23‡

「未成年を一人にしろと?」


 男性Fの言葉に和也は軽く反発。だが「子供には聞かせたくない」とFは呆れる。それに「じゃあ、私が聞いてK《和也》にお伝えするのは可能ですか?」とBの提案に「良いだろう。お前は他の奴らよりは信用できる。判断力はな」とFは吐き捨てるように言うや裏へ。Bも裏に続くと「警察お兄さん、あのお兄さん……」と不満げな純夜の声に和也は「アイツは“F”。見た目は怖いが中身は良い奴。何かあったら頼ってくれ。俺よりはかなり得意だ」と純夜の背中を押す。

 店内を物色し「これ、全部サバイバルゲームで使うものなの?」と純夜が興味津々に物を手に取り、見入る姿に和也は「だから軽い。実際は相当な覚悟がないと“重い”」と意味深な事を言う。


「え?」


「気にするな、こっちの話だ」


 和也の手はさり気なくジャケットで隠れているショルダーホルスターに伸び、何か考え事か深刻な顔をしては「貴田……」と上司の名前を呟く。

 情緒不安定な気配に純夜は「あの……」と和也に声をかけると「お前、警察内部のデータにアクセスしたことあるか?」と突然ダークな話に言葉を詰まらせる。


「あ、えっと……その、ない、です。誰かがボクのことを邪魔して入れなかったから」


「それはだ。未熟なお前が痕跡の残しなり捕まらないように配慮した」


「え、お兄さんだったんですか!?」


「お陰でお前を追跡できてこのザマ。運がいいのか悪いのかはさておき……俺が一時的にシステムを無効化してやるから俺の上司の過去の記録のデータを盗んで欲しい。しっかり盗めたら好きなの買ってやる。しくったら首切。意味わかるよな?」


 和也の目は冷たく怒りがあり、表情は至って普通で物色しているただの人。だが、彼なりに許せない【部下の死】が原因だろうか。少しだけ空気がピリつく。


「あと、お兄さんは辞めてくれ。“和也”でいい。それと、部下の死に関して――あまり口に出したくないが他殺。表では医療ミスか、自殺かもしれないが……俺にはそうは思わなくてな」


「何があったの?」


「部下が何かを握っていたのか。別の理由か。俺が会いに行ったら


「え!?」


 展開の早い話に思わず純夜は声をあげると和也は純夜にコソッと言う。


「新人は配属されて間もない。というか、正直な話。新人が配属された後に俺が正式に配属された。それまでは研修というか仮でやらされてたからな。サイバー科で囮や侵入をやってたこともあって手伝いで呼ばれてた」


「あっそうだったんですね」


「あぁ、だから……俺から怪しいと感じるのは上司。俺が入ってから部下とは良く話し、本当は新人は俺の上司に当たるんだが……経験上は俺の方が上だからな。それもあってか“上司”扱いされてた。階級も関係してるんだろうが……」


 複雑な社会関係に純夜は難しそうな顔。和也は「上司の貴田がやったとして動機は? 俺と部下が仲良くしてるのが嫌だったか。そんな簡単な話じゃないと思うんだが……さては、まさかとは思うが――」と自己解決か納得したように言葉を述べては純夜を見る。


「え、あ……はい!!」


 和也の真剣な眼差しに手に持っていたトイガンを置き向き合うと「いやはや、お待たせしましたー」とBの声に和也がガン飛ばす。


「おっと……裏仕事のお話ですか。それは失礼」


 Bは両手を上げ、裏へ戻っていくが和也の「おい、追加で金払うから面貸せ」の言葉にBは嫌な顔。


「えっあの……嫌ですよ。ただでさえ社畜で休み少ないのに深夜帯にアナタのために働くなど嬉しくも――」


「ピッキングと解錠がクソ上手いの誰だ」


「私ですけどナニか?」


 投げやりに吐き出された言葉と切り出された内容にBは察したのだろう。


「あぁ……そういうことですか。家に入って情報盗めと? 最低ですね。でも、です。秘密奪うの好きなので。勿論、アナタが防犯システムをシャットダウンしてくれるんですよね?」


 ニカッとBの笑みに和也はスマホを握っていた手を軽く上げ、「待ってください。じゃあ、ボクは……」と不満な顔をする純夜に和也は大きな手を彼の頭の上に置く。


「お前はただ俺の指示に従ってればいい。ノーとは言わずに」

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