第3話 ヒカリの涙
夜空には、煌びやかな打ち上げ花火が次々と輝いていた。
「キャーッ! こんなに綺麗な花火を見られるなんて、とっても感激なの~!」
普段は大人しいヒカリだけれども、やっぱり女の子ね……音楽と美術の授業では、とても楽しそうに受けていたし…………標高500メートルほどの瀬戸山から眺める花火は、本当に美しかった。
「よーし! これで気合が入ったね! エイ、エイ、オー!」
数々の花火を見終わった私は、自分の拳をブンブンと振り上げた。しかし、勢いをつけ過ぎたために、上体が大きく傾いてその場に転倒しそうになってしまった。
「危ない、シズク!」
慌ててヒカリが私に飛びついて、私の体を掴まえて転倒しないように力を貸してくれた……た、助かった……。
「ヒ、ヒカリ……ごめんね。私、ちょっと調子に乗り過ぎていたわね。受験勉強を頑張らないといけないし……あっ! もちろん、ヒカリと一緒に頑張るのよ!」
私は、ヒカリに向かって元気よく宣言した。すると、驚いたことにヒカリは私の体を抱きしめたのだ。
「えええっ!? ヒ、ヒカリ……もしかして、ケガをしたの!? 」
私は、慌てて彼女の顔を覗き込もうとした。しかし、ヒカリは私の胸の辺りに顔を埋めたまま、静かに泣いていた。あんなに綺麗な打ち上げ花火を見たのに、いったいどうして……。
「……ケガはしていないわ……正直に言うと、こうしたかったの……私は、シズクのことが大好きだから……こうして抱きしめていたいの…………。」
「えええっ!?」
私は、心の底から驚いてしまった。
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