第78話 変装


 やばい、このままじゃろくに外を出歩けないな。

 ということで、俺はなんとか対策をたてることにした。

 といっても、まずやることは、魔女への相談だ。

 俺は異世界に転移し、魔女の家にやってきた。


「亜人症の件では、世話になったな」

「いやいや、もとはといえば僕のせいでもあるからね……それで、今日はなんのようかな?」

「変身魔法とかってないかな。あったら、それを教えてほしいんだが」

「なるほどね、有名人も大変だね。まあ、だから僕はこんな辺鄙なところに隠れ住んでるんだけどね」


 俺が事情を話すと、魔女はすぐにわかってくれた。


「それで、教えてもらえるのか?」

「うん、すぐにとりかかろう。大丈夫、君ならセンスがいいから、すぐにできるようになる」


 俺は魔女の家で、そのまま丸一日修行した。

 日が暮れるころには、変身魔法はものになっていた。


 さすがにスライムなんかの人外に化けたりすることは難しい。

 それをするには、年単位の修行が必要になるそうだ。

 さすがにそこまではやってられない。

 まったくの別人に化けることも、週単位で修業が必要だそう。

 まあ、それはおいおいやっていくとしよう。


 とりあえずは、本人とバレない程度に雰囲気を変えられればオーケー。

 俺は髭を生やして、肌の色を黒くした。

 それから茶髪でオールバック。

 入れ墨なんかもいれて、まるでオラオラ系の人みたいになった。

 よし、これで万が一にも俺だとはバレないだろう。

 それに、この見た目は人を避けるのにもつかえる。

 まさかこんな見た目のやつをジロジロ見てきたりはしないだろうしな。


 俺は日本に戻ってきた。

 カレン以外にも、俺と会いたいというやつが何人かいた。

 メッセージが届いている。


【池袋で飲もうぜ】


 メッセージの主は、茶会茶トラオだった。

 以前、俺に案件動画を依頼してくれたかつての友人。

 プレデターウェアにつとめている、大学時代の旧友だ。


 ということで、俺は池袋でトラオと会うことになった。


 転移で池袋の路地裏へ。

 街を歩くと、人々が俺を避けているのがわかる。

 ジロジロみられるのも困るけど、これはこれであれだな……。


 待ち合わせの場所にいくと、トラオがスーツ姿で立っていた。


「よお、待たせたな」


 俺が声をかけると、トラオは目を丸くして驚いていた。


「なんだぁ……? 辻風か……? お前、雰囲気変わったなぁ……!? 一瞬怖い人に声かけられたのかと思ったゾ……?」

「いやぁ。変装だよ。普段は普通の恰好だ」

「そっかぁ。有名人も大変だなぁ」

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