこいていた神木が確実に焦ってるように感じた。
あれ?身体の傷が回復している。
一体何が起こったんだ?
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