75話 第一回、テイムモンスター魅力部門と戦闘部門開始。

  魅力部門は、その名の通り観客、審査員を魅了すればいいというシンプルなものだ。

 演舞、演技、演劇、声、水着、etc――とにかくうっとりさせればいいのである。


 最初に現れたのは、マッスルな男性だった。横で歩いてきたのは、これもまたマッスルなサイクロプス。

 二人で筋肉をムキッと見せつけながら、広背筋や上腕二頭筋を披露するその姿は、観客を喜ばせた。


『漢すぎるww』『ムキムキ強し』『筋肉は正義』


 だが続いて二人目、美人の水着お姉さんが、布面積が少ない恰好で来た瞬間、男たちが叫んだ。

 俺も叫ぼうとしたが、御崎が隣にいたので叫ばなかった。


『エロい優勝』『決まったな』『これにはおじさんもニッコリ』


 テイム魔物はウィンディーネというめずらしい人魚で、それもまた可愛く、とにかく男人気が凄まじかった。


 早くも優勝が決まったのか、と思った矢先、我らがヒーロー雨流とグミの出番が来たのである。


『続いて誰もが知ってる最強の妖精少女、S級探索者、雨流・セナ・メルエットと、水龍のグミです!』


 だが雨流はすぐに表れなかった。

 何か不手際だと思った瞬間、ステージの端から、大量の水が流れてくる。

 普通ならステージ上に滴り落ちるだろうが、ぷかぷかと空中に浮いているような感じだ。


『放水!?』『いや、セナちゃんが泳いできてるw』『すげえ、どうやって水を制御してるんだ』


 続いて雨流が水を滑るように泳いでくると、グミと一緒に挨拶をはじめた。

 可愛い水着姿で、観客、審査員も喜んでいる。


「皆さん、こんにちは! まずは私と、グミの水芸をお楽しみください!」

「がうがう、がーうがうがう!」


 雨流が泳ぐと、水が動いて、グミもそれについて行く。

 それから噴水のように水わき出たり、水の輪が出来てくぐったり、かなり練習したのだろう。

 だがグミにあそこまでの繊細な能力はなかったはず。おそらく、雨流が引力と斥力を使っているのだろう。


 魔法の使用は可能、とはいえ繊細な技術が必要なはずだ。

 さすが……S級ッ。


『もはやサーカス』『シルクドソレイユ』『中国4000年』


 最後は雨流とグミが水玉の中に入って空中浮遊、最後は二人でペコリと挨拶した。


「これはもう……優勝じゃないか?」

「凄いわね。いつのまに……あれ、でも次の人、あれ、剛士さんじゃない?」


 まさかのダークフォース、剛士さんだった。

 ミニゴーレムと一緒にぎこちなく歩いてくると、丁寧な挨拶をして、二人でロボットダンスを初めた。


 凄く地味だった。多分落ちた。


『優勝は、雨流・グミちゃんコンビです!』

 

 うわああああああと、会場が盛り上がる。

 満場一致、誰もが納得していた。

 流石S級、流石雨流、流石グミちゃんっ!


 優勝賞品のリアル魔物人形のチケットをもらって大喜びしている雨流を見ていると、俺も嬉しかった。

 最後のインタビューもあったが、俺とおもちは準備をしないといけなかったので、配信を御崎に任せて、その場を後にする。


 去り際、御崎と住良木が声をかけてくれた。


「頑張ってね! 全員ぶったおして!」

「師匠の活躍、楽しみにしてます!」


 自信はないが、二人の為にも情けない敗退だけは許されない。


「おもち、今日は特別ステージだ。手加減なし、フルでいくぞ」

「キュウ!」


 そして、メインステージといわんばかりに、ステージが広がると、闘技場のようなものが現れた。

 少年漫画で見たことがあるようなやつだ。かっちょいい。


 お姉さんは交代、サングラスのおじさんが現る。


 あれ、そのままでも良かったのに!?


