第4話 学園案内ツアー


「たっだいま〜!」



 陽気な声と共に、部屋のドアを開けて入る少女。

 長く綺麗な金髪をポニーテールに結った翡翠の瞳と細長く先端が尖った耳が特徴的な美少女。この国では希少種と呼ばれる人種〈シルフ〉族のフレデリカだ。

 天真爛漫、明朗快活な雰囲気や性格で、表裏のない明るいその雰囲気が、多くの生徒達からは好印象を受けている。

 


「全く、どこをほっつき歩いていたの?」



 対して、部屋の中にいた人物はどこか落ち着きを持った声色で、とても静かな印象を与えてくる。

 同じ学園の制服を身にまとっているが、その容姿もまた、フレデリカと同様に普通の人種とは違うものだった。

 水色の短髪と同じく水色の瞳。

 そして何よりそれよりも大きく目立つのは頭部に生えた大きな耳だ。

 三角の形にふさふさの絨毛が覆っている。

 そして腰には今もゆらゆらと揺れている細い尻尾。

 フレデリカの細長い尖った耳や、艶やかな金髪とは違う特徴を持つの人物は、冷静な面持ちでフレデリカに問いかけた。



「あはは〜、ごめんねー。ちょっと人助けというやつを……」


「はぁ……また人助けねぇ……。ねぇ、フレデリカ。別にあなたの行動を制限するつもりはないけど、ちょっと端的な行動が多いんじゃない?」


「えぇ〜? そうかなぁ〜?」



 フレデリカの間延びしたようね返事に、水色髪の少女の耳と尻尾が揺れ動く。

 その姿はそう……感情を露わにしている獣のような姿立だった。



「あなたも私も、アレクシア様の従者なんだから……!

 他の生徒の助けで行動を制限するわけにはいかないのよ?」


「わかってるってばぁ〜。もう、セルティは心配しすぎなんだよぉ!」


「本当にわかってるの?」



 セルティと呼ばれた少女。

 その姿もまた、この世界では希少種と呼ばれている種族。

 猫の様な耳と尻尾をもつ人種……亜人種と呼ばれるものであり、その中でも猫科動物の種族は一般的に【猫人族】ケットシーと呼ばれている種族だ。

 お互いが数の少ない亜人種である〈シルフ〉と〈ケットシー〉、その二人は、まさに対極の存在と言える。

 天真爛漫な太陽のようなシルフのフレデリカ、冷静沈着で月のようなケットシーのセルティ。

 お互いに無い物を持っている者同士であり、同じ主人を抱く剣巫の生徒だ。

 そんな二人の会話に割って入る自分が現れた。



「二人は本当に仲がいいよね。ちょっと羨ましいよ」


「別に、仲がいいっていうよりは……腐れ縁ってだけですよ」


「またまたセルティは照れちゃってぇ〜! 私はセルティとは親友だと思ってるよぉー!」


「ふふっ……だってさ、セルティ」


「っ……!」



 フレデリカの天然混じりの発言に、顔を赤く染めながらそっぽを向くセルティ。

 しかし、その尻尾はまたしてもゆらゆらと揺れている。

 口よりも体の一部の方が素直で良い反応をするのだろう。

 そんな二人を眺めながら、部屋の奥にあるソファーに座り、優雅にお茶を飲む女子生徒が一人。

 紫紺の瞳に、金髪の長い髪を後ろで束ねており中性的な顔立ちとスラっとした細身の美少女だ。



「もちろんっ! アレクシア様とも親友だよ!」


「ありがとう、フレデリカ。そうだね……僕の親友はフレデリカとセルティ、君たち二人だけだよ」



 アレクシアと呼ばれた少女。

 座っていた少女こそが、フレデリカとセルティの主人である。

 お茶を飲みながら、アレクシアはセルティに尋ねた。



「それでセルティ、例の調査の進捗は?」


「かの有名な“レイ・イシュタリス”についてですが、現在分かっていることは少ないですよ?

