第80話 ウェルゼナ国王の返答

 オレが病室のベッドで目を覚ました翌日……つまり、魔王軍が攻めて来た日から数えると2日後になるのだが……この日は、ウェルゼナ国王から、同盟締結の打診に対する返答をもらう日だった。オレたち『チームナリユキ』の4名は、再び国王の目の前に現れた。


「このたびの働きぶり、大変見事であった。我が国の窮地を救ってくれたそなたたちに、国を代表して礼を言いたい。本当にありがとう」


 国王は、そう言って深々と頭を下げた。まあ、男の悪魔にキスされちゃったのは気の毒だけど、それをいつまでも引きずっていたら、国王は務まらないよね。


「いえ、正直言ってギリギリの戦いでした。一歩間違えれば、負けていたかもしれません」


 オレは素直に感想を述べた。ここでデカい態度を取って、さらに厄介事を押しつけられたら面倒だ。この国で、これ以上危険な目にあいたくない。ここは、大人しくする一手だ。


「まあ、そう謙遜することも無かろう。胸を張って母国へ帰るといい。エルディア姫への親書を受け取ってくれ」


 国王はそう言ってオレに親書を手渡した。問題は、返答の内容だが……。


「案ずることは無い。エルディア姫の出した条件に対して、全面的に同意することに決まった。正直、戦が起こる前は反対する者もいたのだが、そなたたちの働きを耳にして、好意的な意見に変わったのだ」


「ありがとうございます!」


 オレは頭を下げながらも、心の中で「やった!」と叫んだ。この同盟が成立したのって、オレたちの活躍のおかげじゃん! がんばった甲斐があったというものだ。


「あ、あの……もしできれば、伝説の聖剣をお譲り……」


 ここで突然、オレの後ろにいたエアリスが口を挟んできた。お前、それはいくらなんでも……とオレが止める前に、彼女の隣にいたベルファがポニーテールの頭をぽこんとゲンコツで叩いた。結構、派手な音がした。ナイスフォローだ。エアリスは、そのまま口をつぐむ。


「すまぬが、聖剣は我が国に代々伝わる国宝なのだ。よその国の者に、おいそれと渡すことはできん。理解してくれ」


 国王は、再び頭を下げた。さすがに、そこまでは無理だよね。


「その代わりと言っては何だが……昨日だったな、それなりの報奨金は大臣を通じて渡しておいたはずだ。その金で装備を充実させてほしい」


 国王は、続けてそう言った……えっ? そんなのあったの?


「ちょっと待って! そんなの聞いてないわ!」


 ベルファも不審に思ったのか、大きな声を出した。敬語は使えよ。

 国王は端正な顔を少し歪ませて、思案顔で語る。


「妙だな? 大臣の話だと、そなたがまだ眠っていたので、同室していたユリカ殿に渡したと聞いていたのだが……」

「ええっ!?」


 オレ、エアリス、ベルファの3人の声が見事にハモった。そして、いっせいにユリカへ視線が集まる。


「え、えっと…………私はチームの参謀役だから、このお金は私が大事に管理しておくのね! 何か問題でもあるの?」


 ユリカは最初、気まずそうな顔をしていたが、最後は胸を張って開き直りやがった。


「だからって、あたしたちに隠すのは卑怯でしょ! ぶち殺す!」

「ヒドいや! ボクたちに黙って独り占めするつもりだったんだね!」


 ベルファとエアリスの怒りに火がつき、女3人で取っ組み合いのケンカが始まった。


「やめろ、お前ら! 国王の目の前だぞ!」


 オレは、必死に3人を止めたよ。

 国王が温厚な人だったから、事なきを得たけど……。

 やっぱり、このチームのリーダーであるオレが一番しっかりしなければ……と思うのだった。

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