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 和也は恭一からメモ帳とペンを貰い、慣れた手付きで何かを書き始める。スマホを取りだし迷惑なメッセージが来てないかときより確認しては「今からお前に“これ”を覚えてもらう」とペンを置く。

 一つは縦と横に数字とその中に平仮名、英語、記号が可書かれたもの。二つ目はアルファベットのみ。



〔一つ目〕

  1234567890 

1 あいうえおABCDE

2 かきくけこ FGHIJ

3 さしすせそKLMNO

4 たちつてとPQRST

5 なにぬねのUVWXY

6 はひふへほ Z

7 まみむめも12345

8 や ゆ よ67890

9 らりるれろ/()@ .*

0 わ を ん゜゛


〔二つ目〕

abcdefghijklmnopqrstuvwxyz



 見慣れぬものに首を傾げ「なにこれ?」と純夜は紙を手に取ると和也は「これだ」とスマホの画面を見せる。



 ――2207810562074345 32511255211208――



 少し前に意地悪な奴から送られて来たメッセージ。練習にはいいだろうと軽い気持ち。だが、内容は意味が分かると良くはない。チェス用語が分かれば尚更。


「さっきデスク思いっきり叩いたのはこれを読んだからだ。お前には分からない単語があると思うが解いてみれば分かる。本来ならチェス盤の呼び方でやるつもりだったが知らないやつが多くてな。こっちに切り替えた」


 和也の話を聞きながら興味深そうにスマホの画面と紙を交互に見る純夜の姿に「分かるか?」と紙を取り上げデスクの上へ。

 しかし、小難しい顔にクスッと笑う。


「解読方法は単純。ただ小文字はないから、そこは考えないといけないが……今見せた番号の奴は【数字暗号】それで解ける。それが解けたらもう一つの教えてやる。とりあえずやってみろ」


 純夜はスマホの数字を紙に移す。それから「うーん」と宿題を解くような頭を悩ませているがしばらくはティーを飲み様子を伺う。見た感じ努力しようとしている姿勢があることを認識すると「二桁ずつ」と助言。


【2207810562074345 32511255211208】


 続けて数字をペンで指さしながら言う。


「十の桁を縦の番号に一桁を横へ。そのまま重なり合う文字を探す」


    一の桁

     ↘

      1234567890 

    1 あいうえおABCDE

十の桁→2 かきくけこ FGHIJ

    3 さしすせそKLMNO

    4 たちつてとPQRST

    5 なにぬねのUVWXY

    6 はひふへほ Z

    7 まみむめも12345

    8 や ゆ よ67890

    9 らりるれろ/()@ *

    0 わ を ん゜゛!?.



「き?」


「そうだ。続けてやってみろ」


 純夜は慣れない手付きながらもコツコツ解いていく。


『き、゛、や、ん、ひ、゛、つ、と し、な、い、のか、い、?』

         ↓

「ギャンビットしないのかい?」


 解けたか言葉を超えに出して言うや和也を見る。


「これ、どういう意味なの?」


「チェス用語でポーンをわざと取らせる技だ」


「えっ……じゃあ、この人と数字暗号でお兄さんチェスやってるの?」の子供らしい発想と言葉に和也は作り笑顔で「」と嘘をつく。


「頭良いんだね、お兄さん」


「そうでもない。二つ目の暗号話してもいいか?」


 スマホを手に取り、今度は和也自ら問題を作る。タンタンタンッと画面をタップしながら純夜に見せたのは『ucjamc』の文字。それと紙に書かれた【abcdefghijklmnopqrstuvwxyz】をトントンと指で叩く。


「これはさっきより簡単だ。アルファベットが頭に叩き込んであるなら。俺が打ち込んだ英語を二つ前にズラせばいい。」


【abcdefghijklmnopqrstuvwxyz】を元に一つ一つ当てはめていく。『ucjamc』の『u』ならvが1つ目→【w】が二つ目。それを繰り返すと『welcome』。

 逆に相手に伝える場合は二つ前に英語をズラす。それが和也なりの決め事。


「あ、これなら簡単かも!!」


 あっさり解けたことに感動したのかニコニコ笑顔の純夜。だが、和也は真顔で「これぐらいできないと困る」とティーを飲み干しては無言で紙に“”を書く。


「それ、頭に叩き込め。口出すことも書き出すことも許さない。もしやったら……殺すからな」

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