第15話 疑念
礼拝の後、リランは建物のなかを案内された。さすが
ただひとつ不満があるとするなら、大聖女イリスが直接神殿内を案内してくれたわけではない、ということだ。彼女のことをさぐる機会だと思っていたのに、とんだ肩すかしだ。
見学を終えて、リランは案内役の神官に礼を言うとともに、さりげなくたずねた。
「そういえば、聖女のためのせいどうがあるとおききしました。ぜひとも、イリスさまにみせていただきたいとおもうのですが」
すると神官はわずかに不快そうな顔になった。今の発言のどこを不快に? とリランは思ったが、理由はすぐに開陳された。
「大聖女様は信心深く敬虔な御方。そのため神は、イリス様ご自身が光であるがゆえ、イリス様に光をお与えにならなかったのでございます」
まわりくどい言い方だが、ようはイリスは目が見えないということだ。
(でも、れいはいのとき、イリスはつえもかいぞえにんもなく、あるいていた。まっすぐわたしのかおをみた。ほんとうに、なにもみえていないの?)
生まれた時、あるいは幼少期から目の見えない者なら、訓練と経験で晴眼者と同等に動けるという話もあるが。そういった者特有の、全身で周囲の気配を読もうとするような雰囲気は、イリスにはなかった。
だいいち、病か怪我か、役目を果たさなくなった目玉があれほど澄んだままというのもあり得るのか?
(なにか、ひっかかる、きがする……たしかめないと)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます