第44話 バーチャルお花見
「お集まりの皆様、年に一度の春の祭典『オハナミ』にお集まりくださいましてありがとうございます!」
3DCGで形作られた華やかなステージにはたくさんの人々が集まっていた。ここはお花見会場だ。
人間が肉の体を失ってもう何百年も経っている。
人間を人間たらしめるための美しい文化を復活させよう、そうして開催されたこの『オハナミ』だ。私もわくわくしながら日本文化のオハナミを楽しみにしていた。
なんでも春に咲くという桃色の花をみんなで眺めながらピクニックをするという。とても楽しそうだ。
お祭りと一体型になっていたという行事であり、今回の祭典につながった。
桜という花を私たちはデータでしかしらない。舞い散る桜ではなくたくさんの桜のデータをこの場に集め、みんなで楽しもうというものだった。
過去の画家が桜をモチーフに描いた絵も飾られている。
データは破損してしまい、もう残っていない。人間がデータに意識を移す段階で残っていた絵しか残っていないのだ。
そうして美しい桜の絵を見ながら、さらにAIにより過去の文献から予測された『オハナミ』が展示されている。
月にも桜があったらしい。
海にも桜が散る姿を見れたのか。
酒に酔った人々が桜の木をなぎ倒す事件もあったらしい。
さくらに関する童謡の情景をAIが描いていく。
桜が舞い散る頃、地球の地面は徐々になくなっていき全てが花びらに埋もれていく。
肉体があったころの人間は、さぞ過ごしづらかったろう。
冬には雪にうもれ、春には桜にうもれるのだ。
データに移行した人間が文化を取り戻したら、きっと世界はもっと良くなるだろう。
団子のデータもとても美味しい。
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