 2年前に帝国に姿を現し、帝国軍所属の剣巫となり、今年の〈星舞祭〉にエントリーした……というところまでです」


「そっか……でも、どうして帝国に行っちゃったんだろうね?」


「5年前の王国内で起こったクーデター……私たちもその渦中にいたわけですからね。

 彼女の行動と剣巫としての実力により、私たちは救われた……」


「でもさぁ〜、その人って本当に実在したのか怪しいって噂もあるよね?」


「そうね。突如として現れた新進気鋭の若き剣巫……グレイス学園長の懐刀であるとも言われていたわね。

 かつて、この世界を救った【聖女ルミナリス】の再来とまで言われた存在も、クーデターの終焉と共に姿を消した」



 5年前のクーデター。

 その原因となったのは、当時政権を握っていた国王と、その息子達である第一王子と第二王子の三竦みによる権力争うを発端としている。

 広大な領地を持つオルレアン王国。

 平野部と山間部が平均的に点在し、気象は穏やか、肥沃な大地が多く、人が住むには格好の土地を持っている。

 それ故に国は発展していき、アスラ大陸においては隣国である神聖ロマリア帝国と競い合うほどの大国へとなった。

 しかし、それ故に悪き事柄も多く存在し、わかりやすく言うと先代の国王がその一例となった。

 力を持っているが故に、国の事柄を好き勝手動かした挙句、民に対する政は稚拙……いや、悲惨と言ってもいいだろう。

 かけられた重税はあまりにも多く、それ故に国民は生きるのにも精力を使い果たし、国力が衰退していくのは時間の問題だった。

 更に追い討ちをかけたのは、その愚王の息子達。第一王子と第二王子の存在だった。

 愚王の血を正当に受け継いでいたが故、王子達も私利私欲にかられては、国の財政に強行に関わっていき、好き勝手に国の金銀財宝を使用して、贅沢三昧を行う日々。

 また、司法にも圧力をかけ、自分たちの都合のいい様に法律の改正を行うなど、悪逆非道の数々を行い続けた。

 そんな状況を打破するため、立ち上がったのが、クーデター後にその玉座に座ることになった第三王子……現オルレアン国王だ。

 そして、クーデター派の最大戦力として投入されたのが、オルレアン王国のみならず、アスラ大陸において最強と呼び声高い剣巫……学園の長たるグレイス・シャムロットだ。

 更にもう一人、その大陸最強の剣巫の懐刀として共に悪政を敷いていた王族達を討伐に尽力した若き剣巫……謎に包まれた黒髪の少女、レイ・イシュタリス。

 しかしその存在は、クーデター後には一切確認ができなかったそうだ。

 見た者はそもそも少なく、そのあまりの戦いっぷりに【聖女ルミナリス】の亡霊なのでは無いかと疑った者たちまでいた。

 そんな存在が、5年経った今になって隣国である神聖ロマリア帝国に現れた。

 それも【星舞祭】では敵対するチームの一員となって……。

 にわかには信じられない話であるが故に、ただの噂話だという人たちも大勢いるが、アレクシア本人はそれを認めようとはしなかった。



「いや、いるよ。レイ・イシュタリスは、確かに実在した人物だよ。

 それも、僕たちと同じ年頃の少女だった」


「確か、アレクシア様はそれ人に命を救われたんだよね?」


「うん……そう、僕は彼女に救われたんだ」



 過去を思い出す。

 アレクシアがまだ11歳の頃の話。

 王国に反旗を翻すと画策していた第三王子の動きに合わせて、身の安全のために王城から抜け出したアレクシア。

 しかし、それを黙って見逃す当時の王国軍ではなかった。人質の価値ありとして、アレクシアは幾度となく命を狙われた。

 故に何度も危機を察知して、王国各所に設けた隠れ家に移り住んでいたが、とうとう居場所がバレてしまい、その命が尽きようとしていた時、彼女は現れたのだ。



「レイ・イシュタリスは、僕にとっては恩人であり、目標であり、憧れなんだ。

 だから、できれば僕のそばに居て欲しいと思っていたんだけどね」


「ぶぅー。アレクシア様には私たちがいるじゃないですか〜!」


「フレデリカ、不貞腐れないの。でも、アレクシア様……仮にそのレイ・イシュタリスを我々の陣営に付けたとして、如何なさるおつもりですか?」



 問いかけるセルティに対して、アレクシアはお茶を一口啜ってから答えた。



「僕の予想だけど、この先10年以内には間違いなく5年前と同じことが起こると思う。

 現国王……兄上の政権も、先代の王たちと同じ道を歩もうとしているからね」



 現国王……元第三王子も、父や兄たちと同じ様に欲深い人物だ。

 元々表立って力に物を言わせるような性格では無いが、その裏では独自のルートで闇組織と通じているという話があり、何やら画策しているというのがもっぱらの噂だ。

 どこからか運び込まれた新造形の対外兵器を国内に取り入れたり、国の資金を軍事費に対して過剰にて捻出していたりと、何やら良くないことが起こりそうな予感がするのだ。



「僕はこの国が好きだ。今は亡き母上も、この国を愛していた……その愛しき母国を再び戦場にしないためにも、僕たちも動いていた方がいいからね」


「はい」 


「そうだよねぇ」


「二人とも、協力してくれるよね?」


「「無論です。私たちの忠誠はーーーーーー」」



 性格も雰囲気も全く違う二人なのだが、そんな二人が片膝を着き、胸に手を当て頭を下げる。

 この場での最大限の儀礼を持って、アレクシアの問いに答える。



「「アレクシア・フォン・オルレアン王女殿下の為にっーーーーー!!!」」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「くそっ……あの魔女め。最初から俺を編入させる気満々だったんじゃねぇか」



 ところ変わって学園内の学園長室前の廊下。

 学園長であるグレイスと話し終えたイスカと共に退出したエレインは二人揃って廊下を歩いていた。

 数分前、グレイスと話し合いで分かった事は、あまりにも衝撃的だった。




「お前の義姉は今、帝国にいると思われる。それも、“レイ・イシュタリス”という名を騙ってな」


「レイ・イシュタリス……だって?」



 その名の人物はもうこの世にはいない。

 5年前のクーデターが終幕となり、王国は新たな新国王を擁立し、新しい政権が動き出した。

 それ以降、彼女表舞台に立つ事はなく、元々戦時中という事もあり、彼女の姿を目撃したと言う者を多くはなかった事から、彼女の存在そのものが伝説と化したのだ。

 正体不明の謎の黒髪の剣巫。その身に宿した星霊の能力も知られていない。

 全てが謎に包まれていたのだから……。



「だが、なんでそれがセツナだと断定した? 確かにあいつは黒髪だが、黒髪の剣巫なんて探せばいくらでも……」


「あぁ、その通りだ。しかし、証拠があるからこそ断定したんだ」



 そう言って、グレイスが取り出したのは一つの水晶だった。

 球体上に加工してある手のひらに乗る程度の大きさの物だが、これはただの水晶ではなく、見たものを記録すると言う映像保存機能を持つ『記録宝珠』と呼ばれている物であり、【幻想界】アストラル・ラインに存在する特殊な鉱物だ。

 イスカの隣にいたエレインが、その記録宝珠に手をかざして自身のマナを注いでいく。

 すると水晶が光だし、やがて一つの映像を映し出した。



「っ……!」



 映し出された中には、一人の少女が出てきた。

 レイ・イシュタリスと同じ長い黒髪、東方のシン帝国と似た異国風の黒い装束に身を包み、白いミニスカートに黒のニーソックスにロングブーツという一見纏まりがないように見える服装だが、不思議と違和感のない見た目だ。

 そして、その顔には黒い仮面が付けられており、口元は見てとれるが、顔の上半分を覆っている為、正確な顔立ちはわからない。

 しかし、イスカにはどこか確信があった。

 水晶の中に写っている人物が、かつて自分と共に行動し、自称『姉』を公言して、片時も離れずに日々を過ごしていたハバキリ・セツナであると……。



「これは、どこの映像なんだ……?」


「王国と帝国の国境沿いで記録された物だ。帝国とは今のところ何も起こってはいないが、かつては領内侵犯で度々戦争をしていた隣国だからな……当然、帝国側の警戒は何重にも掛けている。

 その最中に撮られた物だろうな……当然、帝国側もこれを黙って見過ごす事はなかっただろうが、映像ではその数分後に何事もなかったように帝国領内へと入っている。

 あらかじめ何らかの交渉を行なっていたのか、あるいは協力者がいたのか、それは分からんがな」


「それで、レイ・イシュタリスの名を騙っているというのは?」


「さぁな。それは本人に直接聞いた方が早いだろう。しかし、レイ・イシュタリスという名前、正体、姿を見ているのは、5年前のクーデターに関わっていたごく一部の人間……つまり、ここにいる我々だけだ」


「っ……」


「当然、お前の義姉もだが」


「あぁ、そう言うことかよ……」



 レイ・イシュタリスの話で共通して出てくるのは、“長い黒髪の剣巫”という事のみ。

 しかし、その服装自体はあまり触れられていない。

 王国では珍しい東方の異国風の衣装を纏っていたという話はあまり出回ってはいないのだ。

 それを事細かに再現したかのように現れた帝国側のレイ・イシュタリス。

 それはつまり、本物のレイ・イシュタリスを見た事がある人物に縛られるわけだ。



「さて、詳しい話も終えたところで、対価の話に戻ろうか」


「っ……それなんだが、なぜ俺を編入させる? いくら【星舞祭】に出場する選手だからと言っても、別に学園生になる必要は……」


「【星舞祭】開催期間中、参加する選手は基本的に幻想界アストラル・ラインに長期で滞在する事になる。

 しかし、そこにとどまれるのは開催関係者である星霊教会の者たちと各国の出場選手、それを補佐する選手の関係者のみだ。

 向こうでは星霊達の方多いからな、異界の住人達の土地に見ず知らずの人間達がわんさか入ってきてみろ……それこそ星霊に攻撃される羽目になる」


「つまり、関係者じゃないとそもそも接触できない……」


「そう言う事だ。そして、もっと重要な理由としては……今のお前では奴には“絶対勝てない”という事が要因だな」


「っ……!」



 グレイスの視線に鋭さが増した。

 まるで蛇に睨まれた蛙のように、身が竦むのを感じた。



「直に見てハッキリした。今の腑抜けたお前では奴には勝てんだろうな……ましてや、使今のお前など、一般人と何ら変わらん」


「っ!? なんで知って……っ!?」


「甘く見られたものだな……私を誰だと思っている?」



 魔女の視線がまた鋭くなった。

 そう、イスカには元々星約し、その身に宿していた星霊がいた。

 幼い頃に星約の儀式を行い、その星霊と共に過ごし、戦ってきたのだ。

 しかし5年前に突然その力が使えなくなった……。

 理由はわからない……いや、正確には覚えていないのだ。

 何かがあった……と言うのはわかりきっている事だが、その“何か”がわからない。

 そして同時期に大切な家族であるセツナが行方不明になっている。

 彼女が消えた時期と星霊の力が使えなくなった時期が被っていた事が、セツナを探すきっかけにもなった。

 そして時折襲ってくる感覚がある……まるで体を縛り、拘束するかの様に闇色の鎖が、自分の体に巻き付いているような……奇妙な感覚だ。



「でも、イスカ君。きみ、星霊と契約してない?」


「え?」


「その右手の紋章……それって、星約の印じゃないの?」



 イスカもすっかり忘れていたようで、咄嗟に右手の甲へと視線を移す。

 そこに浮かび上がる白銀の紋章。

 それは先ほど〈星樹の森〉の中で、フレイアを助けるためにやむを得ず星約の儀式を行い、なんとか契約できた星霊の物だ。



「なんだ、剣巫としての力を失ったわけでは無いのか……。

 ならば好都合だな。これで否応なしに坊やをこの学園に編入できるという物だ」


「っ……でも良いのかよ? ここは女の園……女子校だろ?

 俺みたいな男が通えるところなのかよ?」


「問題ない。私の権力を持ってすれば造作もない事だ」


「そういうのを職権濫用って言うんだが……」


「そうとも言うな」


「そう言うことだけじゃない! ここにいるのは貴族の令嬢達なんだろ?

 悪いが、変な厄介ごとに巻き込まれるのはごめんだ!」


「それについては心配するな。先ほど生徒会長とも話していたが、ここは治外法権でな。

 大抵の問題は学園内で処理するし、外野からの圧力や介入は容易にはできない。

 お前がここにいたところで、王国の元老院のジジイ共も、国王ですら手が出せんからな」


「えぇ……マジで言ってるの?」


「残念ながら、マジね♪」



 横にいたエレインに確認してみたが、にこやかな笑顔で返されてしまった。

 どうやら、自分は抜け出せない沼の中に足を突っ込んでしまったらしい……。



「そんなことの心配よりも、自分の今後の事を心配したらどうだ?」


「ん? いや、ここでの生活も今後の事なんだけど……」


「今のお前はここにいる学園生にも苦戦を強いられる事になる。

 5年と言うブランクを早々に埋めろ。でなければ、星舞祭への出場はできず、探し人にすら辿り着けんのだからな」


「っ……」


「まずは、その契約した新しい星霊をコントロールできる様にしておけ。

 だが、時間はそうないぞ? なんせたったの2ヶ月しかないからな。

 本戦が始まる前に、学園の代表を選抜する試合もやる……そこで勝ち抜かなければならんのだからな」


「分かってるよ……。でも、今回の星舞祭のルールは5人一組のチーム戦だろ?

