52話 選ばれたのは、温泉と水着でした。

「エントリナンバーいちばああああああああああああん! 雨流・ミリア・メルレット! かの有名な雨流家の長女、探索協会でも屈指の頭脳派、凍てつく視線は見たもの全てを凍らせるぅ!」


 温泉の湯気から、ミリアが真っ白の水着で登場する。透明な白い肌と相まって、まるで雪女のような冷たさと美貌を思わせる

 動画的にはギリギリOK(多分)。

 両手の平から氷魔法を出現させながらのサービス、最高of最高。


『ミリア様あああああああ』『鼻血出てきました』『なにこの最高回』『未だかつてこんな最高の動画があっただろうか』


 あ、ちなみに配信を盛り上げる為、おもちゃのマイクを片手に俺がテンションマックスで叫んでいる。

 海パンも履いてます。


「こんにちは、動画に出るのは初めてですが、以後お見知りおきを」


 ペコリと頭を下げるミリア。豊満な胸がたぷっと揺れることで、視聴者の心はもちろん、アカウント凍結の確立も上昇させた。


『死んでもいいです』『意外にノリノリで好き』『怖いと思ってたけど違うんだ』『こんなの……好きになっちまうじゃねえか』


 怖いイメージが付いているので払拭したいと言っていたが、どうやら大成功。それにしてもサービスが良すぎる。


「続いて――! 我らがヒーロー、フェニックスおもちいいいいいい! 美しい羽毛、真っ赤な風貌は伊達じゃない、全てを燃やし尽くすことができるのは、うちの子だけだあ!」


 掛け声に合わせておもちが手を振り、羽根を振って登場。後、お尻もふりふり。

 裸だが、おもちは動画的に問題なし。


「キュウキュウ♪ キューウキュウ!」


 元モデルさんですか? というぐらい、軽快な足取り。何処で覚えて来たんだろうか。


『我らがおもちだああ』『可愛いモフモフ可愛いモフモフ』『肩にふわふわ乗ってるよー!』『体しまってんねー!』


 視聴者のコメントがボディビルのかけ声みたいになってきているが、気にしないでおこう。


「次は二人同時だあ! みんな大好き、雨流・セナ・メルレット! そして、ミサキいいいいい! S級の妖精は伊達じゃない、誰もこの子には勝てない! そして俺の大事な相方であり、信頼できる友人、怒らせると怖いが、その美貌とスタイルはモデル以上おおおおお」


 雨流はネイビー色のセパレートの水着、子供っぽさもありつつ、可愛らしい感じだ。

 対して御崎は、上下が黒のビキニスタイル。金色のチャックが胸に付いていて、それを下げるとどうなるのか……と思わせる一品。


「こんにちは、こんにちはー!」

「ふふん、ミリアさんには負けないわ!」


 雨流は相変わらず元気だ。しかし意外にも御崎がノリノリ。ミリアに対して少しライバル心を燃やしているらしい。どっちも素晴らしいと思うが、僅差でおもちの勝利。


『今日、天国だよ』『歴史を塗り替える動画』『久しぶりの動画がこれって、サービス良すぎねえか』『オラ、明日死んでもいい』


 最後はグミ、田所、ドラちゃん。三人ともいつのまにかドヤ顔を勉強してきたらしい。


 グミの背中に乗った田所とドラちゃんが、歌声に乗せて登場する。


「がうがう!」

「ぷいにゅ、ぷいにゅ♪ ぷいぷいにゅ♪」

「ドッララ、ドーララ♪ ドララ!」


 シンプルにかわいい。コメントも平和で癒される。

 あれ、ドラちゃんそれ権利関係大丈夫!? 僕怖いんだけど!?


