第80話 ゲーミングPC


「そうだ、お前に頼みたいことがあったんだ」


 トラオはそんなことを言い出した。


「頼みたいこと……?」

「以前の案件が好評でな、かなり売り上げアップにつながったんだ。それで、うちの会社としては、また辻風に案件をお願いしたくて。受けてくれるか?」

「そりゃあまあ、いいけど」

「今度はうちのメイン商品、ゲーミングPCの宣伝だ……!」

「ゲーミングPC……」


 ってなことが、この前の飲み会であった。

 んで、日は変わって翌週。

 俺の家に、なにやらでかい段ボールが届いた。


「これか……、てか、デカいな……!? めっちゃ重いし……」


 ゲーミングPCっていうから、俺のイメージだとノートパソコンだったんだけど、そうか、そりゃそうだわな。本格的なのだと、デスクトップになるか。

 俺はふだんPCでゲームとかしないから、驚いた。


 とりあえず、部屋に運んでセッティングする。


「えーっと、なんのゲームやればいいんだろうか……」


 とりあえず、このPCを使ってゲーム配信をやってくれとのことだった。

 やるゲームは俺の好きにしていいらしい。

 とはいってもなぁ。

 俺最近のPCゲームとか知らないしなぁ……。

 そうだ、カレンに手伝ってもらおうか。


 俺はカレンに通話をもちかけた。


「なあ、カレン……かくかくしかじかなんだが……。なにかいいゲームはないか?」


 カレンはダンチューバーとしてのダンジョン配信意外にも、普段からゲーム配信なども幅広くやっている。

 それにもともとがゲーム好きなやつだしな。


「そうですねぇ、今熱いのは、オーバーウィッチっていうゲームですね」

「ほう? どんなゲームなんだ?」

「無料でできるFPSゲームなんですけど、仲間と協力していくのが楽しいんです。役割が決まっていて、タンク、アタッカー、ヒーラーにわかれてます。いろんなキャラがいて楽しいですよ!」

「そっか。それは面白そうだ。一緒にやってくれるか? いろいろ教えてくれ」

「も、もちろんです!」


 ということで、俺たちはオーバーウィッチをやることになった。

 30種類以上いる、キャラクターの中から、好きなキャラを選んで戦うそうだ。

 対人戦だから、きんちょうするなぁ……。

 こういうシューティングゲームは初めてなんだよな。

 オーバーウィッチというだけあって、キャラは全部魔法使いのようだ。


「よし、俺はこのキャラ使うぜ……!」


 俺が選んだのは、タンクキャラの一人だった。

 身体がごつくて強そうだ。

 魔法を使ってシールドを張って、仲間を守るキャラらしい。

 俺がそのキャラを選ぼうとすると、カレンがドスのきいた低い声で俺に注意した。


「あ、先輩。タンクは初心者ムリなんで、ヒーラーやってください」

「あ、そ、そうなんだ……なんか、ごめんね……」


 どうやらそういうセオリーなどがあるみたいだ。

 俺はしかたなく、ヒーラーの中からキャラを選ぶ。

 今度は見た目が可愛い女の子のキャラを選んだ。

 よし、これなら……!

 だが、カレンは、


「はぁ……先輩、そいつ産廃なんで、他のでいいですか……?」

「さ、産廃……?」


 ききなれない単語だ。


「つかえねえってことです。雑魚ですから、他ので。そうですねぇ、初心者なら、とりあえず、こいつ使っててください。オートエイムなんで」

「お、オートえいむ……? わ、わかった」


 なんだかわからないけど、とりあえず、カレンの選んだキャラを使うことになった。

 なんだこれ……。

 なんか、変な見た目のお爺さんキャラなんだけど、これ強いのか……?

 なんか、あまり使う気になれないけど……まあいいか。


 俺は配信が始まる告知を、Twitterに投稿する。


【今からカレンと一緒にオーバーウィッチをやります!】


 すると、一気にコメントがついた。


【おい、やめろ】


「え…………?」


【闇のゲームで草】


「や、闇のゲーム……?」


【あーあ、カレンネキにそのゲームやらせちゃだめだ……】


「ど、どういうこと……?」


 俺は、困惑するしかなかった。

 だが、配信が始まるとすぐに、視聴者の言っていた意味がわかることになる……。

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