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 圭祐の言葉に「お初だね、新高校生くん。いやーお初なのに苦しい場面をゴメンね。ジブンさ、このギャンブル二人が嫌いで弄りたくなっちゃうんだよ」とアハハハッと手を叩き笑うR。

 不気味な気配とミステリアスな雰囲気だが〔オタク〕が追加されるとよくわからない人。だが、純夜は少しだけRの態度が柔らかいと気づき「ボクのことは……」と恐る恐る聞くと「君はねぇ、学生のジブンに似てるから気にしない」とヘラッと笑う。


「あ、そうだ。君さ、対人ゲームの陣地奪い合うスマホゲーム知ってる?」


「あ、はい……少しやってます。民度が低いって有名ですよね……」


「そうそうそう!! マジでクソだよね。キャラ良いのにさ。ジブン、それにハマっててぇ。推しが欲しくてさ。カフェ予約してるからそこで開封の儀をして交換したいんだ。よろしく頼むよ」


 ――とRに連れられてきたのは近くにあるビルの中の五階のゲームカフェ。完全予約制でメニューは月ごと交換。さらに全メニューキャラモチーフという拘り。メニュー一つ頼めばコースターが一つ。カフェ内限定のグッズもあるらしく店につくと痛バッグやぬいぐるみを持った人々がチラホラ。

 そこに並ぶ険悪ムード漂い、見た目からしていかつい純夜達。とはいえ、ゲームが本当に好きな人達ばかりなのか服装がどうであれ何を言われることもなく店内へ。二十席ぐらいしかない小さな店内。店内左端の四人席に四人は腰掛け、注意事項やお持ち帰り可能の品物などのアナウンスに耳を傾ける。

 その間、Rはこっそりメニューを頼み【交流オーケー】という入り口で貰った紙を立て掛けては開封の儀。一人ベリベリと楽しそうに一つ一つのテーブルに出す。


「ねぇ、高校生くん。グッズを保護用の袋に入れてくれるかな。大きさに合わせて入れてね」


 と、Rに言われ純夜は渋々袋に一つずつ丁寧に詰めていると推しが出なかったのか「運がないな」と手提げのカバンから【お譲り】と書かれた箱を取り出しテーブルに並べ写真撮影。

 先程開封したものも一緒に撮影すると「此処の席どこ」と一人で小言を言いつつ「D-4」と陽佑が水を飲みながら答えるやニシシッとRは企みある顔をする。


「ごめん、高校生くん。僕と席交換してくれるかな」


 と、Rに言われ席を移動すると純夜はチラッとアールのスマホ画面を覗く。



 RR@交換垢

『現在、池袋店の□□□カフェのD-4にいます。

 店内交換希望。

 譲:下記の写真

 求:〇〇、〇〇、〇〇

 検索・FF外からのお声掛け大丈夫です』



 ガチ勢なのか、知らぬ間に交換をSNSで呼びかけていた。


「おまたせしましたー」


 次々とメニューが運ばれ、コースター集めのために純夜、圭祐、陽佑は一方的に食べさせられるもRは呑気にコースター八枚を手に取りニコニコ。推しじゃなかったのか「ないなー」と言いつつ袋に丁寧に詰めると「すみません」と女の子に声をかけられるR。


「SNSで拝見したのですが〇〇推しですよね?」


「あ、はい。お姉さんは何推しですか?」


 と、優しくやり取り。それを何のキャラをモチーフにしたのか分からないパフェを食べながら見ていると「他のお三方は……」の声に圭祐は「死神」。陽佑は「殺し屋」と二人も知っているのか即答。女性の視線は純夜に向けられ「えっと……世界線の」と答えると「あっ、待っててください!!」と交換会が始まった。


「まじかよ、死神貰った。コイツ、人気でグッズ見つからないんだよな」


「兄貴、良かったじゃん!!」


 圭祐はパスタ、陽佑はバーガーを食べながら交換したことを嬉しそうに話していると「失礼します」と店員が純夜の目の前に抹茶ラテがとコースターが置かれ、ヒラリと裏返すと――【女性に大人気のキャラ】。


「あ、それ……」


 Rはわざとキャラの名前を言わず、テーブルの端にソッと置くと「キャッ……えっ、あっ……」と推しなのか女の子が小さな黄色い悲鳴をあげ立ち止まる。


「え……あっ」


 迷い慌てふためく姿に「待ってるので何かあれば……」とRが声掛けるや席に戻り、女の子は手元にあるコースターを見せた。

「うーん」と推しがいないのか少し難しい顔をするRだがニコリと愛想よく笑っては「じゃあ、これで」と一枚引き抜く。


「あ、そのコースターにオマケでもう一つあげたいんだけど」


 箱を漁り取り出したのはコースターと同じ絵柄のキーホルダー。それを見た女の子は「え!! い、良いんですか……」と驚くも「2:1とか僕の中ではアリアリだから気にしないで。推してる人に渡した方がキャラも喜ぶし」とコースターの上にキーホルダーを乗せ差し出す。


「お兄さん、ありがとうございます!! 大切にします」


「いえいえ、此方こそありがとう。また、機会があったらよろしくね」


 と、手を振る。

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