第15話 疑念

 礼拝の後、リランは建物のなかを案内された。さすが大神殿レヴェリアスだけあって文句のつけようのない見事さだ。古びたもの特有の美しさと厳かさを十二分に引き立ててある。

 ただひとつ不満があるとするなら、大聖女イリスが直接神殿内を案内してくれたわけではない、ということだ。彼女のことをさぐる機会だと思っていたのに、とんだ肩すかしだ。


 見学を終えて、リランは案内役の神官に礼を言うとともに、さりげなくたずねた。

「そういえば、聖女のためのせいどうがあるとおききしました。ぜひとも、イリスさまにみせていただきたいとおもうのですが」

 すると神官はわずかに不快そうな顔になった。今の発言のどこを不快に? とリランは思ったが、理由はすぐに開陳された。

「大聖女様は信心深く敬虔な御方。そのため神は、イリス様ご自身が光であるがゆえ、イリス様に光をお与えにならなかったのでございます」


 まわりくどい言い方だが、ようはイリスは目が見えないということだ。

(でも、れいはいのとき、イリスはつえもかいぞえにんもなく、あるいていた。まっすぐわたしのかおをみた。ほんとうに、なにもみえていないの?)

 生まれた時、あるいは幼少期から目の見えない者なら、訓練と経験で晴眼者と同等に動けるという話もあるが。そういった者特有の、全身で周囲の気配を読もうとするような雰囲気は、イリスにはなかった。

 だいいち、病か怪我か、役目を果たさなくなった目玉があれほど澄んだままというのもあり得るのか?


(なにか、ひっかかる、きがする……たしかめないと)

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