『癒しもあるなんて』『最高だよアトリ、君は最高の仲間を手に入れた』『モフモフむにむにムチムチのトリプルコンボ』


 ここ数週間、ずっと大変だった。危険と隣り合わせで落ち着くこともできず、早く戦いを終わらせたいと思っていた。

 スローライフを楽しみにしている視聴者リスナーたちが飽きてしまって登録ブクマを解除してしまうのか不安だった


 だが皆待ってていてくれた。


 誰かと争うのはやはり好きじゃない。俺はやっぱり静かに、そして楽しく生きていたい。



 それから俺たちは温泉に浸かりながら、今まで話すことができなかった近況報告をした。

 ミリアと雨流が仲良しということもいい感じに広まったので、色んな意味で大成功となった。


 配信を終えると、コメント、スパチャが今までで一番になっていたことに気づく。

 みんな長い間待っていてくれたのだ。本当にありがとう。


「そういえば阿鳥、今後ここはどうするの?」


 御崎が訊ねてきたが、深く考えていなかった。初めは温泉1、2、3、ダア! とテンションが上がってしまったが、周りをよく見るとかなり殺風景だ。

 温泉も土くぼみの中に湧き出ているだけで、足元はごつごつしているし、舗装もされていないので、動くと土がまう。


 だったら――。


「ここは俺たちの憩いの場にしよう。昔から温泉がある生活も夢だったしな」


 そうだ、ここも同じように開拓していこう。

 温泉っぽさを出すならもっと設備が必要だ。大きな壺のようなものを置いてそこに入れるようにもしたいし、駆け湯や身体を洗う場所も欲しくなる。

 それにここなら、みんなで一緒に入れる。誰も寂しい思いはしない。


「キュウ?」

「おもち、温泉好きか?」

「キュウキュウ!」


 やっぱり俺とおもちは趣味が合う。当然、田所とグミも嬉しそうだった。


「私、温泉というものがあまり知らなかったのですが、とても良いものですね。芯からぽかぽかしていきます。それにおそらくですが、これは魔力回復と疲労回復効果があります。ほかにも何か感じますが、詳しくはわかりませんね」


 ミリアは色々と詳しい。彼女が言うならそうなのだろう。

 雨流は少しのぼせてしまったのか、温泉の外に出てグミに身体を冷やしてもらっていた。


「グミのお水、気持ちいい……」

「がうう!」


 ととのう雨流。うーん、おもちサウナも出来そうだな。

 将来は商売もできるかもしれない。


「これからもっと忙しくなりそうね。二層も出来たってことは、魔石も必要になるだろうし」

「そ、そうだよな……」


 御崎の言う通りだ。普通に考えれば今の二倍はいるのだろう。とはいえ、楽しい目標への努力は辛くない。

 それに盗賊バンディードを捕まえたことで、良いこともあった。


「言い忘れてたけど、山城、御崎さん、A級おめでとう」


 そう、俺たちは手柄を立てたことで昇格したのだ。

 S級たちは規格外だが、これは異例の速さらしい。


「ありがとな、ミリアが口添えしてくれたおかげだ」

「阿鳥はともかく、私はそんな大したことしていないんだけどね」


 御崎が申し訳なさそうに腕を伸ばすが、ミリアが首を横に振る。


「そんなことありません。これは正当な評価です。これからも一緒に頑張りましょう」

「頑張ろうね、あーくん! みーちゃん!」


 グミを抱き抱えた雨流が嬉しそうに言った。


 A級ダンジョンには、英雄さんからもらった魔法具が見つかったりもするらしい。

 だが、おもちに匹敵する強さを持つ魔物もいるだろう。不安はあるが……もっちゃんを探すことができるかもしれない。


 油断はせず、気合を引き締めるぞ!


「てか、俺ものぼせてきた……」


 外に出て地面に寝ころんだが、ぬかるみで背中にべちょっと土が付着する。


 とりあえず最初は、背もたれのある椅子を置くことにしよう。


 ―――――――――――

 

 【 お礼とお知らせ 】


 第二層が追加されて更に快適度が増していきました!

 自宅の建て替えも継続、だが魔石は更に必要に……。


 忙しくなる一方ですが、日々は楽しいみたいです(^^)/


「肩にちっちゃいモフモフのせてんのかーい」

「スパチャどこですか!?」

「この話の続きがまだまだ気になる」


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