 俺以外のチームメンバーはいるのか?」


「それも自分で探せ。今のお前の実力に見合う奴が現れればいいがな?」


「くっ……!」



 最後まで皮肉を交えた嫌味ばかりを言い聞かされて、内心はかなりムカついていた。

 そんな事を思い出しながら、イスカは自身の纏っている制服に視線を移した。

 横にいるエレインたちと同じ、『狩衣』をアレンジしたかの様な独特の白い上着。

 女子生徒しかいないこの学園では、その制服にスカートを合わせた状態になるが、さすがに男でスカートを履くわけにはいかないため、同じ白色のズボンを履いている。

 憎たらしいことに、制服のサイズはイスカの体にピッタリと合っている。

 初めから編入する事がわかっていて、逃げられない状況に追い込んで……トドメと言わんばかり制服の採寸も完璧ときた。

 ここまで用意周到だと、むしろ恐怖すら感じる。



「にしても、まさかあんたがここで生徒会長をやっているとはな」


「ん? なにか問題がある?」



 イスカの隣で共に歩いているエレインに話しかける。

 彼女は相変わらず、こちらを興味津々と言った表情でこちらを見ており、今もニコニコと笑っている。



「いや、てっきり自分のところの家督を継いで、領主でもやってるのかと思ってたから」


「まぁね〜。いずれはそのつもりだけど、せっかくの学園生活を楽しみたいのよ……ここを卒業したら、こんな楽しい時間に浸っていられる事は無くなるだろうからね」


「…………」



 エレインの実家であるアーデルハイト家は、オルレアン王国の西方一体を丸々治めている大領主だ。

 それには一応理由があり、西には大国【神聖ロマリア帝国】の存在がある。

 かつて帝国と王国は敵対関係にあった。

 肥沃な土地が多かった王国の領土を狙って、国境となっている山脈を越えて、何度も侵攻を続けてきた。

 それを最初に迎え撃ち、王国の領土を守り抜いた王国内における最大の勢力を持つ領主……それがアーデルハイト家なのである。

 現当主はエレインの祖父に当たる方であり、もう老年であり、周囲の諸侯達からは『好々爺』と言われているが、その政治手腕は先代の国王ですら一目を置いていたほどであり、多くの剣巫を輩出してきたアーデルハイト家の中でも随一の当主として名を馳せているらしい。

 しかし、その後継者である彼の息子夫婦……つまり、エレインの父母は、5年前のクーデターの際に命を落としてしまったという。

 父親は優しくも優秀な人物で、母親も優秀な剣巫だったそうだ。

 5年前のクーデターには、エレイン本人も参加していた……古くから王国に仕えてきたアーデルハイト家の人間としては、腐敗した国政を正すのは貴族の義務であるという理由の元だった。

 エレインも当時12歳という幼さだったが、それでも戦場に立ち、剣巫としての力を振るった。

 イスカとエレインの出会いは、その頃からになる。



「その、お父さんとお母さんの事は……その……」


「あっ、ごめんね、気を遣わせちゃって……! でももう、5年前の事だもの。

 いつまでも泣いていたら、お父様とお母様に怒られてしまうわ。

 それに、学園を出て欲しいと言うのはお祖父様の願いでもあったからなのよ」


「そうか」


「まぁ、こうして学園に通っていたから、イスカ君にも再会できたわけだし♪ ふふっ♪」



 にこやかに微笑む彼女は、本当にもう5年前のことを克服したのだろう。

 かつてグレイスにも言われたが、絶望や逆境を乗り越えた瞬間に、人間は一皮も二皮も向けて、本当に成長すると言う。

 それが良い方なのか、悪い方なのかは定かではないらしいがな。



「あ、そういえば」


「ん?」


「さっきの学園長室でさぁ、私のこと“あんた”って呼んだでしょ?」


「え? あぁ、なんかまずかったか?」


「“あんた”じゃなくて、“エレイン”って呼んでって、5年前にも言ったでしょう!」


「そうだっけ?」


「えぇ〜! 私との約束を忘れちゃうなんて……! イスカ君ひどいっ! 薄情者っ! 変態魔人っ!」


「“変態魔人”は今関係ないだろっ?!」



 なぜここの生徒達は人を事あるごとに『変態魔人』と呼ぶのか……あぁ、ここ剣巫の育成機関だったわ。



「と・に・か・くっ! エレインって呼んでよっ! 次に“あんた”って呼んだら、怒るわよ?」


「っ……!」



 さっきまでの朗らかな雰囲気はどこへ行ったのか……。

 鋭い目つきでこちらを睨みつけるエレイン。

 ついでに右手にマナを収束させて、星霊魔術を発動しようとしている。



「わ、わかりました……エレインさん」


「“さん”もいらない! エ・レ・イ・ンッ!」


「はい、エレイン……」


「うっふふ♪ それで良し」



 また、にこやかに笑う。

 全く、どうして女の子というのは、呼び方にそう拘るのだろう?

