第95話 ダナシャスが現れた!
「ナリユキとベルファはボクについて来て! レゼルブさんは、警備さんと一緒に宝石を守ってください! お願いします!」
ユリカの悲鳴を聞きつけたエアリスが、素早くオレたちに指示を出した。オレとベルファは、エアリスを追うように大広間を飛び出して廊下を走る。
台所は照明が消えて、真っ暗になっていた。台所の一番奥に大きな窓があり、その窓を塞ぐかのように誰かが立っている。あいつがダナシャスか……?
窓の外には満月の光が差し込んでくるのだが、ダナシャスは窓の白いカーテンの裏にいるようで、顔は陰になって確認できない。スーツらしき服を着ていて背中にマントを装着しているのだけが分かった。
「あわ、あわわわわ……」
台所の隅で、ユリカが腰を抜かしたかのように、床にお尻をついて、震えながらダナシャスを指差していた。
「ユリカ、大丈夫か!? ここは危険だ。お前は下がってろ!」
オレは叫びながら、ユリカのそばへ駆け寄った。しかし、そんなオレたちをダナシャスは嘲笑った。
「ふははははっ! この怪盗ダナシャスを捕らえようなどとは、笑止千万! 全て無駄な努力なのだよ!」
どうやら、まだ変身もしていないらしい。中年の男の声だ。
「ナリユキ! フォーメーションBだ! ベルファは正面から魔法で攻めて!」
エアリスの指示が飛ぶ。彼女は同時に窓のある壁の左側まで走って、壁に身を寄せた。逆にオレは窓の右側の壁まで走って、エアリスと同じように壁に身を寄せる。左右からの挟み撃ち作戦だ。お互いにダナシャスまでの距離は、4~5メートルといったところか。
そして、台所の中央に立つベルファは、呪文の詠唱を始めていた。
「全てを燃やし尽くせ! ファイヤーボール!」
ベルファが魔法で放った炎の球は一直線にダナシャスまで飛んでいき、そして見事に命中した!
「やった!」
オレは、思わず叫んでいた。オレとエアリスが壁際で身構えていたから、逃げ場を失ったのだろう。
ダナシャスはカーテンもろとも体中が炎に包まれ、その場に立ち尽くしたままだ。
「おかしい……なぜ、よけないの……?」
ベルファが、不審そうな声を漏らした。しかし、今は千載一遇のチャンスだ。そんなことを気にしている場合では無い。
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