第78話 夢の中へ

 目の前が……白い……。


「ここは、死後の世界か?」


 どうやら、オレはゼグロンの爆裂魔法を浴びて、死んでしまったらしい。


「違うわ。ここは、夢の世界よ」


 オレの後ろで、女性の声がした。振り返ると、紫色の長い髪の毛をなびかせて、白いドレスに身を包んだ美しい女性が立っていた。美しいことは美しいんだが……。


「女神フェリオ! どうして、ここに!?」


 オレは、目の前の女性に尋ねた。この女性は、オレを異世界リーデシアに送り込んだ女神だ。ちょっと性格に問題があるんだけど……。


「今、ユリカが私の力を使って、あなたにヒーリングをかけているのよ。まったく……治せなかったら信者が減るとか、お布施が減るとかおどしてくるから、本当に困った娘だわ……」


 女神フェリオは、そう言って深い溜め息を吐いた。あのユリカは、そういう困ったちゃんだ。ちょっと同情する。


「じゃ、じゃあ、オレは死なないで済むってことか?」

「今回は……ね。でも、これからはあまり無理しちゃダメよ? あなたの体は確かに頑丈だけど、不死身ってワケじゃないんだから」


 できれば魔王を倒してくれとか言ってたくせに、しれっとそんなことを言ってくる。無理しないで魔王を倒せるのかと、ツッコんでやりたかった。


「まあ、ちょっと深追いしすぎたのは反省してるよ。次からは、もう少し慎重に行動しないといけないよなあ。死んじゃったら、何にもならないし」

「そう、その心構えが大事よ! エラいエラい!」


 反省するオレに対して、彼女はオレの頭をナデナデした。確かに美人だけど、こういう軽いノリがイヤなんだよなあ……全然、女神っぽくない。


「あと、目が覚めたら、ちゃんとユリカにお礼を言わないとダメよ? 女の子って、そういうところ、結構気にするんだから! 忘れちゃダメよ?」

「はいはい、わかりましたよ」


 オレは、肩をすくめながら答えた。さっきから、ダメよダメよって……オレは丸出だめ夫か!?

 これじゃ、幼稚園の先生と園児のやりとりみたいだな。


「じゃあ、言いたいことは伝えたから! しっかりやるのよ! これからも応援してるからね♪」


 最後に投げキッスをして、女神フェリオは消えていった。勝手に言いたいことだけ言って消えやがって……オレは、思わず頭を抱えた。

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