 エレインの機嫌を損ねない様に取り繕いながら、二人はそのまま学園の廊下を歩いていく。

 途中で学園の教員達に会うと、驚きの表情をされるが、すぐに会釈をされる。

 おそらく男なのに学園の制服を着ているイスカに驚いた後、エレインに対して会釈をしているのだろう。



「学園の教員もエレインには信頼をおいてるんだな」


「あら? どうしてそう思うの?」


「さっきから会う人達は次々に挨拶してくるだろう? グレイスの婆さんと一緒にいた時には、周りにいた人達は頭を下げて項垂れるか、目を逸らしていたからさ」


「あぁ〜……学園長は特別でしょう。私はほら、一応王国の西方領地を治めている公爵家の令嬢だし。

 学園の教師の方々も、大半はここの学園を卒業した卒業生だから、王国内の貴族令嬢だからね……それなりの上下関係みたいなのがあるのよ」


「あぁ、なるほどね」


「イスカ君は、自分には縁遠い物って考えてるでしょう?」


「そりゃあな。俺は出生不明の平民だし、なんなら男で剣巫という訳のわからない存在だからな……」


「こら、そうやって自分を貶める物じゃないわよ?」


「いや、貶めてるわけじゃ……」


「そんな事してたら、いざ貴族のご令嬢が求婚にきた時、しっかりと対応できないわよ?」


「求婚っ?! んなわけ無いだろう。俺みたいな浮浪児を求める令嬢がどこにいるんだよ?」


「……もう、イスカ君の鈍感、朴念仁……」


「へ? なんか言った?」


「なんでもないわ……。それで、実際どうなの? 今後のメンバー集め、どうするか決めた?」


「そんな事言われてとなぁ……」



 メンバー集め……と言っても、正直【星舞祭】についてそんなに知っているわけじゃない。

 剣巫たちの目標であり、国の代表として戦い、勝利と共に富や名声を勝ち取り、国は〈六星王〉からの祝福を得られる。

 そして、その【星舞祭】に出られるのは20歳までの剣巫とされている。

 明確な理由はわからないが、【星舞祭】を楽しみにしている〈六星王〉達は、若く力強い剣巫達の勝負を求めている……らしい。

 故に、各国の代表選手は必然的に学園などに通う生徒や、同じ年の若者に限定されている。

 しかし、イスカはこれまで【星舞祭】を見たことがなかった。

 ただ単に興味がなかったと言うのもあるが、ああ言う衆人環視の中で戦うと言うことに違和感を感じていたから。

 どこか派手で、見せ物のような決闘が、イマイチ自分の中でしっくり来ていないのだ。



「そういえば、去年の【星舞祭】の種目はなんだったんだ?」


「2人一組のタッグ戦だったわね。そして、優勝したの帝国のチームだったわ」


「へぇ〜……ちなみにさ、王国の【星舞祭】での戦績ってどうなんだ?」


「最近は負け越しているわね……一番勝率が高いのは西の帝国で、その次に北の島国であるブリタニア王国かしら。

 その次にオルレアン王国が来るけど、最近はあまり良いところがないわね」


「エレインは出なかったのか? 去年の【星舞祭】」


「生徒会長になったばかりで、忙しくてね。今年は出る予定よ」


「そっか……」


「うん。だから、私とチームを組みましょう、イスカ君」


「え?」


「え?」



 あまりに自然な会話の流れだったので、思わず驚いてしまった。



「なによぉ〜! 私とはチーム組みたくないのぉ〜!?」


「いや、そう言うわけじゃなくて……! しかし、俺と組んで大丈夫なのか?

