71話 藤崎・キャロル・フランソワーズ

「でゅへへへ、どうですか似合ってますか」

「今日も可愛いよドラちゃん」


 ミニアロハシャツを着込んだドラちゃんが、今日・・も同じように照れながら言った。


 俺たちが南の島から戻って来て二週間が経った。

 コトマトを収穫したり温泉に入ったり、魔物家畜たちの世話をしたりと忙しい日々を過ごしている。

 変わった事と言えば、住良木の学校が始まって忙しくなったとか、御崎が俺に少し優しくなったことだろう。


 平穏な日々、ってのも悪くはない。


 だが今日は大きな変化があった。

 今朝、佐藤さんから一本の電話があったのだ。


 上位解析スキルを持っている人を海外から呼んでくれたらしく、古代魔石と俺の能力を調べてもらうことになっている。

 

 今でこそ多くの耐性を持っているが、ついにハッキリするのかもしれない。


 温泉にゆっくりと浸かった後、御崎やおもち達と一緒に探索協会へ向かった。


 ◇


「なんかここに来るのも久しぶりだな」

「私はしょっちゅう来てるけどね」


 都内のビル群の一角、立派な高層ビルの一つが、探索協会の本部だ。

 創立時は誰かの一軒家だったらしいが、ここまでになるとは誰も思わなかっただろう。


 御崎は相変わらずのタイトスカートぴっちりスーツむちむちぼんきゅっぼんぼんで、会社員が多く歩いている街にいるとキャリアウーマン感が凄い。


「今日も可愛いな、御崎」

「え? そ、そう? ……ありがと」


 男性の諸君、今日も可愛いなと思ったら、素直に言いましょう!


「キュウキュウ、キュウ!」

「あら、おもちゃんもありがと」


 さすがおもち、学習能力が早いぜ。



 受付を済ませて中に入ると、大きな部屋に通された。

 前に盗賊バンディード対策で話し合いをしていた円卓のテーブルだ。


 まだ佐藤さんたちの姿はなく、座って待っておこうと思ったら、雨流よりも小さい女の子がぽつんと座っていた。

 眼鏡をかけてパソコンをカチカチ、もの凄い速度でカチカチ、そう、カチカチ。

 髪は黒髪でツインテールだ。


 ゲームでもしているのかと思いひょいと覗いたら、よくわからない数式を打ち込んだりしていた。

 こういう遊びが流行ってるのかな? と思った瞬間、幼女らしかぬ物言いで声を上げた。


「新作のゲームかと思った? 山城阿鳥、彼女は一堂御崎ね。――そしてフェニックス、ファイアスライム、水龍ね」


 目を見開いて御崎と顔を見合わせる。こんなにも態度のデカい幼女は初めてだ。

 雨流は結構子供っぽいし、住良木は元気いっぱい少女という感じ。

 だがこの幼女は、さながら科学者のよう。


「お嬢ちゃん、大人と話す時はそんな言い方はダメだぞー?」

「あらそう、だったら私に尊敬語をつかってくれるかしら?」

「……はい?」


 その瞬間、扉が開く。現れたのはミリアと佐藤さんだった。

 お待たせしました、と言いながら、近づいてくる。


「ミリア、大丈夫だ――よ」

「初めまして、藤崎・キャロル・フランソワーズさん」

「こちらこそお目に書かれて光栄よ。氷の魔女、雨流・ミリア・メルエット」


 二人は丁寧な挨拶をしながら握手。

 だが身長差があるので、ミリアは思い切りしゃがみ込んでいる。


 俺と御崎が困惑している中、佐藤さんが静かに言う。


「説明が遅くなってすみません。こちらのお方は世界有数の頭脳をお持ちであらわれる、藤崎様でございます」

「え、いや、え、? え? この……幼女が?」

「誰が幼女よ、あなたより四周りは年上だと思うわ」

「四周り……?」


 どうあがいても足りない手で数えていたが、御崎がハッと声をあげる。


「もしかして……とあるダンジョンで若返った天才って……」

「そ、よろしくね。御年77歳の喜寿よ」

「え、ええええええええええええええ!?」


 ダンジョンは世界各地に存在している、が今だ謎に包まれている。

 だが俺はある程度わかっているつもりだった。

 若返るなんて……。


「あ、と、と、ええと、改めて宜しくお願いします。山城阿鳥です」

「はい、よろしく」


 小さな手、ぷちぷにの手、うーん、コスプレ感が凄い。


「あなたもよろしく」

「は、はい!」


 緊張しながらも手を差し伸べる御崎、うーんお母さんと子供。


「それと山城阿鳥、次幼女っていったら、ぶっ飛ばすので肝に銘じておいて」

「畏まりました」


 うーん、バイオレンス!

 なんで俺の前に現れるやつは、癖のあるやつばかりなんだ……。


「それじゃあ古代魔石の話は長くなるから、まずはあなたの解析から始めようか」


 しかし流石科学者? 話が早い。タイムイズマネーみたいな速度だ。

 どうやってわかるんだろうか。やっぱり、両手を掴んでステータスオープン、みたいな感じかな?


「それでは、こちらの車椅子に座って」

「え、佐藤さんこれなに?」

「山城阿鳥、これも付けて」

「あ、なにこの電気ショックみたいな頭の装置」

「それじゃあ解析室に運びましょうか、ルンビングラムを80グラム投与しといて」

「ちょっと、ちょっとおお!?」

「阿鳥、外で待ってるからね」


 車椅子で運ばれていく俺。

 御崎は、なぜか祈りのポーズをした。いや、よく見ると、おもちと田所、グミも南無、みたいなポーズをしている。


 てか、ルンビングラムってなに!? 80グラム!? 投与!? 多くない!?



 解析スキルって、大手術みたいなことなの!? ぱあっと光るとかじゃないの!?


 つづく。





 

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