第5章 怪盗との対決

第81話 母国への帰還

 オレ、ユリカ、エアリス、ベルファの4人で構成されるパーティー、『チームナリユキ』の一行は、ウェルゼナ国王から受け取った親書を持って、母国のザナトス王国の王都ザリザクへ無事に帰還した。

 例によって、途中でゴブリンやオークなどのモンスターが襲ってきたが、何の問題も無く撃退していった。

 オレたちが王都へ入るための門扉のところまで来ると、鎧に身を包んだ中年の騎士が手を挙げて声をかけてきた。


「おお! ナリユキ、無事に帰ったか!」


 以前、王城の入口で会ったことのある騎士団長のデボルドだった。


「お久しぶりです、団長。今日は、ここで仕事ですか?」


 オレは丁重に頭を下げた。下手に嫌われて、余計な敵を作りたくは無い。


「ああ。エルディア姫から特に西側の門を強固に守るように仰せつかってな。警備の人数も大幅に増員した。俺はしばらく、この門の警備に就くことになりそうだ」


 彼はそう言って、頭をボリボリと掻いた。頭を搔く仕種は、おそらくこの人の癖なのだろう。


「それにしても、お前たちが魔王軍の四天王を退けるとはなあ! エルディア姫から話は聞いたぞ!」

「えっ? もうそのことをご存知なんですか?」


 デボルドの発言に、オレは思わず聞き返した。


「ああ。先日、ウェルゼナ王国から早馬で遣いの者が来てな。同盟締結の件と、お前たちの活躍をわざわざ感謝の言葉を添えて伝えに来てくれたのだ」


 これは、嬉しい話だ。オレたちの活躍ぶりは、既に街中に広まっているかも知れない。隣国の危機を救った英雄として、王国をあげて称えられる日も近そうだ。


「やったね! これでボクも勇者として認められるんだ!」


 隣にいたエアリスが、歓喜の表情でガッツポーズをキメた。ユリカとベルファも、満足そうに頷く。

 しかし、オレたちが喜んだのはそこまでだった。


「それがな……このことは、決して誰にも話すなと、エルディア姫からきつく口止めされてな。この件について知っているのは、エルディア姫と俺だけなのだ」

「ええっ! どうして!?」


 オレたち4人は驚愕の声を上げた。しかも姫様が……さすがに納得できない。


「まあ、これからお前たちはエルディア姫に会うんだろ? 直接、理由を聞いてみるといい。俺が話すよりは、その方がいいだろう。それともう一つ、伝えることがある」


 デボルドは、神妙な顔をして話し続ける。


「ま、まだ何かあるんですか?」


 動揺を隠しきれないオレに対して、彼の返答はこうだった。


「王城に戻っても、国王陛下にお会いするのは、やめておけ」


 オレたちの間に、不穏な空気が漂った。

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