21
『まだ、池袋です』
『まさかと思うがアイツラと出かけたんじゃないよな? たまに俺に領収書やら何やら押し付けたり、仕事の愚痴を他者に押し付けたりする。何か伝えてと言われているなら聞かん事もないが……どうだ?』
見抜かれているのか。
純夜の打つ手が止まる。
『何か言われたな。まぁいい……此方にて不幸があった。だから――』
メールは不自然に途切れ、ポンッと純夜の肩に大きな手。
「人が亡くなった。少し付き合ってくれ」
暗い顔をした和也に純夜はゴクリと唾を飲む。落ち込んでるように見え、ただならぬ殺気に小さく頷く。
「ギャンブラーから貰った金は場所を提供してくれた奴と銃を提供してくれた奴に半分ずつ手渡す。振込みは嫌いでな。手渡しで顔を確認した上で行う。悪いがついてきてくれ紹介してやる」
GPSで此処まで追い掛けてきたのか和也は缶コーヒー飲みながら静かに純夜に言い歩み出す。その背中は何処か寂しそうで静かな怒りを感じた。
*
ビルを出て駅に戻り丸の内線から【東京】駅へ。改札は出ず線を乗り換え山手線。しばらく乗り、ハチ公前広場に行くと「金」と和也に言われ、茶封筒を渡すと既に分けられており、中から更に茶封筒。さり気なく中を確認しては手に持ったまま“スーツ姿の営業マン”男性”とすれ違う。
「ご苦労」
「休みを邪魔するのはいい度胸ですね。コッチの身にもなってくださいよ」
と和也と痩せ型のヒョロヒョロな男性がすれ違い様に会話。それは、ほんの一瞬の出来事に純夜は目を見開く。街中で堂々と取引――テレビでコソコソやるイメージがあるがこれは意外だった。
「どうせ、ストレス発散のサバゲーだろ? 何人殺したんだ」
「えぇ? フフッ」
すれ違いを通り越して物足りなかったか。自然と立ち話。「アナタよりは下手です」と男性はニヘラと笑う。
「でも……ヘッドショットはアナタよりは上手いかもですね。実戦は役立ちませんが」
そう男は言うと和也に手話。右と左での人差し指と中指を伸びし、平行に右から左へ動かす。続けて、親指の指先を右胸に押し付けてから左胸に押し付ける。最後にハンドサインか指を二本立てる。
「あ?」
和也は不機嫌に返事しては眉間にシワを寄せ「それぐらい処理しろ」と視線を下に向けるや何かの気配に気付いたのか「金返せ」と和也は男性を睨む。
「OK。では、散歩でもどうですか?」
はい、と優しく男性は茶封筒を純夜に渡すと優しく頭を撫でる。
「本来はお前の仕事だろ」
「殺しは専門外です。誘拐も。しかし、ストーカー、追跡、殺害場所の提供等の【裏仕事】は表の仕事より大好きです」
「本当なら務所にブチ込みたいがウザい変態はこうはいないからな」
「えぇ、アナタのことストーカーしてましたしね」
「はぁ……早退届け出しといて子を迎えに行くついでだってのにお前な。本当――クソだな」
クソ――その言葉にBは頬を染め「あーっありがとうございます。あぁ、もう死にたい。アナタに罵倒されるなんて……なんて幸せな」と恋した乙女のような態度に和也は苦笑。純夜は彼の人脈の酷さを理解したのだろう。目を丸くし、グイグイとジャケットを引っ張る。
「お兄さん、あっ警察のお兄さんね。もしかして……お兄さんの知り合いって――」
【皆、犯罪者】――。
その言葉に和也は純夜に目を向けるも何も言わず。唯一切り出したのは「お前もだろ」。その一言だった。
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