二人は転生者
ココ「.................」
フレーズ「...........」
あの後、人目につかないところへ移動した私とフレーズの間には、微妙な空気が流れていた。
そりゃそうだ。
何せ、この世界............【ハニー・ハニー・ハニー】の主人公の中身が転生者だったんだから。
ココ「.................まさか、私と同じ転生者がいるとはね」
フレーズ「だよね!!だよね!!」
私に同意するかのように、コクコクと頷きながら言うフレーズ。
...........うん、可愛い。
ココ「ちなみに、前世は.......」
フレーズ「日本人でオタクだよん」
フレーズがそう言ったその瞬間、私とフレーズは手を固く、熱く握っていた。
ココ「仲間!!仲間がいた!!」
フレーズ「いや〜、同じ故郷の人に出会えるのはともかく、同じゲームを愛したオタクと会えるなんて.................嬉しいなぁ」
ココ「えぇ!!」
オタクにとって、同じ推しや推しジャンルを持つ人と出会えるのは、まさに奇跡に等しいこと。
だからなのか、私は心の底から嬉しかった。
だって..........【ハニー・ハニー・ハニー】を愛した人と出会えたのだから。
フレーズ「ところで、ココ様...........じゃなかった、ココちゃんの推しキャラは?」
ココ「フレーズ」
フレーズ「嘘ぉ!?」
私の言葉に対し、目をパチクリさせながら驚くフレーズ。
ま、自分が転生したキャラがもう一人の転生者の推しだもん、驚かないわけがないよね。
ココ「でも、嬉しいって気持ちよりかは、ようやく本編が始まるのかって気持ちの方が強かったけどね」
フレーズ「分かる〜」
うんうんと頷きながら、そう言うフレーズ。
ココ「というか、今思ったんだけど...........私達、推しに転生したら確実に心臓発作で死んでたわ」
だってオタクだしね。
フレーズ「ハッ!!確かに!!」
ココ「その点では、転生させてくれた人に感謝だね」
フレーズ「だね」
私の言葉に思うところがあったのか、フレーズはフフッと笑った。
...........うん、可愛い(本日二度目)
フレーズ「ところで、ココちゃんはクリスと婚約してるの?」
クリス。
【ハニー・ハニー・ハニー】の攻略対象の一人で、本名はクリストファー・フィリップス・ヴァニラ。
ヴァニラ王国の王子で、元々はココの婚約者だったんだけど................エトワール学園に転校してきたフレーズに一目惚れしてしまい、ゲーム的にはそこからクリスルートに突入。
一方、それに激怒したココは嫌がらせをするものの、結局はそれがバレてしまい、ココは家族と共に追放されてしまったのだ。
だけど..............よくよく考えてみれば、自分の婚約者が見ず知らずの女と恋愛沙汰になったら、そりゃあ激怒してもおかしくはないしね。
ココ「婚約?いやいや、婚約者を放ったらかしにする男と婚約するわけないじゃん!!」
乙女ゲーならまだしも、現実世界でそんな男と付き合うのは嫌だわ〜。
フレーズ「ココちゃん..........よく言った!!他の女に熱を上げる男と婚約する必要なんてないもんね!!」
ココ「でしょ!!でしょ!!」
フレーズ「というかさ..........それを言ったら、他の攻略対象とのルート入りは」
ココ「あ、もちろん考えてないよ」
だって、あんな顔面国宝みたいなイケメン達に対して、私のオタク心が耐え切れるはずがないんだもん!!
これは仕方ないね、うん。
フレーズ「よかった〜。実は、私も今のところはどの攻略対象とも付き合わないって決めてるの!!」
ココ「え!?せっかく主人公に転生したんだから、逆ハーを作れるチャンスなのに.......」
フレーズ「ごめんね、ココちゃん。私はね.................ぶっちゃけ言えば、百合ルート派なんだよね」
フレーズはドヤ顔を見せながら、そう言うのだった。
.............やっぱ、フレーズは
ココ「なるほど、そっちかぁ〜」
フレーズ「そもそも、私が【ハニー・ハニー・ハニー】を買ったのだって、キャラデザを担当している人がよく百合のイラストを描いてる人だったし..........何より、香ばしい百合臭がしたから、つい.......」
ココ「あ〜、たまにいるよね。何かよく分からないけど香ばしいカップリングの雰囲気を醸し出しているキャラ」
フレーズ「なのに..........全然百合ルートが無かったもんだから、ショックでご飯が喉が通らなかったわ」
今のでハッキリと分かった。
フレーズは.........百合好きのオタクだ!!
そういえば、【ハニー・ハニー・ハニー】って元々は百合ゲーの予定だったって話を聞いたことがあるような..........?
ココ「ど、ドンマイ..........」
フレーズ「ありがとう、ココちゃん」
そう言った後、フレーズはニコリと笑い...........こう言った。
フレーズ「.......私ね、設定上は孤児院育ちの孤児でしょ?しかも最年長。だから....こういう話をする人が中々いなかったの」
私に向け、そう語るフレーズの顔は......どこか寂しげなだった。
ココ「フレーズ.......」
フレーズ「だからね!!同じ転生者として協力しない?」
ココ「協力?」
フレーズ「うん!!私はクリス達とのルート入りをしたくなくて、ココちゃんは破滅ルートに進みたくない..........これってさ、いわゆる利害の一致ってやつだよね?」
利害の一致..........ね。
フレーズ「や、やっぱり..........ダメ、かな?」
ココ「ううん、その逆」
フレーズ「え?」
ココ「私としても、仲間が欲しかったところだったから助かったわ」
フレーズ「じゃ、じゃあ!!」
フレーズの顔を見ながら、私はこう言った。
ココ「今日からよろしくね、フレーズ」
フレーズ「うん!!」
そんなわけで、私とフレーズは協力することになったのだった。
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