第38話 神さま、お願い!
私は桜が嫌いだ。
あの小さな桃色の花が咲いたせいで、この世界は終わってしまったのだから。
くしゅん。
小さくくしゃみをしたら、既にボロボロになっていた東京タワーがぽきりと折れてしまった。
体が大きくなって海から出ただけだ。自分が桜の花粉アレルギーだったなんて知るわけがない!
元々私はクジラという生き物だったらしいが、ある朝目が覚めると前よりも明瞭な思考と視界があり、体が巨大化していた。
陸に上がったところ、怪獣として自衛隊が登場するはめになったが、どうにか会話をすることができた。生来のんびりとした性格だったからか人間たちとは良好な関係を築けていた。
怪獣発電が世界を救う! なんて妙な研究もはじまったり、小さな子が私の背中にのって遊んでいるのもとても楽しかった。
あの日が来るまでは――。
桜が咲いたのだ。
それからくしゃみが止まらず、私の体もどんどんと巨大化していった。
くしゃみの風圧で家が壊れ、街が吹き飛ぶ。
怪獣災害と呼ばれ、色んな方法で私は退治されそうになった。痛いのは嫌だが、海にもどるために体を動かせばミシミシと地面が割れてしまう。
これが私の運命か、と諦めて大人しく人間たちに全てをゆだねることにした。
だが、爆弾もミサイルも、ナイフも毒でさえ私には効かなかった。
くしゃん。
くしゃみをするごとに地震が起きて、私の体が大きくなる。
毎日どうして陸に上がってしまったんだろう、と考える。どうして、体が変になってしまったんだろう、と考えるうちに見えない何者かがいるのではないかと思うようになった。
人間たちはこれを神と呼ぶのだろう。
くしゅん。くしゅん。
あと何回のくしゃみで、私は地球を破壊してしまうのだろう。くしゃみのせいで起きた災害によって、人間たちはもう祈るほかに手だてがないと言っていた。
私は何度も謝ったが、体を動かすたびに竜巻がおきて地響きがなる。
桜の花は綺麗だが、その花のせいで私は地球を壊してしまう!
大好きだけど大っ嫌いだ。
さて、私も静かに祈るとしよう。
どうかこれが夢でありますように、桜なんて存在しませんように。起きたら海で泳いでいる普通のクジラでありますように。
人間たちがあんなに祈っているのだから、私の大きな声も聞こえているんでしょう?
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