第5話
俺はスマホを操作して、ツイッターに書き込んだ。
『電車に轢かれたら死んじゃうだろ。どうやってここに書き込むんだよ?』
送信すると同時に俺は女に視線を戻した。
「なに?」
「今、その犠牲者とやらに、返事を返したところだ」
「ああそう」
女がスマホを操作しようとしたので、俺は女の腕を掴み俺の方にスマホを向けさせた。
「何するのよ?」
「おまえが返事を書き込まないか、確認させてもらう」
「はあ? まだ、あたしを疑っているの?」
「当たり前だ。このまま俺がおまえを見張っている。この後で何も書き込みがなければ、おまえが書き込んだ犯人だな」
「あのねえ……ん?」
女は怪訝な表情を浮かべた。
「あたしへの疑いなら、晴れたようよ」
「なに? どういうことだ?」
「次の返信、来てる」
「なに!?」
スマホに目をやると、確かに返信があった。
『私がどうやって書き込んだかは、どうでも良いことです。どうせ言ったところで、信じてはもらえないでしょう』
確かに書き込まれているな。
その間、この女がスマホを操作している様子はなかった。
では、この女ではないのか? 本当に幽霊が書き込んでいるのか?
いや、いや、いや! ありえんだろう!
ん? 書き込みに続きがあるな。
『そんな事より、私をボケ呼ばわりしたことを謝罪しなさい』
謝れだと? ふざけんな! 電車を止められて迷惑しているのはこっちだ!
と、俺が書き込むと……
『電車を止めてしまった事は、申し訳ないと思っていますのでその事は謝ります。ごめんなさい。さあ、私は謝りましたよ。あなたも私に謝罪しなさい』
『謝らなかったらどうする? 化けて出るとでもいうのか?』
いや待てよ。幽霊がツイッターに書き込んでいるという事態は『化けて出る』という現象には該当しないのか?
いやいや、騙されるな。こいつは幽霊なんかじゃない。ただの愉快犯だ。
『待てよ。あんたは自分が事故で死んだ死者だと言っているけどな、それを証明するものはあるのかよ?』
『私のアカウント名は本名ですし、プロフィール写真は撮ったばかりのものです』
『で?』
『現時点で、警察は私の身元を特定するにいたっておりません。つまり、現時点でその事を知っているのは本人しかいません。後でこの事件が報道されれば、私が本人だという証明になります』
本気で言っているのなら、おめでたい奴だ。マスコミが、すべての事故を報道するとでも思っているのか?
仮にこの事故が報道されても、マスコミは絶対に犠牲者の名前なんか出さないぞ。
そんなもの出したら、俺みたいな奴が遺族にガンガンクレームを送るからな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます