第7話

 俺が会社に到着したのは、昼休みに入ってからだった。


 玄関を通る時、四十代の紳士と鉢合わせになる。


「社長! お疲れさまです」


 俺は、パッと社長に道を空けてから深々と頭を下げた。


「ん? ああ! 矢納やな君か。こんな時間に出社かい?」

「は! 申し訳ありません」

「君は、啓央けいおう線で通っているのかね?」

「はい。左様でございます」

「それでは仕方ない。電車が止まったのは、君のせいではない」

「ご存じでしたか? 人身事故で、電車が止まっていた事を」

「もちろん知っているよ。済まなかったね」

「いえ、とんでもないです」


 ん? なんで社長が謝るのだ? 


「それでは、私は出かけるよ」

「は! お気をつけて」


 社長は、そのまま迎えの車に乗っていった。


 しかし、今からどこへ行くのだろう?


 その疑問は、事務所に入ってから判明する。


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