51話 ミニグルメダンジョンに二層目が追加されました。
翌朝、おもち達を御崎に任せて俺はミニグルメダンジョンの様子を見に行くことにした。
ドラちゃんにも雨流家のご馳走をいっぱい持っていってあげたかったのだ。
佐藤さんに頼んで用意してもらったが、きっと喜ぶだろう。
「ぬお、すげえな……」
家にたどり着くと、既に一部が取り壊されていた。
幼い頃の思い出が消えてしまうのは悲しいが、新しい思い出が作られることにワクワクもしている。
なんせ追い炊きすらないのだ。雨流家のお風呂はみんなで入れてよかったなあ……。
『これもまた新天地への一歩』『おもちを拾ってからがなんだか懐かしく思える』『アトリ泣いてない?』
ちなみに後ろにはドローンカメラが追尾してくれている。
大和会社から試作品改ver2を頂いたのだ。カメラ標準装備で、なおかつネットも繋がってくれる優れもの。
もう壊さないでくださいと言われたのでもう壊せません。ごめんなさい。
久しぶりの配信ということもあって、みんな喜んでくれた。
待ってていてくれた人が多くて嬉しかったが、申し訳なくもあった。
『ミニグルメダンジョンワクワク!』『ようやくスローライフ本番!』『待ってたぜ、アトリィ!』
工事中とかかれた看板を乗り越えてダンジョンの入口に入ると、ピリリと魔力が肌に突き刺さった。
不審者が入らないように、ドラちゃんにバリア魔法をかけてもらっているのだ(ただし俺は例外)
チョコレートの甘い匂いが落ち着く。なんだか、凄く懐かしいような気がした。
中に入ると、早朝なのでミニウシ達はまだぐーぐーと眠っている。
ドラちゃんハウスをパカっとあけると、むにゃむにゃとベッドで横になっているドラちゃんがいた。
『かわよよ』『寝顔が天使すぎるだろ』『一緒に寝たいドラ』
「今起こすのは可哀そうだな……」
「むにゃむにゃあ……」
しかしこのままご飯を置いていくのも申し訳ない。
なので、御崎に連絡を入れて、俺も少しだけゆっくりすることにした。幸い、前に御崎たちが過ごしていたので毛布はある。
「おやすみ、ドラちゃん」
「ぴぴー……ウシさん、そこじゃないよお……」
『いきなりおやすみ配信w』『ちょっと休んでくれ』『この間に朝勉強でもするか』
ありがとうみんな、ほんと視聴者は優しいぜ。
◇
もぐもぐ、もぐもぐ、何者かが捕食している音が聞こえる。
俺、食べられてる?
『もぐっもぐ』『美味しそうな顔してるだろ。ウソみたいだろ。食べてるんだぜ』『いい食べっぷり』
「美味しい、美味しい、美味しい、美味しい、はううう」
「ん……」
「あ、ご主人ちゃま! おはありがとうございまちゅ!」
「ああドラちゃん、おはよう」
起きたら食べてくれとメモ書きしていたのだが、どうやら現在進行系のようだ。
基本的に魔力を摂取しているので、食べなくても平気らしいが、美味しい物は好きなのだという。
『精霊もご飯を食べるんだな』『そういえばチョコレート飲んでた』『体積考えると、どこに消えてるのか気になる』
「ドちゃん、工事の音とかうるさくないか?」
「はい! 問題ありまちぇん! 気を使って頂いてありがとうございまちゅ!」
「良かった。たまにこうやって見に来るよ。変わったことがあれば教えてもらえるかな?」
おにぎりをごっくんした後、ドラちゃんが指を差した。
「ありまちゅ!」
「そうそうそんな感じで、――え?」
ドラちゃんが指を差した方向に目を凝らすと、そこには謎の地下への階段があった。
――二層目、だと?
『な、なんだこれ!?』『まさかすぎる』『ちょっと怖いな、魔物がいる可能性は?』
『こんなことあるのか』『階段……』『アトリ、気を付けて』
「……いつからあったんだ」
「今朝でちゅ! おそらく、魔石が増えたことと、あたちの能力向上だと思いまちゅ!」
「もう行ってみたのか?」
「はい! 驚くとおもいまちゅよ!」
「驚く……?」
笑顔から察するに危険はないようだ。おそるおそる近づいていく。ドラちゃんは俺の肩にひょいと乗った。
地下への階段は、本当に出来たてほやほやという感じだった。土がまだ脆くてボロボロしている。
気のせいかもしれないが、奥から少し熱波を感じた。
「いけいけGOGOでちゅ!」
「お、おう」
ゆっくりと下っていく――驚きの光景が広がっていた。
同時に硫黄の匂いが鼻腔をくすぐる。
「これって、温泉か……?」
中心の大きなくぼみに、地下から吸い上げられたであろうお湯たまり。
『もくもくしてる!』『地下水脈? いや、でもダンジョンは別次元なのか』『不思議な空間だ』
試しに触ってみると、それはもうとてもとても適温だった。
「あったけえ……」
「どぼんでちゅ!」
「え!?」
俺の肩からドラちゃんが勢いよくダイブ。身長が低いのですぐに姿が見えなくなる。
『死んだ!?』『ど、どらちゃーん!?』『大丈夫かな? でも、笑顔だったが』
「ど、どらちゃん?」
「…………」
返事がない。――いや、まずいぞ!?
