第15話 泣きぐるみ

 小さな頃、不思議な友達がいたことはあるだろうか。

 私の場合、少しだけ幼稚園くらいのころにそんな存在がいた。


 ある日ぬいぐるみから話し声が聞こえた。

 ふわふわのくまに耳を近づけると、


「この子、寂しいって泣いてる」


 私の言葉に周囲にいた友達が近づいてくる。


「ほんとー?」


 少しくたびれた白い熊のぬいぐるみ。

 みんなは半信半疑でぬいぐるみに耳を当てた。


「ほんとだー泣いてるー」


 それを聞いて近くにいた子は、また別の子にぬいぐるみをパスする。

 そして、みんながみんな「泣いてる」と口にした。


 少ししてぬいぐるみはなくなって、新しい熊のぬいぐるみがおもちゃ箱に入っていた。小さい頃のほんの少しの友達の話だ。

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