22

「あら、この子に話してないんですか? “クズ”をかき集めてる理由」


 広場から離れようとスクランブル交差点に踏み込むやBは何かを純夜に伝えたいのか、和也の厳しい視線を受けながらも口を開く。それを「おい」と和也が止めるも気にせず「子供まで利用するとは最低な人だ」とケラケラ笑った。

 和也がBに詰め寄り、純夜に『近づくな』と言いたげに強く腕を引く。それに「なんですか。どうせ彼も私も【】される身なんですから話したっていいでしょ?」とわざとらしい笑顔に「キモいんだよ」と和也はBの足を蹴る。


「あぁ、なんて傲慢な。けしからん、もっとやれ」


「やんねーよ、クズ、バカ、変態!!」


 言葉の暴力に「あぁ~いい言葉ですね」とBはうっとりするや純夜の「警察のお兄さん、【サクリファイス】って何?」と気になった言葉を口にするや静けさが襲う。


「知らなくていい」


 冷たい言葉に「そうですね。子供には難しい話ですから……理解した時点でゲームオーバーですから」とBはクスクス笑うや「ついさっき、室内サバゲーしてたときにグズを見つけまして……管理人さん困ってたので“いつか”助けたいんですよね。クズな私が言うのも変ですが」と相談事。


「SNS知ってるなら荒らしてやるが」


「うーん……でも、施設の評価下げたくないんですよねぇ。ほら、“N”の所なんで」


「はぁ!? あの人の店か……行きたくない」


 純夜を後にコソコソと会話を始める二人。盗み聞きしようと近づくと和也は腕を後に回し、手を握るふりして純夜を少し遠ざける。


「でも、報酬渡すんですよね? 久しぶりに顔を出してみればクズを一気に捕獲できるかと。あの方は元傭兵って話もありますから話は通りますよ、きっと」


 和也はムッとした表情で「純夜、今からお前にとって刺激的な場所に行く。少し我慢できるか」と立ち止まり、和也と純夜の目が合う。


「お兄さんが……行くならついてく」


「わかった。ついでにゴミ処理して次の企画の準備でも話すか。なんならNの所で配信したっていいんだが……こっちの身バレが嫌なんだよ」


「なら、今回はクズ回収でギャンブラーに任せてる遅くした二人を捕まえてもらって、彼らと混ぜてもいいのでは? あぁ、でも正義の味方のクズが足りませんね」


 純夜、和也、Bの順に話が進むと「いる。クズなら」と和也は険しい顔をしながら言う。


「誰ですか?」


 それには答えなかったが「俺の周りで人が死ぬのは周囲にクズがいるからだ。それを警告の意味で起こしてるクズがいる。誰とは言わんが……嫌な視線と気配はソイツが近くにいる。そういう意味なら――」と震え続けるスマホを取り出し、力強く握り締める。



 和也の邪悪な言葉にBが「やれやれ。アナタがこうなったらやるしかないですね。なんならアナタにメッセージ送りまくってる方も誘えば楽だろうに」と周囲を見渡す。


「マッド・サイエンティストか。アイツは来ない。ある条件を満たさない限り動きもしないからな」


 再び歩き出し、たどり着いたのは駅から数分のトイガンショップ。壁一面にはスナイパーライフル、アサルトライフル、ハンドガン、ミニガン、ショットガンとレプリカが飾られ、商品はガラスケースに丁寧に飾られている。その他にサバイバルゲーム用の服に道具と狭そうで品揃えがよく、入り口入って右手にカウンター。その奥に試し打ちや簡易的な室内フィールドがあるのか『お声掛けください』と貼り紙があった。


「いらっしゃいま……せ」


 裏から店員。いや、店長か四十後半そうだが若く見えるガタイのいい男性が出てきて三人を見て固まる。


「なんでオマエらなんだよ。帰れ」


 冷たくされ険悪な空気が漂うも「報酬を渡しに来た」と客がいないことから和也が堂々と目的を口に出す。

「そうかい。なら、とっとと置いて帰ってくれ。汚れ仕事は夜にやりたいんで」と男性は純夜を指差し手招き。


「行って来い。この人は怖そうで優しい」


 和也はトンッと純夜の背中を押す。純夜は小走りで男性の元へ行くと保冷バックから茶封筒を取り出す。「はい」と静かに渡すや中身を確認し「とうとう子供にも手を出したか……お前」と男性は溜息をつく。そして、間をおいては――「クズな大人二人裏に来い。少し話がしたい」と顎で裏を指した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る