93話 山城阿鳥、イフリートの事を知る

 岩崎たちの件がようやく落ち着いて、いつもの日常が戻ってきた。

 結局、魔王の存在は悪戯に世界をパニックにしかねないと秘密裏に処理された。


 古代魔石から出現した悪魔たちは、岩崎たちの信者によってもたらされた召喚術だったことがわかった。


 俺は警察やミリアのようにトップの立場じゃない。

 

 詳しいことは正直ノータッチだ。

 出来る人に任せたらいいし、それが信用している人たちならなおさらだ。


 吸収の魔法具は政府にこっそり返してもらった。

 国の一大事に貸してくれないのはケチだし、なんだったらまた何かあったら奪い取るつもりでいるが、盗られたことはバレたらしく、海外に輸送されるとのことだった。


 視聴者リスナーに能力を返して、ようやくまた耐性が戻ってきた。

 

 声真似スキルは残ったままで、色々とやれることはあるだろうが、最近はもっぱら、「もしあのアニメキャラがこんなことを言ったら」を録音して楽しんでいる。


 御崎に、何してるの? と完全にドン引きされたが、男の嗜みをわかってもらえないのは仕方がない。


 一番興奮したのは、やっぱりガンダムのキャラ――。


「ご主人ちゃま! それは違うのを植えていますよ!」

「あ、ごめんドラちゃん」


 そんな下らないことを考えていたら怒られてしまった。

 俺が忙しいとき、ずつとミニグルメダンジョンを支えてくれているのはドラちゃんだ。


 だからといってはあれだが、リカちゃん人形の最新版、四階建ての家をプレゼントした。


 屋上に小さな庭園を造ると張り切っていたが、割と普通にそういうのが好きらしい。


 目の前にデカい畑があるのにと思ったが、それは言わないで置いた。


 後、やっぱり大きく変わったのは――。


「グルゥ」

「キュウキュウ?」

「ぷいにゅっにゅっ」

「ガウガウ!」


 イフリートの存在だ。

 例の如く、ってわけじゃないが、数日したらイフリートは縮んでいた。

 今は俺の頭部ぐらいで、小さな炎を纏った小型の人型みたいな感じだ。

 といっても、背中はずっと燃えているが……。


『イフリートの名前決めた?』『グルゥ! かっこいい』『今まで可愛いメインだったから、かっこいい系もありかも』


 もちろん配信はしっかりと。


 能力ガチャで散財してしまったので、また1からやり直しだ。

 御崎に後で言ったらすげえ怖かった。まあでも当然か……。


「イフリート、ちょっと来てくれ」

「グルゥ」


 小さい人型の炎の悪魔、佐藤さん曰く、国家が揺らぐ。


 今は申請中で、後々また査定というか、色々とお達しが来るかもといっていた。


 あの魔王の攻撃を防ぐくらいだから、戦闘能力ってえげつないよなあ……。


 炎最強マン、いや、つよつよマン、うーん、これはダサすぎるか。


 といっても、イフリートは人間、みたいな感じがする。

 そのまんまってのもなんだかなあ。


「グルゥ」


 気にするな、と言っている感じがする。

 イフリートと意思疎通が取れている気がするのだ。ちなみにこれ全部、俺のなんとなく。


『見つめ合うなwww』『漢の友情を感じる』『炎最強マン』とかにしそう。


 流石俺の視聴者リスナー、好みをわかっている。


「ドラちゃんー、なんかいい案ないか?」

「ドララァ?」

「その返事はコンプライアンス的にまずいので気を付けてね」

「うーんそうでちゅね……」


 こんなに唸るドラちゃんを見るのは初めてだ。

 働き者だしいい子だよなあ。

 前に外で美味しものを食べさせようとしたんだが、ここが好きだと頑なに断られてしまった。

 ちなみにちょっと、いや結構悲しかった。


「ぐるぐるちゃんはどうでちゅか?」

「グルゥ」


 悪くはない、だがイフリートも、もう一声みたいな感じだ。


『ぐーるぐる』『ファイアマン!』『安直すぎるだろw』『ぐるぐる可愛いけどね』


 そのとき俺は、ハッとなる。


 グルゥ、グルゥ、ルゥ、ルー! カレーのルー!


「ルー! カレーのルー!」

「グルゥ!」

「おお! 気に入ってくれたか、ルゥ!」

「ルゥ!」


 でもなんか途中で嫌になったらしく、色々悩んだ結果、イフリートは『フレイム』になった。

 初のカッコイイ名前だと視聴者リスナーは騒いでいたが、それはそれでおもち達に少し悪いなあと思った。


 ただ、「フレイム」と呼んだ時、イフリートは嬉しいのか、「グルゥッ」と小さなッを付ける時が多い。


 これは、フレイムが嬉しい時に出る声だ。


 思ってたより、イフリートは、いやフレイムは可愛い。


「グルゥッ!」


 その時、ハッと気づく。

 ミニグルメダンジョンに時計はない。


 スマホを急いで確認すると、もうすぐ時間だ。


「ヤバイ、待ち合わせが!?」


『どうした』『お出かけですか? レレレレレ?』『急ぐアトリめずらしい』


「――良い報告が出来るように頑張るよ。それじゃあ、頑張って来る」


 そして俺は、心臓の高鳴りを抑えながら、配信を切った。

 


 ―――――――――――


 【 お礼とお知らせ 】


 新連載です、宜しくお願いします!


 異世界ハイファンタジー

【勇者に封印されていた魔族、復活したら魔王城が託児所になってました。魔法禁止の平和な世の中、最恐魔族はどう生きる?】

https://kakuyomu.jp/my/works/16817330658730890630


【怠惰な凌辱貴族に転生した俺、努力でシナリオをぶっ壊したら規格外の魔力で最凶になった】

 https://kakuyomu.jp/works/16817330658683197420


【退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話】

 https://kakuyomu.jp/works/16817330658801857199


  ルゥルゥ、カレーのルゥ!


 ちなみに今でもまだ、ルゥにするか悩んでいます。


 フレイムのほうが恰好いいのはわかるんですけどね……


「イフリートの名前が決定! かっこいい!」

「アトリ、どこへ行くの!?」

「この話の続きがまだまだ気になる」


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