91話 新しい能力――。

 都内某所の大型公園。

 敷地面積は驚きの5,700平方m。


 アスレチック施設や遊具が豊富で、普段は子供連れの家族で賑わっている。

 だが今は古の悪魔や岩崎一たちの噂が広がっている為、閑散としていた。


 そして俺たちは、公園の遊具に隠れている。


『動きはありませんね』

『了解、佐藤さんはそのまま待機で頼む。ミリア、変わった様子はないか?』


 恐竜の形をした遊具、その口の中に俺は身を潜めていた。佐藤さんは熊の遊具の中。


 ミリアは高い滑り台のてっぺんにいるが、下からだと確認できないほど高い。


『今の所ありません。セナ、そっちはどう?』

『以上なーし』

『住良木、ペンギンから見える景色も変わらないっす』

『入口側、私の所も気配はなし。御崎です』


 スマホ&ワイヤレスイヤホンを使用し、待ち伏せしている。


 もちろん俺たちだけじゃない。

 今この公園には、無数の探索者が隠れている。


『けど阿鳥、本当にここへ来るの?』

『ああ、未来予知かみのみぞしるの能力を持っている人が視聴者リスナーにいてな、まさかのインド人だったのには驚いたが、間違いなくここへ来るらしい』


 二日前、俺は視聴者に助けを求めた。

 同接数百万人以上の力を使って、岩崎あいつらの動きを補足する為だ。


 彼はC級だったが、数ヵ月に一回だけ未来を除くことができる。

 だが本来、それはランダムで、どうでもいい光景だったりもするらしい。


 しかしもう一人能力者、行動予測わたしはしっているという能力を持っていた人が力を合わせ、岩崎一の写真から指定が可能になった。


 そして夕日が落ちる時、あいつらは現れる。


『――阿鳥、魔力を感知したわ』

 

 その時、探知能力を持つ少女と共にしていた御崎から連絡が入る。

 

不可領域バリア展開、急げ!』


 俺は別の探索者に指示をした。公園がゆっくりと覆われると、魔力が漏れ出ないようにしてくれた。

 とある情報筋から、樽金は魔力感知の能力を得たらしい。それで古の悪魔を探し出しているのだろう。


 だがこれで俺たちの事はわからない。

 今頃あいつは、磁力を失ったコンパスのようにあたふたしているだろう。


『あーくん、来た』

 