『さあはじまりました! メインイベント、戦闘部門っ! 数々の予選を勝ち抜いた勇姿たち! 優勝するのは誰なのかあああああああああああああああああああああああ!?』



「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!」」」


 俺とおもちは、控室で待機していた。

 公平を期す為、ギリギリまで対戦相手はわからないらしく、それもまた緊張を誘う。


 試合はトーナメント形式で、テイムモンスターと従者が一緒に戦うタッグ戦だ。


 三回勝利すれば優勝、思わず右手に気合が入る。


 そして闘技場を囲むように能力者が数名現れると、特別な魔法障壁を張った。

 彼らは防御魔法に長けている探索協会の人たちだ。


 更に科学を組み合わせた体力ゲージ、というのが頭の上に表示されるらしい。

 ダメージは負わず、体力ゲージがゼロになると敗北だ。


 まさかにゲームだが、将来ダンジョンを想定した訓練で使われる最先端の技術らしく、その費用スポンサーを集める為にもこの大会を開催したらしい。


『富、名声、そして優勝賞品を手にするのは一体どのペアなのか!?』


 控室でソワソワしていると、大勢が集まってくる。

 その中に、当然見知った顔がいた。


「山城、いい勝負をしましょうね」

「頼むから手加減してくれよ」

「ふふふ、私は山城を侮っていません。全力でいきますよ」


 最初に声をかけてきたのは、ミリアだった。

 全力は全力で止めていただきたい。

 テイム魔物の姿がないと思ったが、よく見ると肩に乗っている。


 大きさはドラちゃんより少し大きい。人間の女性ような姿で、青っぽい、いや氷っぽい姿だ。


「ウィンター・ウィッチと言います。私の大事な相棒で、お友達よ。綺麗でしょ」

「ああ、驚いた……精霊みたいだな」

「元は精霊だって話だけど、どうなの?え? うんうん、そうそう。この前話したでしょ」


 ミリアは、ウィンター・ウィッチとヒソヒソと話している。


「喋れるのか?」

「人語ではないけれど、私にはわかるわ」

「そうなのか、なんて言ってるんだ?」

「熱いから離れたい、だって」


 その言葉を聞いて、おもちがショックを受けたようだった。

 炎と氷だもんな、仕方ないか……。でも、なんか可哀想だ。


「キュウ……」

「よしよし、元気出せよ」


 そして佐藤さんを見つけたので、よろしくと声をかけにいこうと思ったら、道を遮られた。

 顔面ピアスだらけの大型の男で、テイム魔物は狂暴そうな魔熊だ。


 なぜか俺を睨んでいる。


「おいてめえがアトリか?」

「……誰だ?」

「俺はお前をぶっころしにきた。こいつはベアくんだ。おもち共々八つ裂きにしてやんよ」

「……はっ、やれるもんならやってみな」

「クックック、覚えとけよ。俺様の名前は、六道だ」


 そう言いの残すと、六道は離れていく。

 変な奴に目を付けられてるな……。しかし強そうだ。


 きっとこの面子の中には、俺も知らない強者が隠れているのだろう。

 やはり油断はできない。


 そして佐藤さんに声をかける暇もなく、まさかの一回戦の呼び出しを受けた。


『山城阿鳥、そしてあの伝説の魔物、フェニックスおもちいいいいいいいいいいいいいいい!』


「いきなりかよ……。よし、おもち。――勝つぞ」

「キュウ!」


 闘技場に上がると、歓声があがって、身体が振動する。

 御崎も雨流もこんなプレッシャーの中で堂々としていたとは驚いた。


 すげえな……。


 ちなみに対戦相手は、公平を期す為にお互いギリギリまでわからないようになっている。


 さっきの六道ってやつでもいいけどなと思っていたら、ステージに足を踏み入れてきたのは、一番戦いたくない相手だった。


『続いて、S級探索者、誰もが知ってる探索協会の智謀、氷の魔女、雨流・ミリア・メルエット、そして女型のアイスヒューマン、ウィンター・ウィッチ!』


 まだ魔力を放ってないにもかかわらず、闘技場がひんやりとしていく。


 ミリアの表情は、さっきとは違う。

 明らかに、本気の目だ。


「山城、手加減はしません。探索協会の名を更に売るチャンスなので」

「望むところだ。俺もあんたとは、一度戦ってみたかったんだよ」

 

 これは本音だ。


 自分の力がどれだけ強くなったのか、そしてS級に敵うのか。

 俺は一人じゃない。おもちがいる。


「おもち、作戦Aだ」

「キュウ!」


 それに、遊んでいたわけじゃないからな。


『それではー! はじめえええええええええええええええええええ!』


 ―――――――――――


 【 お礼とお知らせ 】


 魅力部門は、雨流&グミのペアが見事に優勝しました!


 剛士さんは……頑張ったみたいですが、残念です。


 そしてついにメインステージ、戦闘部門!

 ミリア、佐藤さん、謎の男六道!?


 早速1回戦は、最強のS級!?


 果たしてどうなるのか(^^)/


「氷と炎、相性は良い!?」

「おもち、阿鳥、頑張れー!」

「この話の続きがまだまだ気になる」


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