「ドラっだいじょう――」
「はいでちゅ!」
しかしぶくぶくと現れるドラちゃん。ゴ〇ラでこんなシーンがあった気がするが、心配させないでくれ……。
『良かったw』『びびらすんじゃないよお!』『元気そうで何より』
「気持ちいいでちゅよ~」
「……まじ?」
こうみえて、いやどう見えてかわからないが、俺は大の温泉好きだ。
マモワールドへも何度も行っているし、温泉旅館にもよく泊まっていた。
そんな俺の
「……ごくり」
いそいそとドローンから隠れて服を脱ぐと、足先からゆっくりと漬かる。
ほどよい熱が、俺の身体を温めていく。ちなみに急いでタオルを持ってきた。
さながら温泉ロケ風、俺が女子じゃないのが悔やまれる。
『アトリのサービスシーンw』『これは再生回数が増える!……のか?』『いい身体してやがるぜ』
一応ダンジョンで戦う為に鍛えているので腹筋は割れている。
ふふふ、どうだすごいだろう!
肩まですっぽりハマると、自然と頬が緩む。
「気持ちええ……」
心なしか魔力が漲ってくる。いや、徐々に回復しているのがわかった。
連戦の戦いで疲れていたのだが、芯から癒されていくようだ。
おそらくだがマモワールドの温泉のような効力があるのだろうか。
お湯の色は真っ白で、中に入ればモザイクの必要もない。
これはコンプライアンスもばっちり!
すっぽんぽんでも大丈夫だ! ええい、脱いでやれ!
『豪快にタオルをほおり投げるなw』『家だから許される技』『突然透明な色に変わってBANされる未来』
「最高だ……ドラちゃん」
「えへへ、でちゅでちゅ」
「でも何で温泉が湧いたんだろう。ダンジョンと関係ないような」
「わかりまちぇんが、ダンジョンってのは成長する生き物でもありまちゅ。もしかしたらこれから三層、四層と増えるかもしれまちぇん」
なるほど……。以前、御崎は美容ダンジョンがあったと言っていた。
グルメダンジョンもそうだが、もしかして人間の思考がダンジョンに反映されている?
もしくは成分か何かが付着することで……か?
そのとき、縁に置いていたスマホの電話が鳴る。
「はいはいもしもし」
『だれだれ』『配信中に電話に出るなw』『この自由さがいいんだよ』
「え、まじ? 見てたの?」
『見てた?』『相手はミサキちゃんかな?』『温泉に……ごくり』
「ズルっていわれても……。え、雨流が? え、ミリアも!? まじ!?」
『なになに』『相手の声が聞こえないからやきもきするw』『説明してくれええ』
「ああ、わかった。いやでも配信は――そうか、わかった。じゃあ……待ってる」
電話を切ると、ドローンに顔を向けた。
これは……今までで一番凄いことになるぞ。
『どうしたその顔』『じらしやがるぜ』『教えてけろー!』
「ええと、今から雨流姉妹、御崎やおもち達が来るみたいです。温泉配信をしようって」
『ま、まじ!?』『これは……神動画になるぞ! てめえら、覚悟しやがれ!』『盛 り 上 が っ て ま い り ま し た』
昨日一緒にお風呂に入ったが、まさか配信ですることになるとは……。
しかしそれよりも驚いたのは――
「でも流石に裸にはなれないので……全員、水着を用意してくるそうです」
盛り上がるだろう、と思っていたが視聴者の声がなかった。
もしかして壊れたか? 温泉の湯気……とか?
と、思っていた数秒後――。
『最高だあああああ』『会社休みます』『有給取りました』『バイト辞めます』『ええい、待ちきれんぞ!』
『おもちのもふもふ温泉配信なんて鼻血がでちまうよ! 田所も、グミも!? ああー! 最高ダア!』
一斉にコメントが騒ぎ出し、音声賑やかになる。
なるほど、みんなテンションあがりすぎていたのか。
これは後の話だが、この配信アーカイブの再生回数は歴代でもトップクラスとなり、ニュースサイトに掲載。
ポイッターではトレンド入りするのだった。
―――――――――――
【 お礼とお知らせ 】
なんとなんと! かわかりませんが、まさかの第二層は温泉でした(^^)/
そして次話は配信上のでの水着温泉会です!
ここからはスローライフが加速っ! コメディも多めかもしれません(^^)/
お楽しみに(^^)/
「全員の水着が見れる!?」
「温泉の効力が気になる」
「この話の続きがまだまだ気になる」
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