 エレインなら、他にも誘いを受けてるだろう?」


「まぁね。でも、どれも面白味なら欠けるというか何というか……」


「勝負事に面白味とかいるのか?」


「当たり前でしょ? ただ無難に勝ったところで面白くないもの。

 それに、この【星舞祭】は〈六星王〉に奉納するための祭なの……アッと驚く様な試合じゃないと、〈六星王〉は満足しないのよ」


「全く、星霊なのに人間の俗世に染まっているみたいだな」


「そうとも言えるわね♪」



 楽しく会話をしている最中、イスカはあるごとに気づいた。



「あ、そう言えば、俺どこで寝泊まりすれば良いんだ?」


「あぁ、それはねぇ……」



 先ほどとは打って変わって、言葉を濁して目線を外すエレイン。

 なんか、嫌な予感しかしない。



「イスカ君は特例での編入だから、正直部屋の空きが無くて……」


「まぁ、だろうとは思ったけど……雨風が凌げればそれで良いよ。

 ここ最近は野宿ばっかりだったから、屋根付きの部屋ならなんでもいい」


「相変わらずの野生児っぷりね。そう言ってくれるなら、このまま案内するわ」


「あぁ、頼むよ」



 エレインの案内の下、校舎を出て中庭へと出た二人。

 そこには美しい庭園が広がっており、ところどころにテラス席や遊歩道なんかもある。

 学校……教育機関にしてはあまりにも必要なさそうな空間だが、そこはお嬢様学校なので、気にしたら負けだろう。

 しかし、こんな綺麗な場所のどこに自分は寝泊まりしたらいいのだろうと思っていると、中庭をさらに抜け、学園の端の方へと歩いていく。

 そこにあったのは、立派な馬小屋だった。

 たしか、授業のカリキュラムの中にも乗馬が含まれていたのを思い出した。

 おそらくその授業で使う馬なのだろう。さらにそのすぐ隣には大きな建物があり、おそらくは学園の備品などを管理している倉庫や蔵か何かだろう。

 その蔵の前まで歩いていくと、エレインが足を止めて、イスカの方へと向き直る。



「えっとね、ここが、今日からイスカ君が暮らすお部屋になるんだけど……」


「…………」



 エレインのぎこちない笑顔で指さされた先にあったのは、小さな掘立て小屋だった。

 まるで余った木材などで急拵えで製作した様な……そう、子供の工作の様にも見える。



「うん……まぁね、急な編入だったから、こう言う事はあるよな……うん」


「ごめんねぇ……部屋の空きがどうしても無くて……」


「いや、いいよ。さっきも言ったけど、普段は野宿ばっかりだったから、こんな小屋でも、住めば都だろう」


「うーん、なんなら私の部屋で同居とかも考えたんだけど、すでに同居人もいるし、その子はちょっと男性が苦手でね……」


「だったら尚のことダメじゃん」


「今はちょっと任務で学園の外に行ってるから、その間だけでもって思って……」


「いや、それもダメだろ! エレインと同居は、流石に他の生徒の目もあるし、なんらかの問題が発生しても嫌だし」


「……ふーん。私と同居するのはそんなに嫌なんだ。ふーん」


「ええ? 怒ってるのか? いや、エレインだって嫌だろ、男と同居なんて」


「別にそんな事は…………ない、よ?」


「なんで言い淀んだんだよ?」


「べ、別にいいじゃないっ!」



 頬を赤らめて抗議してくるエレイン。

 全く、恥ずかしいならそもそもそんな提案を思いつかないでくれ。


 

「とりあえず、寝床はオッケー……あとは飯か……ここ、食堂とかはあるんだよな?」


「ええ、校舎一階のテラス席に。そこも案内するわ」



 またエレインの案内の下、校舎の方に戻る。

 寝床は確保できた……衣服も学園の制服と普段使いの安物の服が2、3着はある。あとは食事の問題だ。

 この学園は基本的に寮生活のため、食事などもちゃんと完備されているはずなので、それを利用すれば、問題なく学園生活を送れるというものだ。

 エレインの後を付いていくこと数十分。

 学生達が普段から使っている教室とは別の棟にある一階のテラス席。

 その中に食堂が入っていた。

 壁は全面ガラス張りであり、外から中の要するを見てみるが、なんというか、高級レストランばりの内装だと思った。

 もちろんイスカは入って食事をしたことなど無いが、かつてグレイスに連れられて、とあるレストランの中を拝見した事がある。

 その時のレストランも、王国では名のある高級料理店だった。

 ほんと、自分とは住んでいる世界が違うと感じた。

 さて、いざ入り口に入ろうとした時、その付近に立て看板があるのに気づく。

 近づいて見てみると、どうやら現在出している食堂のメニューの様だ。

 興味本位で見てしまったイスカは、その後すぐに目を逸らしたくなる現状を目の当たりにした。



「……………なんなんだよ、この学園は」


「オルレアン星霊学園よ?」


「そうじゃねぇよ……! なんだって学生なのにこんな高級食材のフルコース食べんだよっ!?

 しかも金額っ! 単品のスープ一杯で平民の一日の平均収入額っておかしくねっ?! 0の桁間違ってるだろっ?!」


「まぁ〜……そこは、お嬢様学校だし?」


「何でもかんでも貴族趣味すぎる……!」


「でも、安心して! ここの食堂がそうであって、このテラス席の方だと、余った食材で作ったスープと焼きたてのパンが食べ放題だから!」


「……じゃあ、とりあえず断食はしないで済むか……」


「そうね」



 多少は申し訳なさそうに話すエレイン。

 まぁ、彼女くらいの家柄ともなると、この程度の金額は余裕で出せるのだろうが、平民には無理だ、とても付いていけない。

 とりあえず、今後生活していく上での問題は解消された。

 あと問題なのは……。



「そういえば、俺はどこのクラスに編入になるんだ?

 普通に通うにしても、明らかに混乱するんじゃ」



 剣巫は選ばれた乙女しかなれない。

 自分がその常識を覆す存在である事は理解している。

 故に、このまま普通に教室に入って、クラスメイトに挨拶したところで、とんでもない反発・反響・拒絶が起こる可能性の方が高い。

 


「それは安心して。イスカ君にピッタリなクラスがあるから」


「……なんだろう、ものすごく不安しかないんだが……」


「大丈夫よ。みんな良い子だから」


「本当に?」


「ほんとほんと。ただ、ちょっと一癖あるメンバーが多くてね」


「それは大丈夫じゃないのでは?」



 何を持って大丈夫とするかは人それぞれだが……。

 とりあえず、挨拶には向かわないとな……。



「これから君が編入するのは〈スルーズ教室〉という場所。

 ここは元々の生徒数が少なくてね……中でも、とりわけ優秀な人材が集まっているの」


「優秀なのに、一癖があるのか……?」


「ええ、ここは剣巫を育成するところではあるけれど、同時にお嬢様学校。

 家同士の軋轢とか、牽制のし合いなんかはしょっちゅうあってね……。

 学園の中は一種の社交界みたいな状態になってるの。

 だから、学校内でもいろんな派閥争いがあって、学年別で数えたら、両手の指の数じゃ足りないわ」


「うわぁ……学生の頃からそんな世界に浸ってるのか?

