18

 サンシ〇イン通りを背に突っ切るように真っすぐ進み、少し狭くて汚い路地。治安は悪くはないがゴミや吐瀉物が散らばった形跡がいくつがある。それを避けながら小さすぎず大きすぎない通りに出ると「有名なゲーム会社のCAカフェあんじゃん。兄貴、行きたい」と陽佑がいきなり指さし立ち止まる。


「アホ、行かんぞ」


「えぇ……今予約無しでフリーで入れんのに?」


 拗ねる陽佑の腕を引っ張りながら圭祐は歩き出すともう一本奥の通りへ。右に曲がり、しばらく歩くと『キャラメイト』と大きな建物。その前には広々とした公園ではないが場所があり、三人はキャラメイトに入ろうとする長い行列を立ち止まる見る。


「こ、此処にいるの? 自警団の人……」


 あまりの多さに苦笑いする純夜。続くように圭祐が如何にも嫌だ!! と言わんばかりの表情でグジグジと行列に聞こえないよう呟く。


「何かのコラボか、新規のグッズか知らんが……入りたくもない。痛バック、地雷メイクに服、推しのカラー身に纏ってるとなるとガチ恋か、オタクか。さては……夢女子、同担拒否もいるか? 同担歓迎さ? マジかよ……よく見ろ。さり気なく付近で交換禁止だがやってるやつもいるしよ」


 二人は〘オタク〙が嫌いなのか、後退る姿に純夜も真似するように後退る。青い袋を持った女性達が黄色い悲鳴をあげ、広場で開封しては推しだったのか、また黄色い悲鳴。煩さと場違いな環境に圭祐と陽佑に純夜は肩を組まれ「CAカフェ行こうぜ」と一斉に言われる。


「は、はい!! そ、そうしましょ」


 背を向け歩き出すや「あーもうサイッコウ!! 推しでなかったけど、これからゲームのカフェ行くし誰か交換してくれるかな」と若々しい男性の声。

 その声に「ヤベッ」と陽佑と圭祐が一斉に走り出し純夜を置き去りに――だが。


「はぁい、待ったー。四人で予約してるから行かないで。マジ、推しのメニューが今日まででさぁー。ほーんと逃げないで。逃げたらお前ら二人がベーコンレタスしてるってバラすぞ。おい」


 この言葉で圭祐と陽佑は青ざめた顔で振り向いては全力で駆け出し純夜の後ろ。二十代、いや……年下か。迷彩柄でうさ耳付いたフード、ロングパーカーを着た男性に飛び掛かった。


「あっ……ちょまっ!!」


 圭祐はを正面から押し倒すや胸ぐらを掴み、陽佑は「兄貴、それは駄目だって!!」と言いながらも男性が握っていたと思われる青い袋をアスファルトに落ちる寸前で掴む。


「テメェ、次言ったら殺すぞ。あくまで俺と陽佑はだ」


 ドスの利いた声で今にも怒鳴りそうな勢いだったがグッと堪えたのだろう。周囲のざわつきに圭祐はゆっくり手を離す。


なのに? 別にほら血が繋がってないなら大丈夫なんじゃな――」


 この言葉が引き金となり、圭祐の目元に影が掛かるや陽佑が「うわわっと兄貴!!」と圭祐の正面に割り込み唇を奪う。

 まさかの行動に周りは純夜は言葉を失い、思考停止。四人の周囲は静寂に包まれるも腐女子は「キャァァァッ――も、もしかして!! キスした子が今の彼氏で喧嘩売った子が元彼。えっこれ、最高じゃない!!」と一部で盛り上がり、黄色い悲鳴と冷たい視線、困惑の空気――といくつもが絡み合う。


「おい、陽佑……」


 唇が離れ、静かな圭祐の怒りの声。


「あ、兄貴ごめん……だって、なんか……」


 二人には事情があるのか静かに見つめ「アハハッごめんごめん。ちょっと弄りすぎたかな」と男性は嗤う。


「自警団、いつか晒して全国配信でズタズタにしてやるからな」


 圭祐は獣を狩るような鋭い目で男性を見ては大きく深呼吸。


「紹介が遅れた“男性”が自警団のクソ野郎“R《アール》”だ。本名言いたくないんだとさ。オタクのくせに……ったく。色んな意味でサイテイな奴だが仲良くしてくれ」

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