†Ⅳ†

「お、俺!?」


 裏返る声に『はい』と目を三日月にして嗤うK。


『おや、怖いですか? あまりにも貴方が弱そうなので先行を譲ると申したんですよ。早いものがちですからねぇー。ヒキキッ』


 Kの言葉に引き金を引こうとするも引けない勝義に「ねぇ、って言葉知らないのかしら」と呆れる奈津子に『じゃあ、レディーファーストにしましょうかぁ』と手で【どうぞ】と指す。


「融通が利くの嬉しいわ。じゃあ、死になさい」


 躊躇なく引く素振りに『女の人、スゲェー度胸www』『男より女が強気ってヤバイ』とコメントが更に盛り上がる。

 だが、聞こえたのは発砲音ではなく――カチッ。


『ザンネーン。ハズレです。では、勝義さん』


 勝義は額に汗をかきながら震えた手でやっと引き金を引く。此方も空砲。


『ハーイ、此方もザンネン。はいはい、奈津子さーん、参りましょうか』


 二週目、三週目と順番が回るも聞こえるのはカチッカチッと引き金を引くことだけ。流石に『それ入ってんの?』とザワつくコメントに『残り三発。なんなら一緒に引いて見ましょうか』と少し二人に圧と恐怖心を植え付ける。


「これで何も入ってなかったら承知しないわよ!!」


 やる気満々の奈津子に対し、義勝は恐怖心から逃れたいのか顔が青ざめ、二歩程下がると「うわぁぁぁぁ」とパニックを起こしたのか自ら引き金を引く。四、五――と空砲で六発目は確実に入ってると確信したのか「は、ハハッ俺の勝ちだ!!」と奈津子を睨み、勝利の笑みを 浮かべ引き金を引くと発砲音よりも大きな音が響く。


 “弾が放たれ奈津子の頭を撃ち抜く”――。

 望んでた【フラグ】はそれだっだが待っていたのは――【暴発】。


 火薬の量を以上に多く改造していたのか、吹き飛んだのは勝義の腕と頭。千切れた腕がコンクリートにドンッと落ち、砕け散った破片と爆発の衝撃で上半身に破片が刺さり、一部頭部はザクロのようにグジュグジュとしており、周囲には肉片と血飛沫が広がった。



『うわっやべ!!』

 |

『救済処置の意味よwww』

 |

 ¥100000

『グーンロwwwスパコメするわ』

 |

 ¥200000

『はい、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』

 |

 ¥10000

『地獄行き、クズ男』

 |

『大草原不可避』

 |

『女の人勝ちってこと?』

 :

 :

 :



 突然の勝敗に盛り上がるコメントだがKは目を棒にして『やってくれましたネ。二人で仲良くに死ねば良かったのに――』と怒りマークを浮かびせながら言う。

 それとは違い突然の勝義の死に「えっ……」と状況が呑み込めない奈津子。返り血を浴び、力無く座り込む。


「わ、私……勝ったのよね? ねぇ!!」


 混乱しながらも静かに喜ぶ奈津子をよそに『チッ……クズ親がッ』とKの口調が荒くなる。


『ゴホンゴホンッすみません。念のため、弾がないことを確認するために続行してくれません? 片方にしか“弾”は詰めてないはずなので』


「あら、そうなの?」


「デスゲームですからどちらかが生きてないと面白くないですし」と、つまらない表情をするK。


「じゃあ、やるわ。何もなかったら全て消しなさいよ」


『ハイハイ、ワタクシは約束は守る人なので“ナニもなかったら”消してあげますよ』


 Kの言葉に奈津子は自身に銃口を突きつけ、恐れなく淡々と引く。四、五――バンッ。室内に響く乾いた音に『ザマァですね。簡単に返すはずないでしょう』とニヤリと目が嗤い、拍手。同時にコメントが今までにない以上盛り上がる。



『Kさん、頭良すぎ』

 |

『釣ってる時点でKさんの勝ちじゃんwww』

 |

『自殺だぁぁぁぁぁ!! Kさん、スゲェー』

 |

『調子乗る女も女だろwww』

 |

『動画録画したった。拡散してくるヽ(`▽´)/』

 :

 :

 :


 流れ止まらぬコメントに目を向けながらKは嬉しそうに言う。


『いやー素晴らしいクズらしいショーでした。ワタクシには物足りませんが……今日の所は良しとしましょう。視聴者ピースの皆さん、拡散しても構いませんが場所の特定をされないように。もし、特定をさせたければ――幽霊調査の配信してらっしゃる方をご招待して自殺現場として押し付けてください。分かりましたね。破ったら“しますので――。では、また次回お会いしましょう!!』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る