12
純夜はウェブアドレスを静かに見つめる。彼の目は微かに揺れ、和也が弱みを握っているのもあり“断ったら消される”とでも思っているのだろう。迷いを感じた。
「親を消したらお前を養子として引き取ってやる。だが、こっちも訳ありだ。それなりの行動をしてもらわないとな」
これは脅し。
いや、軽い脅迫か。
「お兄さんは僕をどうするつもりなの?」
弱さ感じる声に和也は「答えは出てるだろ」とチェスを指差す。
「分からないよ」
「分かる。離れてみてる奴見れば分かるんじゃないのか?」と恭一を和也は指差すと二つ折のメニュー表を見ながら恭一が言う。
「あ、そうそう。和也、殺しの案件あるんだけど受ける? まぁ、そっちのお子さんの親御さん優先でギャンブラー二人が追ってるから人手不足なんだけどね」とにっこり笑顔。
「親確保次第だな。後は予定変更前のターゲットともう少し人数ほしいな。またクズ見つけたら教える」
恭一の笑顔に和也は無表情で返すや「普通に晒すのはつまらない。クズ同士で殺し合いでもしたら本性丸出しで面白そうだ、なんて」と小言。
「それ、俺ら参加したら駄目なやつ?」
恭一は袖に隠していたナイフを取り出し手の甲と手のひらを使ってくるりと回す。
「一人紛れ込ませてもいいが程々にな」
「じゃあ、サバゲーの殲滅戦でもする?」
「いや、まずは高校生の親の本性を晒して、此方の評価を上げてからにしよう。その方が傍観者側も飽きない」
「了解。じゃあ、ちょっとギャンブラー二人に進行状態聞きてくるから二人で仲良く話すんだよ」
ヒラヒラと手を振りながら恭一は席を外すと室内が恐ろしく静かになる。和也は静かに純夜に顔を見けると先程の会話を聞きて和也の立場がわかったのか目を丸くしていた。
「お兄さんって“殺し屋”なの?」
その時に和也はYESともNOとも答えない。首も振りもしなかった。
「何が裏事情で連絡するときは、そのウェブアドレスから連絡してくれ。他にも違うアドレスあるんだが必要になったら教える。日常的なら普通で構わない」
話を逸らされ、さらに静寂に支配されると和也は震えるスマホを見ては舌打ち。画面を見ると数字暗号。またか、と小言。続けて少し早口で言う。
「ダークウェブで会わせたいヤツがいる。悪いが入力してくれ。“K‐Death”がオレだ。その他にここの奴らやさっき聞いたギャンブラーもいるが“マッド・サイエンティスト”って名乗ってるヤツがいる。いつも“名前非表示”で俺に意地悪してくるやつだ。一緒に入室するからソイツと話してみろ」
「えぇ!? い、今!?」
「ウェブアドレス入力と入室した痕跡は終わり次第俺が消す。安心しろ晒しはしない」
「え……じゃ、じゃあ……失礼します」
――ダークウェブ――
K‐Death
『よぉ、マッド・サイエンティスト。俺が相手しなくなったから寂しくなったのか? 何十件も数字送ってくるな。気が散る。用件あるなら普通に言え』
名前非表示
『7141234162079441。31723221434185』
K‐Death
『何が“待ちくたびれた。寂しかったよ”だ。散々送ってきてくるくせに』
JY@初見
『あ、あの……』
喧嘩腰なコメントにさり気なく割り込むと――驚いたのか『◇✕□◁♢✕◁○□◁△』と記号が沢山出た文。しかも、しばらく何も書かれない。
JY
『え、あ、ご、ごめんなさい……』
そう謝ると『(動画サイドのリンク)』が添付され『(๑•̀ㅂ•́)و✧』と顔文字。
K‐Death
『おい、学生だからって勧誘するな。気をつけろ、そいつ動画配信者だからな。俺とは違う部類の』
JY@初見
『え、配信者なんですか!?』
名前非公開
『(*'ω'*)ダヨー』
K‐Death
「てれ顔すんな!!」
名前非公開
『 』
K‐Death
『無視すんな!!』
――”K‐Deathさん強制退去”――
YJ@初見
『あ、あれ……Kさん?』
名前非公開
『あぁ、平気平気。いつもあの人後やってることやり返しただけだから。ボクは彼と話すのが嫌いでね。嫌いと言っても表の彼が嫌いなだけで裏の彼に関しては解体したいほど興味深い。
初めまして“自称マッド・サイエンティスト”で名乗ってる裏の業界では殺害方法とかの提案をしてる。ボクは顔を出さない主義だけど、いつか顔を合わせるの気が来るよ、きっと 』
YJ@初見
「えっ……いつか……」
名前非公開
『とりあえず動画のリンク先行ってみてね。変なのじゃないから大丈夫。僕が投稿してるヤツだよ。アバターで動かして科学や変な実験してるだけさ。低底だから観てほしい欲なだけだし。そろそろ切るよ。現実であの人グチグチ文句言ってるだろうから。またね、新人さん』
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