第98話 真相の解明
「ナリユキ、あんたは少し黙っていて。私とエアリスは、組んで行動しているから」
ベルファがオレに、諭すような口調で言った。エアリスは、逃げた訳ではないということか……?
「ユリカ。あんたには、アリバイが無いのよ。私、エアリス、ナリユキの3人でダナシャスの人形に迫っているとき、あんたは単独で自由に動くことができたのだから」
ベルファはそう言って、ユリカを問い詰める。アリバイって……まるで刑事だな。
「ち、違うもん! 私は廊下で、ずっとみんなを待ってたのね!」
ユリカは、顔を真っ赤にして反論する。しかし……。
「ムダよ、ユリカ……いや、怪盗ダナシャス。あんたは台所へ潜入して、本物のユリカを眠らせた。そして、ユリカに変身して自分の人形をあの窓へ設置したのよ。ご丁寧に自分の声を録音させた魔導石を顔の位置に取り付けてね。そして、準備が整ったところで、私たちをおびき出すために悲鳴を上げた……」
ベルファの推理は続く。ユリカの反論は止まり……彼女は悔しそうにベルファを睨みつけている。
「あたしたち3人が駆けつけて、あんたの人形に釘付けになっている隙を見計らって、大広間のドアを僅かに開けて眠りの魔法を放ち、3人を眠らせた後にレゼルブ宰相から鍵を奪い取ってガラスケースを開けたのよ!」
「ちっ、違うのね! これは、ベルファの罠なのね!」
ベルファの勢いに押され、ユリカの表情がどんどん青ざめていく。
「そして、宝石を奪ったあんたはあたしたちと合流して、隙を見て侵入した窓から逃亡しようとした……だけど、残念だったわね。大広間に戻る前に、私はエアリスと話して彼女を台所へ残らせたのよ。本物のユリカを見つける必要もあるからね……」
ユリカに構わず、ベルファは淡々と話し続けた。エアリスが来ないのは、そういう理由だったのか……。
「で、でも、眠りの空気の中に入ったら、ユリカ自身も眠ってしまうんじゃないのか?」
「当然、眠りの空気を解除する魔法もマスターしているんでしょ、ダナシャス? 自分の体の周囲だけを解除することくらい、朝飯前よね? 元魔術師さん?」
オレの疑問にもすんなり答えながら、ユリカを見つつニヤリと笑うベルファ。こ、怖い……。
「違うッ! 私は、絶対にそんなことはしないのね!」
追い詰められたユリカは大声で叫ぶと、オレの所まで一気に走って来て、そしてオレの体をギュッと抱きしめた。
「えっ……!?」
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