第4話

「おじさん。ちょっと起きてよ」


 ん?


 目を開くと、クレーマー女の顔が……


「な……なんだ!? 何か用か?」

「人の顔見て、そんなに驚かなくてもいいでしょ」

「ああ……俺、寝ていたのか。電車は動くようになったのか?」

「まだだけど……それより、おじさんさっき電車の先頭をスマホで撮っていたでしょ。あれ、ツイッターに上げたの?」


 女は自分のスマホを俺に見せた。


 そこにあったのは、確かに俺のツイッター。肉片が着いている連結器部分を拡大した写真が貼ってある。


「やったぞ。悪いか?」

「別に悪くはないけど、おじさんのツイッターに変な返信があるのだけど……」

「炎上しているのか?」


 俺のツイッターが炎上するなんていつものことだし、気にするほどのことではないのだが……


「炎上? いやクレームは着いているけど、炎上ってほどではないわよ」


 なんだ、燃料が足りなかったようだな。


「炎上はしていないけど、変な人が書き込みしているのよ」

「変な人?」

「なんか、書き込みの内容から見て、この事故の犠牲者らしき人なのだけど……」

「はあ? 犠牲者って?」

「犠牲者と言ったら犠牲者よ。さっき、この電車に轢かれた」

「いや、そいつは死んでいるだろ」

「そうよ。だから、変な書き込みって言っているんじゃないの」


 どういうことだ? 幽霊が、ツイッターをやっているとでも言うのか?


 いやいや、そんなバカなことあるか。


 とりあえず自分のスマホを開いた。


 ツイッターを開くと、さっき投稿した俺のツイッターに……

『ボケとは失礼な。私は自殺などしていません。踏切の途中で、車椅子が立ち往生してしまい、電車に轢かれたのです』という返信が書き込まれていた。


 プロフィール写真を見ると、白髪の婆さんが写っている。


 なんだ、これは?


 俺は女の方を向く。


「おまえが書いたのか?」

「違うわよ! だいたいこの写真、どう見てもお婆さんでしょ」

「いや、ネットに自分の顔晒す奴はいないだろう」

「あたしは晒しているわよ」

 

 そう言って女は俺にスマホを見せる。


 確かに晒しているな。しかし……


「かなり加工しているな」

「ほっといてよ! とにかく、あたしのアカウントはこれ。このお婆さんじゃないわよ」


 ははーん。こいつさては、複垢で俺をからかっているな。 


 それなら尻尾を掴んでやる。

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