第97話 真犯人は誰だ!?

「眠りの空気は消し去ったわ! みんなを起こして!」


 オレの動揺をよそに、眠りの空気を魔法で解除したベルファは、オレとユリカに向かって叫んだ。


「ちょっと待て! エアリスが消えたんだぞ!」

「いいから、早く!」


 オレの反論にも、ベルファは全く動じない。

 仕方ない。ここは、彼女に従っておくか……。


 オレたちは大広間の中に入り、眠っている3人をそれぞれ起こしていった。


「何てことだ……眠らされた隙を突いて、宝石を盗まれてしまうとは……!」


 警備兵たちとともに目を覚ましたレゼルブは、悔しそうに歯ぎしりをした。しかし、ベルファは冷静に問いかける。


「落ち着いてください、レゼルブ宰相。眠らされた時の状況について、詳しくお聞かせ願えませんか?」

「うむ……。実は、さっき大広間のドアがわずかに開いたのだ。何が起こったのかと、警戒しながら少しずつ近づいたのが良くなかった。ドアのすき間から、眠りの空気が大量になだれ込んできて、全員眠らされてしまったのだ」


 レゼルブは、腕組みをしながら思い出すようにして語った。


「なるほど……だとすると、犯人はそこの2人の警備兵である可能性は低くなるわね……でも、やっと真犯人が誰なのかが、わかったわ」


 ベルファは低い声で呟いた。だけど、その推理は……。


「何言ってるんだ! エアリスが逃亡したんだぞ!? ダナシャスがエアリスに変身して、宝石を持ち逃げしたんだ! 2人の警備兵のどちらかが、共犯なんだよ!」


 オレは、ベルファに向かって大声でまくし立てた。しかし、彼女はオレの声に全く動じる様子が無い。


「偶然なのね、ベルファ。私も誰が犯人なのか、わかったのね」


 そして、今度はユリカが口を開いた。な、何だってぇーっ!?


「おいおいおい! いったい、どうなってるんだよ!?」


 オレの混乱を無視するかのように、ユリカとベルファはお互いに睨み合う。


「犯人は、ベルファ! あなたなのね!」

「犯人は、ユリカ! あんたよ!」


 何と、ユリカはベルファを指差し、逆にベルファはユリカを指差したのだ。


「は、犯人はエアリスじゃ、ない……!?」


 オレ、ユリカ、ベルファの意見が全て分かれてしまった。

 真犯人は、いったい、誰なんだ……!?

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