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 周囲の視線が四人に集中。交換可能だと知れ渡ったのか、さり気なく歩きながらテーブルの端のコースターや交換可能な品を出しておくと餌を放ったかのように次々と声かけられる。

 Rは交換に夢中であまり食べず、圭祐と陽佑がメインで飲み食い。純夜も二人の負担にならないように少しずつ食べるや「そう言えば話変わるけどさ」と交換が一段落したのか甘そうなピンクのドリンクを飲みながらRが話を切り出す。


「自警団って言われるほど“それらしいこと”してる気はないんだけど。自警団狩りがあるらしくてさ。自警団気取りの正義感に満ち溢れたクズというか……多いんだよねぇ」


 カラカラとストローを回しながら氷の涼しげな音を奏でると続けて「キャラメイト出た時点で変な視線があってさ。ヘイトを消すために利用しちゃったけど、なにかそれに関して知ってたりする?」と周囲に目を向けながらRは言う。


「自警団自体がクズだろ」


 圭祐の言葉に「それは自覚済みだけど。なんか変なんだよね。脅迫のDMとか引用RTとかなんか嫌われることしたかな」とRは飲みながら言うや「お前、表と裏どっちの話してんだよ」の突っ込みに「どっちも」と平然と返す。


「顔が見えないからってぶっ叩いて良いとは思えないんだけど……なんか悪質なんだよなぁ。僕より」


「はぁ? お前も悪質だ」


「僕は優しい。誰かさんと違って社会的な死を与えないし、確かに精神を痛めつけるけど生きるすべは残してるよ。まぁ、タダ働きで動かされてるのは嫌だけどやらないと消される身だしね」


「じゃあ、文句言うな」


「手厳しい……ギャンブラーの二人だってアイツの


 Rと圭祐の言い合いに陽佑が「兄貴、そういう話は……」と止めに入る。察したのか純夜は「あの、皆さんの元々の繋がりは?」と話の話題を切り替えると「ダークウェブ」と三人は一斉に口を開く。追加するように圭祐と陽佑は「裏カジノ」と言い、Rは半笑いで「自警団してたら君の仮親に見つかってね」と【仮親】=【和也】のつもりか「あの人は実に賢いよ」とRはボソボソ言う。


「皆さん、もしかして……」


 純夜の言葉にRは何かを隠すように「あぁ、ごめんごめん。場にふさわしくないね。オタ活・推し活してるのに。辞め辞め、ちょっとグッズ買ってくるよ」と財布を手に席を立つ。


「ボク、何か言っちゃいけないこと……言っちゃったのかな」


 一人反省する純夜に圭祐は軽く足を蹴る。


「それは“クソサツ”に聞け。その方が早い。それに関係者は他にもごまんと居るからな。俺達経由で仲良くなれる奴らも少し居たりするだろうし、それが狙いなんだろ。クソサツ『爆発事件に巻き込まれて動けねえ』って言ってるし、そうなったら動くのは俺達。そろそろ動けと言われるし、早く仕事しねぇーと怒られるし。オマエも気をつけろよ」


 何か伝えようとしてくれてるのか、時よりジェスチャーや手話を絡ませてくるも純夜には読み取れず。「え、あの……」と口ずさむと『しー』と圭祐は唇に人差し指を当てた。


「今、兄貴がしたやつ“サツ”に見せな。多分、伝わると思う」


 暗号の次はジェスチャーに手話か、と見様見真似でやっていると「ハンドサイン混じってるから」と陽佑の声に頭がパニクる。


「えっ、えっ……あ、は、ハンドサイン?」


「サバゲーとかでよく兄貴が使うから覚えてさ。何かと役立つんだよな、これ」


 慣れた手付きでドンドン手を動かすため、コースターの写真を撮るふりして手の形や動きを撮影。コッソリ純夜は調べて見たが区切りが分からず断念。

 そのまま九十分カフェに滞在。支払いはR。交換がかなり出来たみたいで仲良くなった人とはSNSで繋がったのか知らぬ間に仲良くなっており「解散!!」と二次会でも行くのか、カフェ前で解散。


「兄貴、そろそろ行かねーと」


「マジか。悪い、一人で帰れるか?」


 公演時間が近くなったか圭祐と陽佑とも此処で別れ、先に行く二人の背を静かに見つめながら歩き出すと『家に帰ったか?』と和也からメールが来ていた。

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