第85話 謎の事件
「エルディア姫、泣かないでほしいのね」
さすがに気の毒に思ったのか、ユリカが姫様に優しく声をかけた。彼女は残念女子だけど、意外なところで気配りができる。
「それで……私たちはこれからどうしたらいいの? 新しい任務はあるの?」
彼女は、続けて姫様に問いかける。
「本当は、みなさんに休みを取ってほしいのですが、一つだけ解決してもらいたい事件があるのです」
「へ? 事件?」
オレは、思わずマヌケな声を出してしまった。いけない、いけない。
「そうです。まずは、冒険者ギルドへ向かってください。その受付で、解決してほしい事件に関するクエストを受けるのです。冒険者ギルドへは、私が遣いの者を送って話を通しておきますので」
「わ、わかりました……」
オレは少し戸惑いながらも返答した。解決してほしい事件って、いったい何だろうか?
「そして、そのクエストを達成する、しないに関わらず、終了したらしっかり休みを取ってくださいね。休みを取るのも、大事ですよ?」
姫様はそう言って、ニッコリと微笑んだ。さっきまで辛い表情をしていただけに、その笑顔が眩しく見えた。
「えっ? でも姫様の方こそ、全然休みを取ってないじゃない。そんなに仕事ばっかりしてたら、体を壊すわよ?」
ベルファは心配そうに声をかけた。口は悪いが、それなりに姫様のことが気になるのだろう。根は悪いヤツじゃない。
「私なら大丈夫ですよ。久々にみなさんと会えて、元気をもらうことができましたし……本当は、みなさんとは仕事でのお付き合いではなく、友達としてお付き合いしたかったくらいですから」
「何言ってるの! 私はエルディア姫のこと、友達だと思っているのね!」
少し寂しそうに微笑む姫様に、ユリカが元気よく声をかけた。
おいおい……ユリカにツッコもうと思ったが、やめておいた。
組織を率いるトップという存在は、意外と孤独なのかもしれない。きっと、姫様には友達がいないのだろう……そう思ったからだ。
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