17

 十時頃。

 圭祐と陽佑に連れられ、大型ショッピングモールへ。都会ということもあり服一つでも高額で気になる店に入るも値段を見て固まる純夜に圭祐は「買ってやる」とブラックカードをちら見せ。


「え、でも……」


「今日は機嫌が良い。こういうときに俺らに甘えておかないと後々後悔するぞ」


 背中を押され、子供にしては高級なブランドの店に押し込まれては「これはどうだ?」と見た目はシンプルでどこでも売ってそうだが素材や生地、質感に拘っているのか万超えの価格に退く。


「た、高すぎる……普通の服がいいです」


「普通と言われてもな。此処はブランド系が揃う。探してやるが期待はできないぞ」と言われ、だだっ広い施設を歩き回って【GM】という見慣れた服を見つけ純夜は「此処」と指をさす。

 仕方ない、と不安そうな圭祐と陽佑の表情に苦笑いしつつ気になった服を試着。純夜がシンプルにTシャツとジーパンまたはVネックとカーゴパンツに上着と派手めじゃない服装が好きだと分かったのか「そういうの好きなんだな、キャラTシャツとか着てそうなイメージがあったがとさり気なく話しかけられる。


「親がテレビとかゲームとか見せてくれなかったからよく分からなくて……」


「あぁ、クズ親な。ゲームとかアニメを知らないとは……自警団が喜びそうだな。アイツ隠れオタクだから度々こっちに来るんだよ。ここ近辺にオタク向けの買い取りや中古店、キャラメイトがある。友達というか話し相手が欲しかったら聞いてみるのも悪くはないかもな。俺らは金しか頭にないから話はできんが」


 圭祐はスマホを弄りながら陽佑に服がいっぱい入ったカゴをバトンタッチすると仕事の電話なのか店を出ていく。


「なぁなぁ、オーバー系とかお前着ないの? ダボッとしたやつ」


「オーバー? なにそれ……」


「えっマジか……。お前、少し勉强した方がいいぜ。あれだ地雷系じゃねーけど男女兼用の服屋あるしそっちも見てみるか?」


「地雷系? 男女兼用?」


 聞き慣れない言葉に復唱。思わず首を傾げる。


「おいおい……それも分からねーのかよ。つか、お前さ。男の顔にしては幼くて可愛いからよ、女装とか向いてたりしてな。ハハッ」


 何か着させたいのか、させたいのか。陽佑はペラペラと口を開いては喋り出す。圭祐と違い、少し子供っぽく陽気。話についていきたいが純夜の知識不足もあるのかついていけない。


「よ、陽佑お兄さん……」


「んぁ?」


「ボク、最近の言葉よく分からないから……教えてほしい」


 勉強家な面が少し出たか純夜はジッと真剣な目で陽佑見るや「そういうの兄貴が得意なんだよな」と髪の毛をイジる。さては勉強嫌いか。少し冷たくされ、ショボンと肩を落とすも「なんなら大道芸でも見に来るか」と背後から圭祐が声かける。


「え? でも、勉強しないといけないし」


「少しぐらいサボっても良いだろ? 何事も経験、感化されて芽生えるものだ。お前は子供。少しは周りのガキみたいに楽しめ」


 うーん、と圭祐の言葉に迷った表情をする純夜。それを見てか圭祐は「自警団がキャラメイトでグッズの販売列で並んでるんだとさ。クソなサツには連絡しておいてやる。少し裏事情が絡むかもしれないが……会計したら会いに行ってみよう」と一旦買い物を済ませ、外に出るや昼近くの時間帯のせいか開店前よりも人通りが多く感じた。

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