 それがそのまま大人になると思うと、なんか……この国の悪しき風習を見ている様だよ」


「そんな風にならない様に、学園内には風紀を正し、秩序を維持するための学生騎士団がいるわ」


「もっと話が拗れそうだけだど……」



 その後もエレインから話を聞いていくと、ここの教室はそれぞれの派閥同士でクラス分けがされているらしい。 

 そして、イスカがこれから入るのは、そのどの派閥にも入らない……ある意味中立的な立ち位置にいる教室なのだそうだ。

 ほんと、何事も無ければそれでいい……平和に行こう。

 そうこうしている内に教室に到着。

 エレインによる学園内の案内ツアーはここで終点だ。



「ここがスルーズ教室よ。基本的に授業は全教室同じ内容を習うわ。

 あとは生徒達同士による自主学習があるけど、それぞれの力量で訓練量とかが変わるかしら。

 スルーズ教室は基本的には自由に行動してるから、校則に引っかからない程度なら、自由に行動が取れると思う」


「わかった。すまないな、こんな案内を生徒会長自らしてもらって」


「いいわよ。元々私が請け負った物だし、イスカ君のこれからの学園生活をしっかりと守るのも、今の私の責務なんだから……」


「色々と迷惑かけるかもしれないけど、よろしく頼むよ、エレイン」


「っ……ええっ、もちろん♪」



 今までで一番の笑顔をみせるエレインに、不覚にも少し驚いた。

 この大人じみた少女も、こんな表情をするんだと、改めて思った。



「じゃあ、後は頑張ってね♪」


「了解。今後ともよろしく」



 手を振って去っていくエレインを見送り、イスカはもう一度スルーズ教室の扉へと視線を向ける。



「はぁー……さて、鬼が出るか蛇が出るか……行くか……!」



 スルーズ教室の扉に手をかけ、その扉を開ける。

 中ではすでに授業中だったようで、静寂の中でいきなり扉が開いたので、教室の中にいた面々は一様にこちらへと視線を向けた。

 中は劇場型の造りになっており、階段状に長机と長椅子が配置されており、その椅子に座っている生徒が5、6名と、中央に教卓を挟んで黒板に文字を書いている教員が1人だった。

 驚いた様子でこちらを見てくる全員に対して、イスカと若干気まずい雰囲気になりつつも、教室の中に入った。



「えっとぉ……今日から編入した者なんですが……」


「あっ、あなたが、噂のっ!!」



 教員と思われる女性がこちらへとやってくる。

 緑色の髪を肩の高さで切りそろえたミディアムヘアと髪色と同じ瞳が特徴的な美女だ。

 教員の制服も生徒達同様に統一されており、どうやら制服の構造も同じようだ。

 ただ違うのは学生が白い制服なのに対して、教員は黒い制服ということ。

 一見すると同い年にも見えるくらいの童顔の教員。

 男であるイスカへと近づいてくるが、一定の距離を保つように途中で歩み寄るのを止めた。



「え、えええっと、よ、よよようこそ、スルーズ教室へっ!!!」


「あ、ど、どうも……」


「そ、その、皆さんにもご紹介しますのでっ、こここ、こちらへっ!」



 ものすごくテンパっている。

 え? 教員には話を通していたのではないのか?

 それとも、この教員がこんな性格なのだろうか?



「あ、まずは私ですよねっ?! わ、わたし、このスルーズ教室の担任をしていますっ、シーナ・ハミルトンと言いますっ!」


「よろしくお願いします、ハミルトン先生。

 タチバナ・イスカです。今日からお世話になります」


「よ、よろしくお願いします!!」



 どうやら、極度のあがり症なのかも知れないな。

 まぁ、いきなり男の剣巫だと言うのも驚きだと言うのに、いきなり自分のクラスに配属されれば、冷静ではいられないだろうな。



「で、では、皆さんにも自己紹介を!」


「はい」



 改めて教室の奥へと視線を移す。

 すでに授業を受けていた生徒達からの視線を一身に集め、すごく居心地が悪くなる。



(まぁ、どの教室にいても同じだろうけど……)



 仕方ないと割り切って自己紹介をしようとした瞬間、イスカの言葉を遮る様に1人の生徒が立ち上がった。



「貴様っ! 今度こそ逃さんぞっ!!」


「っ?!」



 立ち上がった生徒は、一番後ろにいた女生徒。

 長い黒髪をポニーテールにして、白いリボンで結っている長身の美少女だった。



「げっ?! お前っ、なんでここにっ……!」


「ここで会ったが100年目……! 私から逃げた罪、贖ってもらうぞっ!!」



 見覚えのある顔、聞き覚えのある声……それもそのはずだった……。

 なにせその少女は、今日出会ったばかりの人物ながら、記憶に残るほどの強烈なインパクトを与えた人物だったのだから。



「覚悟しろっ、タチバナ・イスカ!」


「っ……フレイア・スカーレット……!」




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