 雨流の声と同時に鳥肌が立つ。

 あいつは俺の耐性を持っている。生半可な攻撃は逆効果だ。


 真弓の能力は大したことないが、それでも手練れではある。


 そして視界の先――岩崎たちを確認した。


「樽金、本当にここか?」

「なんすけどねえ……なんかわかんなくなっちって」

「あんたほんと使えないわね。せっかく岩崎様から能力をもらったのに」

「ああ? お前の前の能力のが使えなかっただろうが!」

「うるさいわね! 今ならあなたを殺すぐらいわけないのよ、口の利き方に気を付けなさい」

「んだとぉ!?」


 何もない公園、声がよく通る。前の能力……くそ、面倒だな。


『山城、タイミングは任せます』

『ああ』


 トップはミリアだが、俺は指揮を勝って出た。能力の事は俺が一番よくわかっているのもあるが、それ以上に責任感からだ。

 ……もう、どんな犠牲者も出さない。


「お前たち静かにしろ。後一匹だ。テイムが完了すれば、私は完全体になれる」

「へへへ、岩崎様、俺は東京の一部だけもらえれば満足っす」

「あんた、志ってものがないのね。せっかく世界を獲れるほどの力を得るのよ。もっと規模大きく言ったらどう?」

「んだとぉ!?」


 完全体……いや、関係ない。

 あいつらは今、完全に油断している。


『今だ――!』


 その瞬間、俺たちは駆けた。


 この未来は視えていた。

 俺の右目は今、『行動予測』が出来るのだ。


 だから、隙が出来ることも。


「おもち、炎のブレス!」

「ピイイイイイイイイイ」


 同時に隠れていたグミが水弾を出し惜しみなく放つ。


 氷魔法、斥力と引力の断裂魔法、佐藤さんの七色の武器の弓。


 もちろん吸収されることは承知の上だ。


 それでも――。


 真弓と樽金は怯えて頭を下げたが到底間に合わない。


「はっ、効かぬ!」


 全てを吸収した岩崎だったが、俺と住良木が辿り着く。


 そして俺は――新しい能力のうりょくを発動した。


 ◆


『雷魔法だ、当たりだな。金使ったかいがあったな』

『……ダメだ。次を頼む』

『……お前何がほしいんだ? もう5000万だぞ、狂ってるのか?』

『いいから、早くしろ』

『ったく……。チッ、なんで俺は他人に能力を与える能力なんだ。金はもらえるが、つまんねえスキルだぜ。――ほらよ、ああ、外れだなこれは』

『いや……当たりだ。――当たり過ぎてるくらいだ』

『はあ? お前、バカなのか? こんな下らない能力スキル何に使うんだよ』

『万引き』


 ◆


固有停止ユニークストップ


 俺は、以前真弓が私用した能力で全員の動きを止めた。

 これは、探索者が持っていたものだ。


「な、なんだこれは!? お前、能力がなかったはずだろ!?」

「あなたそれ……なんで……」


 樽金は頭を下げてビクビクしている。

 だが真弓は気付いたようだ。


 俺の胸にある『吸収の魔法具』を――。



『フォロワーのみんな、いや、能力を持っている人全員に頼みがある。一時的だが、俺に能力を預けてくれないか? もちろん、絶対に返す。どんな能力でもいい、全てをぶつけてあいつを倒したいんだ』



 俺は魔法具を奪う為に能力ガチャをした。

 探し出した相手は、裏社会で有名な奴だった。何でもよかった。

 通り抜けでも、テレポートでも、とにかく『吸収の魔法具』を奪う算段がつくようなものであれば。


 得た能力は『声真似』能力。


 音声認識を突破し、佐藤さんのコネを使い、とある官僚の電話をハッキングした。

 人間ってのは油断する生き物だ。スマホからかかってきた声が一緒なだけで、簡単に言う事を聞いてくれた。

 もちろん他にも色々と悪い事もしたが、全ては解決の為。


 それから俺はフォロワーと会って必要な能力を貰う予定だった。

 だが一人の能力者、本人から名前と生年月日、最後に了承を取れば一生に一度だけその人の元にテレポートが出来る能力のおかげで大勢の人と会う事が出来た。

 更にその途中、完全複製パーフェクトコピーという人と出会ってからは、なんとリモートで能力を吸収かりることができた。


 今俺の身体には、数百万人の能力が入っている。


 能力は不思議だ。赤ん坊が生まれてすぐ息を吸えるように、簡単に扱うことができる。


 だから俺も今、全てを完全使用可能だ。

 

 まあ、流石に多すぎて省くけどな。


「水蒸気どころじゃねえから、覚悟しな」


 俺は、全ての攻撃魔法、五百種類以上の属性魔法を岩崎に放った――。


 間違いなく、耐え切れないほどの力で。


 ―――――――――――


 【 お礼とお知らせ 】


 新連載です、宜しくお願いします!


 異世界ハイファンタジー

【勇者に封印されていた魔族、復活したら魔王城が託児所になってました。魔法禁止の平和な世の中、最恐魔族はどう生きる?】

https://kakuyomu.jp/my/works/16817330658730890630


【怠惰な凌辱貴族に転生した俺、努力でシナリオをぶっ壊したら規格外の魔力で最凶になった】

 https://kakuyomu.jp/works/16817330658683197420


【退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話】

 https://kakuyomu.jp/works/16817330658801857199


 新しい能力は声真似でした。けれどもそれは重要じゃない。

 全ては政府が管理していた吸収の魔法具を奪う為だった――。


「次回、どうなる!?」

「岩崎たちを倒せ!」

「この話の続きがまだまだ気になる」


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