第81話 闇のゲーム


 カレンとのコラボ配信が始まった。

 俺はパソコンの設定で、配信をオンにする。

 ゲームを起動し、いざ戦いの場へ……!


 俺とカレンでパーティを組んで、オンラインの世界に潜りこむ。

 オーバーウィッチは5対5で戦う、オンラインシューティングゲームだ。


 カレンはダメージキャラを選択。

 俺はヒーラーで後ろからサポートだ。

 試合が始まった。


「よし、頑張るぞ……!」


 俺はマウスを握りしめる。

 必死に後ろからついていって、カレンをヒールするのだが……。


「あ…………」


 カレンのキャラがやられてしまった。

 俺は残念だったな、と思うのだが、カレンは、


「っち…………」

「え…………?」


 い、今あの温厚なカレンが舌打ちしたような気がするんだが……?

 き、気のせいだよな……?


 それから、まだまだ試合は続く。

 試合はお互いに拠点を取り合うルールで、2ラウンド先取で勝ちだった。

 まず、俺たちのチームが1ラウンドとられてしまう。


「あーあ。残念だったな。まあ、次がんばろうぜ……!」


 まあ別に、ゲームだし負けたところでなにかあるわけでもない。

 それに俺は初心者だしな。

 そう思って、俺はそう言ったのだが……。


「先輩、ヒール足りないんですけど」

「あ、ああ……ごめん……」

「どうなってるんですか……? さっきのヒール間に合いましたよね」


 なんか、カレンさんガチでキレてるっぽい……?

 あ、これガチトーンだ……。


「や、……で、でも……ほら、俺初心者だしさぁ……多めに見てくれよ……」

「初心者だから、簡単なこのキャラ使わせてるんじゃないですか! このキャラもできなかったら、このゲームできませんよ! ほら、エイムもいらないんですから、ヒールポッド置くだけの簡単なお仕事ですよね!?」

「そ、そうだけど……咄嗟に出なくて……」

「さっき練習場で練習したじゃないですか……!」

「な、なにもそこまで怒らなくても……たかがゲームだし……」

「たかが……?」

「あ……ごめん……」


 なんか、これ地雷踏んだっぽいぞ……。

 FPSゲームで人格が豹変する人間がいるというのはきいてたけど、まさかカレンがそうだとは……。

 それにしても、俺はそんな悪いことしたのか……?

 いや、俺もがんばってるんだし、悪くないよな……?


 すると、味方からチャットが飛んできた。


【おいヒーラー、お前ヒールしろやゴミ】


「ええええ…………」


 めちゃくちゃ口悪いじゃん……。

 てか、やっぱり俺がダメなのか……?


 いや、まだあと1ラウンドあるんだ。

 弱いなりに、俺も頑張ろう……。


 そして、


「くそ……まけた……」


 みごとにぼろ負けしてしまった。

 すると今度は相手チームから全体チャットが入った。


【ヒーラーのやつよっわwwww】

【このゲーム向いてない。やめたら?ゴミ】


「ええええええ…………」


 いや、いくらなんでも煽りすぎだろ……。

 このゲームやってるやつ、みんな口悪いのか……?

 なんか、こんな暴言言われることなんか普段ないから、普通にショックだな……。


「カレン……なんか俺、もう折れそうだわ……」

「え……? いやいや、なに言ってるんですか。あんなの挨拶ですよ」

「えぇ…………!?」

「私のも別に怒ってるわけじゃないですからね。あんなの、普通ですよ。このゲーム」

「そ、そうなのか……?」


 なんだかついていけない……。

 まるで別の国にきたような気分だった。


 困惑し、落ち込んでいると、配信のコメント欄が加速していた。


【辻おじwwwwゲームだと雑魚ヒーラーで草】

【ほらなwやっぱこのゲームはこうなるwwww】

【これがオーバーウィッチが闇のゲームと言われるゆえんだぞ】

【カレンネキこれでも優しいからな。普段もっとキレてるから……】

【これはおじさんも悪いぞ】

【下手で草】


「えぇ……俺、そんなセンスないのか……」


 なんだかおじさんショック……。

 そのときだった。

 ひかるんが、俺たちにチャットで話しかけてきた。


【私もパーティ参加いいですか?】


 どうやら、ひかるんもこのゲームをやっているようだ。

 もちろん、とひかるんをパーティに加える。

 配信にも加わってもらい、通話を始める。


「てか、ひかるんもこのゲームやってたんだ」

「もちろんですよ! 配信者界隈では流行ってますからね! あ、でも私も初心者なので、まだまだへたくそですよ」

「そうなんだ……。でもよかったよ。さっきからカレンのあたりが強くてさ……ひかるんも初心者なら、安心だ」

「あはは……カレンさん、このゲームだとちょっと熱くなるところありますからね……」


 ということで、俺たちは三人でパーティを組んで、次なる戦いへ。

 だがまさか、この時の俺は知らなかった。

 ひかるんがあんなことになるなんて……。

 

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