第6話 助っ人登場!

「この野郎、マジでぶっ殺す!」


ヤンキーAが何度も僕に殴りかかる。


それを僕は何度も避ける。


しかし、これは思ってたよりもキツいな。


一対一で戦えてはいるが、入れ替わり立ち替わりで別のヤンキーが僕に攻撃をしてくる。


僕もヤンキーにある程度攻撃を決めることは出来るが、相手を倒すことは出来てないので、どんどん体力が削がれていく。


つまり、時間が経つほど僕は不利になるというわけだ。


確かに、さやかなら一対一に持ち込めたら一人ずつ倒していけたかも知れない。


でも、今の僕の実力ではそれは難しそうだ。


クソっ……すればいい?


そんなことを考えていると、ヤンキーBがまた殴りかかってきた。


ヤンキーBの拳をしゃがみながら避けたあと、そのまま足払いをする。


バランスが崩れたヤンキーBはそのまま倒れ込み、起き上がろうとするところを蹴り飛ばす。


「ぐわぁ!」


よし、上手くいったがまだ致命傷を与えられたわけではなかった。


くそ……これじゃ、埒が開かない……


そして、今度はヤンキーCが攻撃を仕掛けてくる。


なんとか避けるが、自分の反応速度が遅くなって来ているのを感じる。


「どんどん奴の動きが遅くなっているぞ!いける!いける!」


後方からさっき蹴り飛ばしたヤンキーがヤジを飛ばす。


「やっちまえ!!」


ヤンキーAも大声で叫ぶ。


ここまでか……


ヤンキーCの攻撃が止まらない。


こいつ三人の中でも目立たないタイプだが、戦闘の実力で言えば一番かも知れない。


確実に僕をじわじわと追い込んでいく。


「隆弘!」


さやかが現れたのだ。


「え、なんで?」と僕が混乱していると、すごいスピードでヤジを飛ばしていたヤンキーAとBの側まで来ていた。


「なんだ!この女!」


そう、ヤンキーAが気づいた時には遅かった。


ヤンキーAの頭をさやかが蹴り飛ばしたのだ。


そして、次にヤンキーBの腹に拳を入れる。


さやかの一撃で二人とも倒れ込んだ。


ヤンキーCが振り返ろうとした時にはさやかは完全に至近距離まで近づき、ヤンキーCを殴り飛ばしていたのだ。


「いくよ!隆弘!」


さやかは僕の手を掴み、狭い路地から出るよう誘導した。


「あんた、馬鹿でしょ!何で本当に三人のヤンキーと戦ってるのよ!」


「ごめん、でも戦わないといけなかったんだよ。そんなことより、なんでさやかがここにいるんだよ」


「勘よ!勘!今朝のことがあったから、いつか誰かと戦うのかとは思ってたけど、まさか今日とはね」


僕らが路地から出て逃げると、ヤンキー達が後を追ってきた。


すると、僕らの行先に金属バッドを持った大男が待ち構えていた。


「鬼塚さん!!」


ヤンキー達が歓喜をあげた。


「うぁ、ヤバそうな奴出てきたじゃん……」


さやかはサッと立ち止まった。


僕も立ち止まり、四回目の人生で初の強キャラの出現に動揺を隠せずにいた。


こうやって何度も人生をループしていると、自分の振る舞いが変わって未来が変わるのだが、今回はそれが必ずしも良い方向にはいかないケースの典型例だ。


「これはマズイな……」


「うん、マズイわね……」


後方にはヤンキーが三人、前方には金属バッドを持った鬼塚という男が一人待ち構えているという危機的状況だ。


さぁ、どうする……


「隆弘、私があの大男をやるわ。あんたは後ろのヤンキー三人と戦ってちょうだい」


「いや、さやかでもアイツは危ないよ。だって武器持ってるんだよ」


「それでもやるしかないわよ!ごちゃごちゃ言わずやるわよ!」


さやかは大男に向かっていった。


さやかは大男が振り回されて金属バッドをなんとかかわし、攻撃をしかけようとしていた。


この鬼塚という大男は見た目に似合わず案外早い動きであるため、さやかが攻撃する隙がなかなかなさそうだった。


一方、僕は追っかけてきたヤンキー三人と戦わないといけない。


状況的にさっきよりも不利だ。


しかし、ヤンキー達も疲労しているのか少し動きが鈍くなっているようだった。


僕は立ち代わり、攻撃を仕掛けてくるヤンキーたちを抑え込まないといけない。


僕がヤンキーに負けるとさやかが確実にやられてしまう。


僕は必死の思いでヤンキー達と戦った。


「このクソオタクめ!!」


ヤンキーAが僕に殴りかかる。


僕は何なく避け、カウンターパンチをお見舞いする。


「ぐぁ!」


倒れ込むヤンキーAにさらに蹴りをくらわせる。


「痛って!!」


次にヤンキーBとCが同時に迫り来る。


ヤンキーAが倒れ込んだままだったので、とりあえず、一対二の状態持ち込むことが出来た。


しかし、この二人をギリギリ止めることは出来ているが、致命傷を与えるには至りそうもない。


さやかは大丈夫なのか?


僕は目の前の二人に対応するので精一杯なので様子がわからない。


ドン!


僕の後方で凄く鈍く嫌な音が響いた。


まさか、さやか!


僕はヤンキーから離れ、間合いをとり、後ろを確認した。


さやかが右腕を押さえながら、大男から離れようとしていた。


「さやか!大丈夫か!!」


僕は叫ぶように聞いた。


「右腕いっちゃった……」


どうやら、さやかはバッドで殴られて、右腕が折れてしまったみたいだった。


「そっ、そんな……」


僕がショックを受けて動けなくなっていると、さやかが「隆弘!危ない!」と叫んだ。


しかし、時既に遅し。


僕はヤンキーBに捕まり、羽交い締めにされた。


「くそっ!!!」


僕はヤンキーCに腹を思いっきり殴られた。


「ぐぁ!!」


なんだよ。


結局やられているじゃないか……


僕は絶望感に包まれていった。


「隆弘を離せ!!」


さやかが超高速で僕らの方へ近づく。


「ぐぁ!!」


さやかの回し蹴りがヤンキーCに決まる。


吹き飛んだヤンキーCは意識を失ったのか、立ち上がれなくなっていた。


次にさやかは僕を拘束するヤンキーBに狙いを定めた。


「絶対、殺す!!」


殺意に満ちたさやかを見たヤンキーBは僕を離し、逃げようとした。


そして、ヤンキーBに攻撃を仕掛けようとした。


しかし、その時!


大男がさやかの右側から近寄り、思いっきりバッドで殴ろうとしたのだ。


さやかは右腕は先程の攻撃で折れているため、防ぐことは出来ない。


僕はそれを見て大男の方へ近づこうとした。


「くそ!間に合わない!」


さやかはバッドで強く頭を殴られた。


その瞬間、大量の血がさやかの頭から飛び散り、さやかは倒れ込んだ。


僕は慌てて、さやかの方へ駆け寄った。


なんなんだよ。この結末……


数メートルしか離れてないのに、もっと遠くにさやかが倒れているように感じた。


なんでさやかがこんな目に遭うんだよ……


僕のせいじゃないか。


僕のせいじゃないか。


僕がさやかに朝練を頼まなければ……


僕がもっと強くてさっさとヤンキー達を倒していたら……


もっと僕が早く動けて、さやかの近くまで行けていたら…


「うあああああああ!!」


僕は叫ぶように泣いた。

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